猫のアルファリポ酸中毒とは
アルファリポ酸(αリポ酸)は、チオクト酸とも呼ばれるビタミン様物質のひとつで、人用に、医薬品だけでなく、サプリメントとしても販売されています。
以前は医薬品としての利用のみでしたが、2004年から食品としても利用可能になり、健康食品の成分として販売できるようになりました。
サプリメントとしては、一般的に、痩身(燃焼)効果や健康維持(抗酸化作用、疲労回復)のためとして販売されています。
医薬品としては、注射用(点滴)や内服用があり、
- 亜急性壊死性脳脊髄炎
- 激しい肉体疲労時
- 中毒性および騒音性の内耳性難聴
に適用(効果がある場合)とされています。
ただ、猫では、アルファリポ酸により重篤な低血糖発作や急性肝毒性が引き起こされるという報告があり、命を落とすこともよくあります。
アルファリポ酸は猫をひきつけるようで、袋をかみちぎるなどして積極的に猫が摂取することもあるので、注意が必要です。
アルファリポ酸は、サプリメントとしては、アルファリポ酸単独で販売されているもの、複数の他の成分と合わせた(混ぜた)ものが販売されています。
1粒(またはカプセル)に含有されている量は、製品によりさまざまです。
猫では、アルファリポ酸で毒性が出る摂取量が、人や犬、ラットのおよそ1/10で、アルファリポ酸は猫で特に毒性が強く現れることが分かっています。
猫で毒性を示すアルファリポ酸の最小量は、体重1kg当たり13mg(13mg/kg)とされています。
※それぞれの猫により、毒性が現れる量や重症度は異なります。
そのため、猫の体重や体の状態、製品の含有量によっては、サプリメント1粒でも致死的となります。
毒性は摂取後30分から数時間で現れ、症状が進みます。
なお、犬で毒性を示す最小量は、体重1kg当たり126mg(126mg/kg)とされています。
ただ、100mg/kgでも致死的であった例もあり、症状が現れるのも半日から数日後の例も見られています(犬)。
猫のアルファリポ酸中毒の症状
アルファリポ酸中毒の症状は、以下のようなものが挙げられます。
アルファリポ酸中毒の症状
- よだれが多量に出る
- 嘔吐
- しんどそうにしている
- うまく歩けない
- 震え
- けいれん
など
アルファリポ酸中毒では、低血糖による発作(神経症状など)や、急性肝障害が起こります。
猫のアルファリポ酸中毒の原因
アルファリポ酸は、人で、
- 抗酸化作用を示す
- 細胞内のエネルギー生産に関わる
- インスリンと相乗的に働き、血糖を低下する
などの作用が考えられています。
これらにより、サプリメントとして販売されるようになりましたが、猫では、誤食による中毒例や死亡例が明らかになってきました。
アルファリポ酸の検査では、血液検査による血糖値や肝臓に関する項目を中心に行われますが、腎障害についてもしっかりと検査・対処をすることがすすめられています。
低血糖は、緊急的に対処しないと死につながる恐れがあるので、動物の様子を観察し、定期的または状態の変化時に血液検査や処置を行う必要があります。
低血糖以外でも、時間が経過するごとに急速に悪化していく可能性もあるので、一定時間ごとに血液検査などを行い、モニターします。
他にも必要な検査があれば行われます。
猫のアルファリポ酸中毒の予防方法
アルファリポ酸は、
- 猫への毒性の高さ(少量で毒性を現すこと)
- 猫に好まれること
- 量により、致死性があること
- 毒性が現れるのが速いこと
- 解毒薬がないこと
などから、猫を飼っている家庭では、管理に非常に注意を要する成分です。
猫を飼育しており、アルファリポ酸を含有した医薬品およびサプリメントを、家や身の回りに置く場合、猫が誤食しないように厳重に管理することが予防方法になります。
猫は高い場所にものぼれるので、ロックの付いた箱や棚の中などに管理すると安全です。
アルファリポ酸のにおいは猫をひきつけるといわれており、袋を噛み破り、何粒も食べてしまうこともよくあるようです。
そのため、棚の奥で箱の中に入れていても、器用に開けてしまったり、カバンに入れていても、サプリメントを引きずり出してしまったりし、誤食する可能性があります。
誤食してしまったとき、またはその可能性があるときは、動物病院に連絡し、速やかに連れて行きましょう。
そのときに、事前に猫の状態や誤食した製品を伝えるか、動物病院に製品を持参し、できる限り摂取量や摂取した時間が分かるようにしておくことも大切です。
猫がアルファリポ酸中毒になってしまったら
猫がアルファリポ酸を誤食してしまったら、
- 摂取後まもないとき
- まだ吐いていない
- 猫の状態が処置に耐えられる
などの状況では、すぐに催吐処置が行われます。
場合により全身麻酔をかけて、胃洗浄を行うこともあります。
治療は基本的に、症状をやわらげたり、全身の状態を整えたりする対症療法が行われます。
また、輸液療法、低血糖やけいれん、肝障害などへの治療が行われます。
状態が急に進行する恐れがあるので、入院しての集中治療や一定時間預かって経過の観察や治療をします。
アルファリポ酸を解毒できる薬はありません。
人、犬、猫は、それぞれが異なる動物であり、思わぬ成分や食品、薬などが、猫の命を危険にさらすことがあります。
サプリメントや人間の薬、動物用の薬などは、ロックのある場所に入れるなど、しっかりと管理することが猫の安全につながります。
誤食やその疑惑があるときは、動物病院に連絡し、速やかに連れて行き、治療を受けましょう。