猫の卵巣腫瘍とは
卵巣は、雌の生殖器で、卵子を作り育てる場所で、排卵を行います。 また、女性ホルモンであるエストロゲンなどを産生・分泌します。
卵巣腫瘍は、卵巣にできた腫瘍で、腫瘍は良性と悪性に分かれ、悪性の腫瘍はがんを指します。
卵巣腫瘍は、片側のみにできる場合もあれば、両側に発生することもあります。
卵巣にはさまざまな細胞があり、卵巣腫瘍といっても、いくつかの種類があります。
猫の卵巣腫瘍の中で約半数と、最も多くを占めるのが、顆粒膜細胞腫(かりゅうまくさいぼうしゅ)という腫瘍です。
顆粒膜細胞とは、成長する卵子を包む細胞のひとつで、それが腫瘍化したものが顆粒膜細胞腫です。 顆粒膜細胞腫の半数以上は悪性といわれています。
その他の卵巣腫瘍では、未分化胚細胞腫(みぶんかはいさいぼうしゅ)や黄体腫(おうたいしゅ)などが挙げられます。
なお、猫の卵巣腫瘍の発生はまれです。
猫の卵巣腫瘍の症状
卵巣腫瘍が大きくなったり、腫瘍により腹水がたまったりして、外側から見て腹部が膨らむことがあります。 腹部に大きな腫瘍があると、消化器を圧迫して、嘔吐などもみられます。
また、腫瘍の種類によっては、エストロゲンという女性ホルモンの一種が過剰になり、持続的な発情や脱毛などが現れる猫もいます。
卵巣腫瘍の症状
- 腹部が大きくなる
- 嘔吐
- 持続的発情
- 脱毛
など
猫の卵巣腫瘍の原因
猫の卵巣腫瘍の明確な原因は分かっていません。
卵巣腫瘍の検査は以下のようなものがあります。
卵巣腫瘍の検査
- 血液検査
- X線検査
- 超音波検査
- CT検査/ MRI検査
- 病理組織検査※
など
※手術で卵巣を摘出後、組織から標本を作製し、顕微鏡で腫瘍の種類などを観察する検査
他にも、腹水がたまっていれば、腹水検査をするなど、必要な検査が行われます。
猫の卵巣腫瘍の予防方法
卵巣腫瘍の予防方法は、避妊手術を行うことです。
避妊手術のひとつである卵巣子宮摘出術は、卵巣腫瘍の予防になるだけでなく、乳腺腫瘍の発生率の低下、子宮蓄膿症や子宮腫瘍の予防など、他の疾患の予防にも役立ちます。
猫が卵巣腫瘍になってしまったら
卵巣腫瘍の主な治療は、腫瘍化した卵巣の摘出です。
卵巣腫瘍では、子宮内膜の変化が起こることもあり、通常は卵巣子宮摘出術が行われます。
転移がなく、卵巣腫瘍が完全切除できた場合は、その後の経過は良好です。
しかし、転移や再発がある場合、経過は厳しいものとなります。
猫の卵巣腫瘍で最もみられる顆粒膜細胞腫では、腹膜や横隔膜、腎臓、肝臓、肺などへの転移が報告されています。
転移が見られたり、腫瘍が他の臓器などに散らばっていたりするときは、手術前、あるいは手術後に補助的治療として、化学療法を実施することがあります。
避妊手術は卵巣腫瘍の予防につながります。 また、腹部が膨らんでくるなど、異常な様子が見られたら、すぐに動物病院を受診しましょう。