
目次
愛猫の健康を守るために、こまめな歯磨きによるケアが大切です。
歯磨きを嫌がる子も多いのですが、小さいうちから少しずつ習慣づけていきましょう。
歯磨きの方法や歯磨きをしないとどうなってしまうのか、歯磨きを嫌がる場合の対処法などについてご紹介します。

猫に歯磨きは必要?
猫の口腔内の病気として最も多いのが、歯周病です。
歯周病の原因は歯垢の中にいる細菌であり、歯周病を防ぐには、まずは歯垢を付着させないことがポイントとなります。
歯垢を付着させないための最も効果の高い予防法が、「毎日の歯磨き」となります。
猫は餌をあまり噛まずに飲み込むことが多いため、基本的には、歯垢の元となる食べ物のカスが残りにくいと言われています。
とはいえ、ペットの猫は一般的にはペットフードが主食となるため、特に柔らかめのフードの場合は口の中に食べかすが残りやすくなっています。
そのため、ペットの猫は歯をきれいにしていても24時間以内に歯垢が付着し、その歯垢は3~5日ほどで歯石に変わります。
歯垢や歯石は歯ぐきの炎症や不快な口臭を引き起こすため、毎日の歯磨きでそれらをしっかりと予防していくことが大切となります。
歯磨きをしないとどうなる?
では、歯磨きをおろそかにすると、どうなるのでしょうか。
結論としては、歯周病というペットの健康に対して極めて重大な悪影響を引き起こす病気になってしまいます。
まず、口の中に残った食べ物のカスや唾液の成分、口腔内の細菌などから、「歯垢」が形成されます。
その歯垢の中の細菌が多くなると、この細菌が歯肉に接触することで「歯肉炎」を引き起こします。
加えて、歯垢が唾液中のミネラルと結合して石灰化しますが、これが「歯石」と呼ばれるものです。
歯垢や歯石の沈着が拡大すると、歯ぐきの炎症や不快な口臭に繋がります。
歯石ができてしまうと、通常、歯磨きでは除去できず、更にこの上から歯垢が付着することで、歯肉炎が進行します。
歯肉炎が進行し、より深い部分の歯周組織に炎症が起こると、「歯周炎」という歯周組織まで炎症がおよぶ状態となります。
歯肉炎と歯周炎を総称して「歯周病」と言います。
歯周病とは?
歯周病は、歯肉の炎症である「歯肉炎」と、歯肉炎が進行してより深い部分の歯周組織に病変が広がった「歯周炎」に分けられます。
いずれも、歯垢の中に潜む細菌によって引き起こされるものとされています。
適切な対応をせず、放置することで炎症が進みます。歯を支えているあごの骨まで炎症が進むと、歯は簡単に抜け落ちてしまいます。
歯周病の症状
- 口臭がする
- 歯石がついている
- 歯茎が赤い、出血している
- 歯がグラグラしている
- 顔が腫れている
- 鼻炎
一見歯周病とは関係がなさそうな「鼻炎」や「顔が腫れている」という症状も歯周病の症状のひとつです。
歯周病が進行すると、炎症により鼻腔に影響が及び鼻炎の原因となることがあります。一般的な治療に効果がみられない慢性鼻炎や鼻出血などは歯周病が原因のひとつです。
また、歯根部の炎症や感染が眼の下辺りまで広がり、眼の下が膿んで顔が腫れているような状態になります。少し腫れるだけのこともありますが、大きく膨らんだり穴が開いて膿が出てくることもあります。
歯垢と歯石の違い
歯垢は、細菌の塊で、口の中に入ってきた食べ物から栄養を吸収し増えていきます。歯垢の状態だと歯磨きで取り除くことが可能です。
歯石は、歯垢にカルシウムなどのミネラルが反応し、石灰化したものです。歯石の表面はざらざらとして歯垢が付きやすいため、さらに歯垢と歯石が増えていきます。
歯周病の治療
歯周病は歯周組織が徐々に破壊されていく進行性の病気のため、自然に治癒することはありません。一度破壊された歯周組織は治療をしても元の健康な状態には戻らないので、健康な歯を維持するためには軽度の状態で治療をすることが必要になります。
軽度な状態では、歯石除去(スケーリング)と歯周ポケット内の洗浄、ポリッシング(研磨)を行います。歯周病が進行している場合には歯の根元の洗浄処置を行うこともあり、中には永久歯の抜歯が必要になることもあります。
歯磨きは歯周病予防に効果も
歯周病予防のために飼い主ができることは、まず歯磨きをすることです。
歯垢は歯磨きで取り除くことができるため、歯垢の状態のうちに歯磨きで取り除くことが必要です。猫の口の中では、歯垢はわずか3~5日ほどで歯石になるといわれているため、こまめな歯磨きの必要性がわかります。
なお、歯石は歯磨きでは取り除くことができず、初期であれば人間の爪でこすって落とすこともできますが、進行している場合は病院で全身麻酔下での処置が必要になります。歯磨きは、歯周病の予防になると同時に歯周病が原因で起こる口臭の予防にも繋がります。

猫の歯磨きの方法は?
