猫の中耳炎とは
耳は、外耳、中耳、内耳に分けられ、中耳炎とは中耳で炎症が起こっていることです。
中耳は、鼓膜、耳小骨(じしょうこつ)、鼓室胞(こしつほう)、耳管(じかん)からなります。
耳管の開口部(穴)は鼓室(こしつ)にあり、鼻咽頭(びいんとう:鼻腔の後方の部分)へと通じています。
中耳には眼へとつながる交感神経も通っています。
中耳は、外耳から伝わってきた音波の振動を増幅し、内耳に受け渡す役割をしています。
また、耳管では気圧を調整したり、耳管を通して、中耳の分泌物を鼻咽頭へ排出したりしています。
猫の中耳炎の症状
中耳炎は痛みを伴い、猫にとても不快感を与えます。
中耳炎の症状は以下のようなものがあります。
中耳炎の症状
- 耳ダレが出る
- 頭を振る
- 耳や頭を触られるのを嫌がる
- 耳を後ろに倒している
- 斜頚(しゃけい)※
- 食欲がない
- 元気がない
など
※斜頚とは、猫の意思とは関係なく、通常時に首を傾けている状態
他にも、ホルネル症候群※や外耳炎が同時に見られることもあります。
※中耳を通る神経が中耳炎により障害され、目頭側から膜(瞬膜)が出たり、目が落ちくぼんで小さく見えたりする神経症状
内耳に炎症が広がっている場合もあります。 そのときはふらつきや旋回(せんかい)※1、眼振(がんしん)※2などの症状も現れます。
※1:旋回とは、歩くときに、同一方向に円を描くように回ること
※2:眼振とは、猫の意思に関わらず、眼球が一定の方向に規則的に動くこと
猫の中耳炎の原因
中耳炎のほとんどは、細菌感染によるものです。
猫の中耳炎の原因は以下のようなものがあります。
中耳炎の検査は以下のようなものが行われます。
中耳炎の検査
- 耳鏡(じきょう)検査※1 (可能であれば)
- 耳垢検査
- 細菌培養・感受性検査※2 (可能であれば)
- X線検査
- 耳内視鏡検査(ビデオオトスコープ)
- CT検査/ MRI検査※3 (可能であれば)
など
※1:耳鏡検査は、耳鏡という器具を使い、外耳道や鼓膜を観察する検査
※2:細菌培養・感受性検査では、耳道内で増殖している細菌や、それに有効な抗生剤を特定する
※3:CT検査/ MRI検査では、外耳道や中耳の状態の変化や、腫瘍の有無などを確認する
ただ、耳内視鏡(ビデオオトスコープ)やCT検査/ MRI検査は、特殊な設備が必要であり、どの動物病院でも行えるわけではありません。
猫の中耳炎の予防方法
猫の中耳炎の明確な予防方法はありません。
外耳炎から炎症が広がり中耳炎になることもありますし、中耳炎から内耳炎へとなることもあります。
中耳炎は、早期発見・早期治療が重要です。
耳に関わる症状が現れた場合は、早めに動物病院に連れて行きましょう。
猫が中耳炎になってしまったら
中耳炎は投薬などの内科的治療で治っていくことも多いです。
中耳炎の内科的治療には、以下のようなものがあります。
内科的治療
- 抗生剤内服
- 抗真菌剤内服
- 抗炎症剤内服
など
ただ、抗生剤の内服をしっかりと続けず途中でやめてしまうと、治りきらずぶり返したり、耐性菌ができたりするので、要注意です。
外耳炎を併発していたり、外耳炎や中耳炎の原因となる疾患があったりするときは、その治療も行われます。
たとえば、鼻咽頭ポリープが原因である場合は、外科的切除が行われます。
内科的治療で治りきらない、長期間治療に反応がない、外耳道から中耳にかけて、形態などに重度の変化がある場合は、外科的治療が検討されます。
中耳炎の外科的治療は以下のようなものが挙げられます。
中耳炎の外科的治療
- 鼓膜切開
- 外耳道や中耳の手術
鼓膜切開や鼓室胞の洗浄、また場合によっては外耳道の切除などを行います。
このとき、中耳内をぬぐった液を細菌培養・感受性検査に出し、増殖している細菌とそれに有効な抗生剤の種類を特定します。
この結果から抗生剤を選択し、投薬を続けます。
中耳炎は非常な痛みと不快感をもたらします。
おかしい様子があればすぐに動物病院を受診し、しっかりと治療を行いましょう。