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前立腺とは、雄犬の膀胱の根元にある副生殖腺で、精液を構成する一部である前立腺液を分泌します。前立腺炎とは前立腺に炎症が起こっている状態です。
前立腺炎は、未去勢雄や最近去勢したばかりの中~老齢の雄犬によくみられます。
前立腺炎には、突然発症し激しい症状が現れる急性と比較的軽い症状が長期間にわたりみられる慢性があります。
急性の前立腺炎では下のように、前立腺の強い痛みや発熱、元気食欲の低下や尿の異常などの症状がみられます。重症例では敗血症※が起こることもあります。※敗血症とは、血液が細菌に感染し内臓が機能不全に陥っている状態
・元気消失
・食欲不振
・しぶり
・血尿
・にごったような尿
・体を触られるのを嫌がる
・体が当たるとキャンと鳴く
・歩き方や立ち上がりがぎこちない
・嘔吐
・発熱
・脱水
など
慢性の前立腺炎ではほとんど症状はありませんが、細菌性膀胱炎や血尿など尿路感染症を繰り返します。
前立腺炎は細菌感染が原因となり、尿道に侵入した細菌が前立腺に感染することが多いです。
前立腺炎の検査は以下のようなものが挙げられます。
・触診
※体を触って痛みや異常がないかを調べる
・直腸検査
※直腸に指を入れて直腸越しに調べる
・血液検査
・X線検査
・超音波検査
・尿検査
・尿または前立腺液の鏡検
※顕微鏡を使って異常がないか観察する
・尿または前立腺液の細菌培養・感受性試験
※細菌増殖の有無と細菌やそれに有効な抗生剤の特定
など
前立腺炎では前立腺は大きくならないことも多いです。
場合により前立腺の生検、病理組織検査※を行うこともあります。
※生検とは検査のために組織を採取することで、病理組織検査とは採取した組織を顕微鏡で観察し、組織の状態や病気の診断をする検査
前立腺炎は未去勢の雄犬でよくみられ、去勢を行うことで起こりにくくなります。
去勢を行うことで前立腺肥大症や肛門周囲腺腫なども抑えることができます。
繁殖を行わず去勢手術をするときは、去勢を行う時期を獣医師とよく相談しましょう。
前立腺炎の治療は抗生剤を投与します。尿や前立腺液の細菌培養・感受性試験の結果をもとに選択されます。適切な抗生剤の投与を最低1か月は続けます。
他にも症状や状態に合わせ、脱水していたら輸液療法、炎症や痛みを抑えるために抗炎症剤(鎮痛剤)、血尿なら止血剤などを使用します。
急性前立腺炎の場合、敗血症※や全身的な炎症、または他の臓器の機能障害を招くことがあるのでしっかりと治療を行うことが重要であり、状態により入院が必要になることもあります。※敗血症とは、血液が細菌に感染し内臓が機能不全に陥っている状態
さらに、感染が治まり犬の状態が安定したら補助的な治療として去勢手術を行います。これは、精巣を切除すると前立腺に影響するホルモンがなくなり、前立腺が小さくなることで感染している組織も小さくなることを期待して行います。
また、急性前立腺炎から慢性前立腺炎になることもあり、さらに、前立腺炎に続き、前立腺に膿の袋ができる前立腺膿瘍(のうよう)が起こることもあります。前立腺膿瘍は前立腺炎よりもさらに重篤な状態になる可能性があり、入院での抗生剤での治療の他に手術(膿を排出させるため)などが行われることもあります。
繁殖を行わない場合は、獣医師と去勢手術の時期を相談し、去勢手術を行うことで、中~老齢になってから前立腺疾患にかかる確率が低くなります。
また、犬の様子がおかしかったり、尿に異常がみられたりするときなどは早めに動物病院を受診しましょう。