椎間板ヘルニア

犬の椎間板ヘルニアとは

動物の背骨や首の骨のそれぞれの間には、衝撃を吸収するクッションのような役割をする椎間板(ついかんばん)があります。


椎間板は、ゼリー状の「髄核(ずいかく)」という物質を、「線維輪(せんいりん)」という物質がおおっています。

椎間板ヘルニアとは、椎間板が正常の位置からずれて、脊髄を圧迫することで麻痺などの神経症状を現す疾患です。

椎間板の一部が椎間板から離れて、脊髄を圧迫しているということもあります。


椎間板ヘルニアは、

  • ハンセンⅠ型
  • ハンセンⅡ型

という2つのタイプに分類できます。


それぞれのタイプにより、症状の傾向などが異なります。


●ハンセンⅠ型椎間板ヘルニア

ハンセンⅠ型椎間板ヘルニアとは、椎間板の中心にある髄核がそれをおおう線維輪の亀裂から出て、脊髄を圧迫している状態です。

ハンセンⅠ型では、突然急激な症状が起こる傾向にあります。

先程まで元気で遊んでいたのに、急に麻痺が起こるということもよく見られます。

ハンセンⅠ型では、椎間板の中心にある髄核の状態が変化しやすい体質の犬種で、よく見られます。

それを軟骨異栄養犬種といい、以下のような犬種が挙げられます。


ハンセンⅠ型椎間板ヘルニアになりやすい犬種
  • ビーグル
  • キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
  • コッカー・スパニエル
  • ダックスフンド
  • ブルドッグ
  • フレンチ・ブルドック
  • ラサ・アプソ
  • ペキニーズ
  • ミニチュア・プードル

など


これらの犬種では、若齢で発症しやすいです。


●ハンセンⅡ型椎間板ヘルニア

ハンセンⅡ型椎間板ヘルニアでは、椎間板の外層である線維輪が変形し、線維輪が脊髄を圧迫しています。

ハンセンⅡ型では、劇的な症状が突然起こるというよりは、症状は慢性的に経過していきます。

犬の椎間板ヘルニアの症状

椎間板ヘルニアでは、脊髄が圧迫されるので、痛みや足の麻痺などが主に症状として現れます。


重症度により、膀胱が麻痺して自力で排尿できなくなることもあります。


椎間板ヘルニアの状態は、下のように、グレード1からグレード5までに段階分けされます。


椎間板ヘルニアのグレード分類
グレード 症状
グレード1 痛みのみ
グレード2 完全な麻痺ではないが、うまく歩けません。
自力で歩くことはできます。
グレード3 完全な麻痺ではないが、自力で歩くことはできません。
尾は振ることができます。
グレード4 完全な麻痺があり、軽い痛み(浅部痛覚)は感じなくなっているます。
膀胱が麻痺しており、自力での排尿ができません。
(尿がぽたぽた垂れるか、抱いたときなど圧迫があれば排尿)
尾は振れません。
グレード5 かなり強い痛みへの感覚(深部痛覚)もなくなっています。
(尾、麻痺している足の全ての指で)


犬は痛む場所を教えることができないので、痛みだけの場合は、

  • 何となく元気がない
  • 何となく食欲がない

など、椎間板ヘルニアに見えないような一般的な症状で来院することも多いです。

他には、

  • 触られるのを嫌がる、怒る
  • 持ち上げるとキャンと鳴く
  • 段差があるところを登ろうとしない

などの症状も現れます。


首に痛みがあるのであれば、

  • 首をあまり動かさず、上目遣いで物を見る

という様子も見られます。


麻痺が現れてくると、

  • ふらつき
  • 足がもつれるように歩く
  • 足を動かせない

などの症状が出てきます。

犬の椎間板ヘルニアの原因

椎間板ヘルニアは、椎間板が本来の位置から飛び出し、脊髄を圧迫することで起こります。


前述したように、椎間板ヘルニアになりやすい犬種でなることもあれば、加齢によるものや外から強い力が加わったときなどに発症することもあります。


椎間板ヘルニアの検査は、以下のようなものが挙げられます。


椎間板ヘルニアの検査
  • 触診
  • 神経学的検査
  • 血液検査
  • X線検査(脊髄造影含む)
  • CT検査/MRI検査

など


他の疾患を除外するため、他にも、必要な検査があれば行われます。

犬の椎間板ヘルニアの予防方法

椎間板ヘルニアは、ジャンプや大きい段差の上り下りなどのときに発生する可能性があります。


また、室内では、床が滑りやすいと余計な力が脊椎にかかります。


そのため、これらのことを避け、滑り止めマットを敷くなど、工夫して生活環境を整えることが大切です。


歩き方がおかしかったり、元気がなかったりしたら、早めに病院を受診しましょう。

犬が椎間板ヘルニアになってしまったら

椎間板ヘルニアの治療には、

  • 内科的治療
  • 外科的治療

があります。


症状が軽度の場合は、内科的治療が行われます。


内科的治療では、4~6週間ほどの絶対安静(ケージレスト)が必要になります。


この絶対安静は、運動を制限してケージの中や狭い範囲なら自由に動いていい、というものではなく、トイレ以外では体を動かさないレベルでの安静が治療法とされています。


これは現実的に厳しいこともあるので、可能な限りで行っていきます。


それと並行して、炎症を抑えるような薬の注射や、鎮痛剤、ビタミン剤などが投与されます。


内科的治療
  • 絶対安静(ケージレスト)
  • 鎮痛剤
  • 炎症を抑える薬
  • ビタミン剤

など


自力で歩くことができないなど、足の麻痺が一定以上では、外科手術がすすめられます。


外科手術では、椎間板が出ている部分の脊椎(背骨)の一部を削り取り、そこから飛び出したりして脊髄を圧迫している椎間板の物質を除去します。


外科手術後に、リハビリテーションも積極的に行います。

外科手術を行って、改善するかどうかや改善の程度は、犬により異なります。

外科手術後に、進行性脊髄軟化症という致死的な状態が発症し、死亡してしまう例もあります。


内科的治療、外科的治療などの治療法の選択は、犬の年齢、状態、飼い主様の希望など、獣医師と相談して、決定されます。


また、治療法に関わらず、

  • 床に滑り止め防止マットを敷く
  • ジャンプするように誘わない
  • 段差を小さくする、またはのぼらせない

などの工夫ができます。


犬の様子や歩き方にいつもと違う異常があれば、動物病院に早めに連れて行きましょう。

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