猫の歯磨きについて詳しくみていきましょう。
猫の歯磨きの頻度
1日に1回、毎日歯磨きを行うことが理想です。ただし、毎日が難しければ週に3回程度を目指して歯磨きを行うようにしましょう。
歯垢は3~5日ほどで歯石になるため、最低でも3日に1回は歯磨きをおこない、口の中の歯垢を取り除きましょう。
猫の歯磨きの仕方
歯ブラシの使い方とあわせて歯磨きの方法をみていきましょう。
- 1.まずは口を触ることに慣れる練習から始めます。口の周りを触ることから始め、徐々に歯や歯茎に触れましょう。
- 2.いきなり歯ブラシを使うのではなく、歯を触ることに慣らせるためにガーゼや市販の歯磨きシートなどを使用してみると良いかもしれません。指にガーゼやシートを巻き、歯と歯茎の表面を優しくなでましょう。
- 3.触ることができたら次は歯ブラシを使っていきます。ペット用歯ブラシがいくつか市販されているため、口に入りやすい大きさの歯ブラシを使い、触らせてくれる歯から磨きましょう。
- 4.歯を1本ずつ細かく歯ブラシを動かしながら磨きます。
すべての歯をしっかりと磨いてあげるのが理想ですが、特に歯垢が溜まりやすい奥歯の臼歯を気にして丁寧に磨いておきましょう。
歯磨きを嫌がる場合の磨き方やコツ
歯磨きは、歯が生え始めた乳歯のころから始めることで早いうちから歯磨きに慣れ、習慣化させましょう。
概ね生後2~3ヶ月くらいから、他の日常のケアと併せて愛猫の全身をさわれるように習慣づけていきましょう。
口を触らせてくれたり、歯を1本触らせてくれたり、上手に磨かせてくれた時には褒めたりご褒美をあげるなど、歯磨きを楽しいことだと思わせることで歯磨きへの抵抗感を減らすことができるでしょう。
歯ブラシ以外を使ってお口のケアをすることもできるので、歯ブラシが難しい場合にはそれ以外の方法で試してみても良いかもしれません。
歯ブラシ以外の歯磨きグッズは?
ガーゼや歯ブラシ以外にも、歯磨きに有効なグッズを紹介します。
歯磨きジェル
歯磨きをする時に使うことが多い歯磨きジェルですが、歯磨きをする時以外にも好みの味のジェルを指につけて舐めさせることで口周りに触りやすくなることがあります。お気に入りのジェルを見つけると、今後の口周りのケア時にも役に立ってくれるでしょう。
ペット用の歯磨きシート
歯磨きシートは歯ブラシの前段階としても使いやすいものです。ガーゼと同様、歯磨きシートを手に取り、歯をこすって歯垢を取っていきましょう。
直接飼い主が手で触るので、歯ブラシよりも違和感がないかもしれません。
綿棒
歯ブラシを嫌がる子には、歯ブラシよりも小さい綿棒を使ってみるのもよいでしょう。歯と歯茎の境目をなでることで歯垢を取り除くことができます。
歯磨きガム
歯磨きガムを噛むことで、歯石除去、口内衛生、口臭抑制などの効果があるといわれています。ガムを与える時には歯石がつきやすい奥歯を狙い噛ませてあげると効果的です。
歯磨きおもちゃ(デンタルトイ)
歯磨きおもちゃを噛みながら遊ぶことで、歯の表面についている歯垢を落とすことができます。おもちゃに細菌が繁殖しないように清潔に保つということに注意が必要です。
その他にも、飲み水に混ぜるだけで口臭ケアができる用品も販売されていますが、すでに歯石がびっしりとついている場合や水を飲む量が少ない場合、ケア用品に含まれる成分によっては思ったような効果が見込めないこともあります。お口のケア用品を使う場合には、歯を傷つけては逆効果ですので、予め動物病院で相談をしてみたほうが良いでしょう。
また、今回ご紹介したいずれの場合も、歯ブラシを使った歯磨きの補助ケアとしてのものになります。歯ブラシと違い、磨かれないところも残るので、歯ブラシでの歯磨きの代わりとなるものではありません。やはり、最も効果の高い予防法は、毎日の歯ブラシを使ったブラッシングとなります。
自宅での歯磨きが難しい場合には、無理をせずに動物病院で歯のお手入れをしてもらいましょう。
まとめ
歯周病を防ぐためにも、毎日の歯磨きがとても大切です。
ただし、歯磨きは慣れが必要で、小さいころから訓練しておかないと嫌がります。まずはガーゼや歯磨きシートなどを使って、毎食後に歯を拭いてあげることから始めるとよいでしょう。
歯ぐきの炎症や口臭などが気になるといった場合には早めに動物病院を受診するようにし、症状が悪化することのないようにしてあげましょう。