皮膚エリテマトーデス(紅斑性狼瘡)

犬の皮膚エリテマトーデス(紅斑性狼瘡)とは

エリテマトーデスとは、紅斑性狼瘡(こうはんせいろうそう)ともいい、免疫の異常による自己免疫疾患で、全身または皮膚に炎症が起こります。


エリテマトーデスは、

  • 全身性エリテマトーデス(紅斑性狼瘡)
  • 皮膚エリテマトーデス(紅斑性狼瘡)

に分けられます。


全身性エリトマトーデスでは、皮膚や多臓器で炎症疾患がみられますが、皮膚エリテマトーデスでは、症状は主に皮膚に限られます。


皮膚エリテマトーデスは、細かく分けると、

  • 円板状(えんばんじょう)エリテマトーデス
  • 水疱性(すいほうせい)エリテマトーデス
  • 剥脱性(はくだつせい)エリテマトーデス

に分けられ、これらに加え、肛門や生殖器、その周囲に主に症状が現れる型もあります。


この中では、円板状エリテマトーデスが最もよくみられます。


ただ、全体でみるとエリテマトーデスの発生はまれです。

犬の皮膚エリテマトーデス(紅斑性狼瘡)の症状

皮膚エリテマトーデスの中でも、それぞれの型により主となる発生部位は異なります。


●円板状エリテマトーデス

皮膚エリテマトーデスの中で、最も発症が多い型です。


鼻先や鼻筋が主で、他には目の周囲や肉球に症状が現れます。


播種性(はしゅせい)円板状エリテマトーデスといって、全身の皮膚に皮膚症状が現れることもあります。


円板状エリテマトーデスの皮膚症状
  • 色素が抜ける
  • かさぶた
  • 斑状の赤み
  • 潰瘍(かいよう)
  • ふけ
  • ただれ(びらん)

など


円板状エリテマトーデスがよくみられる犬種として、

  • ジャーマン・ショートヘア―ド・ポインター
  • ジャーマン・シェパード・ドッグ
  • コリー
  • シェットランド・シープドッグ

などが挙げられます。


●水疱性皮膚エリテマトーデス

腹側を中心に、脇や腹部、内股、口腔内などに症状が現れます。


ごく初期にはかゆみのない赤みや発疹がみられますが、すぐに潰瘍やただれになり、蛇が這ったような形や輪のような形でみられることも多いです。


細菌による二次感染もよく起こります。


中年齢から高齢の、シェットランド・シープドッグやコリーで多くみられます。


●剥脱性皮膚エリテマトーデス

鼻や口にかけての部分(マズル)や耳たぶ、体の背中側に症状が現れます。


ふけや脱毛から、かさぶたや潰瘍がみられます。


皮膚症状から細菌感染が起こることもよくあります(二次感染)。


10週齢以降のジャーマン・ショートヘア―ド・ポインターで特によくみられるといわれています。


剥脱性エリテマトーデスは、治療への反応が非常に悪く、生活の質が著しく低下する例も多いです。


●肛門や生殖器周辺に主に皮膚症状がみられる型
(Mucocutaneous Lupus Erythematosus)

主な部位は肛門や外陰部の周辺で、他には、口腔内、目の周囲、鼻腔周囲の粘膜などにも症状が現れます。


かさぶたやただれ、潰瘍、色素沈着がみられ、排尿や排便をしているときに痛みがみられることもあります。


ジャーマン・シェパード・ドッグに発症が多いといわれています。

犬の皮膚エリテマトーデス(紅斑性狼瘡)の原因

皮膚エリテマトーデスは、自分の免疫が自分自身を攻撃してしまう自己免疫疾患です。


自己免疫の異常や、紫外線により抗原となる物質の変化により、自分自身を構成する物質(抗原)に対する抗体が作られるようになります。


そして、抗原と抗体が結合した免疫複合体が組織にたまり、付着します。


そこを補体という免疫に関わる細胞が攻撃したり、リンパ球が集まってきたりするなどして、激しい炎症が起こります。


皮膚エリテマトーデスの検査は、以下のようなものが挙げられます。


皮膚エリテマトーデスの検査
  • 皮膚検査
  • 血液検査
  • 皮膚生検/病理学的検査(免疫染色も含む)
  • 抗核抗体(ANA)検査
  • 尿検査

など


皮膚を採取し、病理組織検査で組織内の細胞などの状態を観察します。


免疫染色という特殊染色を使い、診断の一助とします。


症状から、感染症や内分泌疾患、天疱瘡や全身性エリテマトーデスなど自己免疫疾患の可能性を除外する必要があるので、これ以外にもさまざまな検査が行われることがあります。


経過や症状、各種検査所見から、総合的に判断されます。

犬の皮膚エリテマトーデス(紅斑性狼瘡)の予防方法

皮膚エリテマトーデスの予防方法は、分かっていません。


円板状エリテマトーデスや、水疱性皮膚エリテマトーデスでは、日光が病気の悪化につながる恐れがあるので、日光を避けるようにします。


犬におかしい様子があれば、動物病院を受診しましょう。

犬が皮膚エリテマトーデス(紅斑性狼瘡)になってしまったら

皮膚エリテマトーデスでは、免疫抑制剤の内服や外用薬の使用が一般的です。


状態に合わせて、免疫抑制剤はできる限り減量していきますが、減量の過程での再発もよくみられます。


ビタミン(ニコチン酸アミドなど)や免疫を調節する働きのある薬、細菌の二次感染を抑えるための抗生剤を投与することもあります。


円板状エリテマトーデスと水疱性エリテマトーデスでは、日光が病気を悪化させる恐れがあるので、日光を避けます。


剥脱性エリテマトーデスでは、抗生剤であるドキシサイクリンやテトラサイクリンと、ニコチン酸アミドを投与し、免疫抑制剤などと併用する方法もあります。


皮膚がおかしいときは、動物病院に連れて行きましょう。

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