ユリ中毒
ユリ中毒
猫のユリ中毒とは
猫の中毒は、さまざまな植物や化学物質、食品で起こります。
食べ物では、タマネギやチョコレート、化学物質ではニコチンやエチレングリコールなどです。
植物では、ユリが有名で、猫にとって危険な中毒を引き起こします。
ユリは、春から夏にかけて咲く花ですが、日本では仏花としても使われることがあり、ユリ科植物は花屋などでも一年中見かけることができます。
ユリ中毒では、急性の腎障害を引き起こします。
少しかじったり食べたりしただけで、重度の急性腎不全になり、数日で亡くなってしまうこともあります。
ユリのどの部位も猫にとって毒性があり、花弁、葉、茎だけでなく、花粉やおしべ、ユリ根などでも中毒になります。
植物だけではなく、ユリを活けていた花瓶の水などでも中毒が起こるといわれています。
なお、ユリ中毒は、ユリ以外のユリ科植物でも起きます。
猫のユリ中毒の症状
ユリ中毒は、腎臓に元に戻らない障害を与えます。
ユリ中毒の症状は以下のようになります。
<ユリ中毒の症状>
・嘔吐
・よだれを多量に出す
・元気がない
・食欲がない
・脱水
・ぐったりしている
・尿があまり出なくなる
・震え
・けいれん
など
最初に消化器症状として嘔吐が現れ、そのうち消えますが、その後腎障害が急速に進行し、急性腎不全になるとまた現れます。
急性腎不全が重度になると、尿毒症の症状を現し、最終的に、死に至ります。
猫のユリ中毒の原因
中毒の原因となる物質は特定されていません。
ただ、水溶性の物質と考えられています。
そのため、ユリを活けた花瓶の水やユリ根を調理した汁などでも、猫がなめてユリ中毒になる可能性があります。
さまざまなユリ科植物が、ユリ中毒の原因になるといわれていますが、特に、
・テッポウユリ(イースター・リリー)
・オニユリ
・コオニユリ
・カノコユリ
・キスゲ
が代表的です。
他にもユリ科の植物として、カサブランカやチューリップなどでも中毒例がみられています。
ユリ中毒になると、腎臓の一部が壊死し、元に戻らない急激な腎障害が起こります。
ユリをかじるなど、ユリ中毒の恐れがあるとわかっている場合では、腎臓を中心に検査を行い、時間を追ってモニターします。
ただ、飼い主様もユリの成分を摂取したことが分かっていない場合は、初期の嘔吐の症状だけで、腎障害の発見・治療が遅くなることもあります。
ユリ中毒の検査は以下のようなものが挙げられます。
<ユリ中毒の検査>
・血液検査
・超音波検査
・X線検査
・尿検査
など
他にも、必要な検査があれば行われます。
猫のユリ中毒の予防方法
ユリ科の植物を家に入れないことがユリ中毒の大きな予防となります。
猫は、植物など新しいものがあると、好奇心を持ち、臭いをかぐ、なめる、かじるなどします。
おしべに花粉が付いた状態であれば、臭いをかいで鼻に花粉がついたり、そばを通って体に花粉がついたりすると、それらをなめて中毒になることもあります。
また、花瓶が倒れてこぼれている水を飲むといったことも考えられます。
さらに、屋外に出る猫は、家の中にユリを入れなくても、庭に植えたり、置いたりしていると、かじるなどしてユリ中毒になる危険性があります。
猫がユリ中毒になってしまったら
食べたユリの量や食べてからの時間、猫の状態などから判断し、適応であれば催吐処置や胃洗浄、活性炭の投与などをします。
また、ユリ中毒には、それを解毒する薬はなく、基本的には急性腎不全の治療が行われます
急性腎不全の治療は、輸液療法や利尿剤、制吐剤の投与などを行います。
状態によっては、尿道から膀胱に細い管(尿カテーテル)を通し、尿量をモニターしながら治療します。
重度の急性腎不全の状態であれば、透析※を行います。
※透析とは腎臓で排出されず血液にたまった毒素を減らす方法
透析には、腹膜透析と血液透析があり、どの動物病院でも行えるわけではありません。
特に血液透析は特殊な設備と人手が必要なので、行える施設は比較的限られています。
腎障害が始まる前に、集中的なモニターと輸液治療などを始めると、経過は比較的良いといわれています。
輸液療法は少なくとも24~48時間は行うことがすすめられています。
逆に、ユリの成分を摂取した後、18時間以上経過してから治療を始めた例では、経過は厳しくなる傾向にあります。
中毒が重度である猫や無治療の猫は、急性腎不全により、3日から1週間前後ほどで死に至るといわれています。
一命をとりとめても、ユリ中毒の後遺症として慢性腎不全が残る猫もいます。
中毒では、それぞれの動物種にとって何が危険なのか知識を持ち、それらを摂取しないような環境を作ることが何より大切です。
さらに、ユリをかじる、食べる、なめる、またはその疑いがあれば、症状が現れていなくても、すぐに動物病院に連れて行き、診察を受けましょう。