クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)
クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)
目次
猫のクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)とは
クッシング症候群とは副腎皮質機能亢進症(ふくじんひしつきのうこうしんしょう)とも呼ばれるホルモンの病気です。
腎臓の頭側にある副腎と呼ばれるホルモンを分泌する器官があり、皮質と髄質に分けられます。
その副腎の皮質の部分を副腎皮質といいます。
クッシング症候群では、副腎皮質から分泌されるコルチゾルというホルモンが多量に分泌されるようになります。
コルチゾルは体の働きを保つために重要な役割を担います。
(※コルチゾルの詳しい働きは「犬のクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)」の記事をご参照ください)
しかし、過剰になると感染が起こりやすくなったり、体内での物質の合成や分解のバランスなどにも影響を与えたりします。
副腎皮質からコルチゾルが分泌される仕組みは、脳から出されるいくつかのホルモンが連鎖し、副腎皮質が刺激されてコルチゾルが分泌されます。
副腎皮質を刺激するホルモンは、脳の下垂体(かすいたい)という部分から分泌され、ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)と呼ばれます。
犬のクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)はよくみられますが、猫ではクッシング症候群の発症はまれです。
猫のクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)の症状
猫のクッシング症候群の症状は以下のようなものがあります。
<クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)の症状>
・皮膚が薄くなり、容易に裂ける
・筋肉が細り、歩いたり立ち上がったり運動が難しくなる
・体重減少
など
クッシング症候群の猫のほとんどで糖尿病がみられます。
これはコルチゾルが過剰に分泌されることで、体内でインスリンが効きにくくなるインスリン抵抗性という状態が現れるためです。
糖尿病を併発している場合、初期症状として多飲多尿(よく水を飲み尿量も多いこと)がみられることもあります。
猫のクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)の原因
クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)の原因は、脳の下垂体の異常と、副腎自体の異常に分けられます。
猫では、下垂体の異常による発症がほとんどです。
クッシング症候群の原因は以下のようなものが挙げられます。
<クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)の原因>
・下垂体性
-腺腫(小さなものと巨大なものがある)
-腺癌
・副腎性
-腺腫
-腺癌
※腺腫とはホルモンを分泌する腺細胞の良性腫瘍で、腺癌とは腺細胞の悪性腫瘍のこと。
犬では長期のステロイド投与によりクッシング症候群の状態になる例もよくみられますが、猫ではあまりみられません。
猫のクッシング症候群の検査は以下のようなものがあります。
<クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)の検査>
・血液検査
・超音波検査
・ACTH刺激試験
・尿検査
・CT検査
・MRI検査
など
ACTH刺激試験とは、副腎皮質にコルチゾル分泌を促すACTH(副腎皮質刺激ホルモン)を投与し、投与前と投与後のコルチゾルの値の推移をみて、クッシング症候群を発症していないかを探るものです。
他にも、下垂体と副腎のどちらが原因かを探るために、コルチゾルに似た薬を投与しコルチゾルの値がそれによってどう変化するかみるデキサメサゾン抑制試験などの検査があります。
猫のクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)の予防方法
猫のクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)の予防方法はありません。
また、猫のクッシング症候群の発症はまれであることに加え、病状が進んでから症状が現れる傾向があるので発見しにくいこともあります。
猫がクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)になってしまったら
糖尿病や細菌性膀胱炎など併発疾患があれば、その治療が行われます。
下垂体性の猫のクッシング症候群では、治療方法があまり確立されていません。
犬のクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)でよく使われるトリロスタンという薬剤は猫ではかなり高用量でないと効果が出ないといわれています。
他の薬として抗真菌薬でもあるケトコナゾールなどが使用されます。
これらの薬を使用して副腎の機能を過剰に抑えないように慎重に観察や受診をする必要があります。
獣医師からの指示に従い、投薬期間中ぐったりしているなどおかしな様子があればすぐに動物病院に連れて行きましょう。
また、猫は糖尿病を併発していることがほとんどで、糖尿病であった場合は並行してその治療も行われます。
なお、糖尿病やクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)は内科的治療を行うのであれば生涯投薬や定期的な検査が必要になります。
副腎腫瘍であれば外科手術での副腎摘出も選択肢のひとつです。
しかし、手術は難しく、二次診療施設などを紹介されることもあります。
クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)はしっかりと検査を行い、どのような治療方法を行っていくか獣医師とよく相談することが大切です。
生涯投薬や検査を必要とする場合も多いですが、動物病院と連携を取りながらしっかりと治療を行っていきましょう。