犬の膣炎とは
膣炎とは、子宮から体の外につながる道である膣に炎症が起きた状態です。
膣炎は一般的にどの犬種でもかかります。また、若齢、老齢など年齢を問わず、避妊の有無や発情のどの段階かも関係なく発症します。
発情前、または1~2回目の発情を迎えた子犬が膣炎になることがあり、大型犬や短頭種で多くみられます。早くて3か月齢の子犬で発症がみられます。
この子犬での膣炎は1回目の発情周期を終えたときや2回目か3回目の黄体期で自然に治っていきます。
黄体期とは、排卵後の卵巣に「黄体」というものを形成されホルモンを分泌することで、着床に備えて子宮の状態を準備していく期間
性成熟を迎えた雌では、外陰部の奇形や膣が狭くなっているなどの構造上の異常によるものが多く、この異常が解消されれば膣炎も治ります。また、構造上の異常や膣炎を引き起こすような病気も持っていないなど、明確な原因が見つからない犬でも膣炎の症状が出ることがあり、その犬は自然に治っていくことが多いです。しかし、それには数カ月から数年の時間を要することもあります。治癒と再発を繰り返し、抗生剤の投与で症状は緩和されます。
犬の膣炎の症状
膣炎になった犬では外陰部から分泌物が出ることが多いです。外陰部を頻繁に舐めたりすることもあります。また、膣炎では尿路感染が併発する場合もあります。
膣炎の主な症状
- 外陰部からの分泌物
- 外陰部をしきりに舐める
など
犬の膣炎の原因
膣炎の原因として、膣やその付近の解剖学的異常(先天的な奇形など)、膣内異物、膣腫瘍などが挙げられますが、そのような異常がみられず原因が不明なものも多くあります。
原因不明の膣炎は体の免疫の状態やホルモンの影響などが要因になっていると推測されますが、膣炎と発情の関係ははっきりとは分かっていません。発情周期を終えるとともに膣炎が治っていく犬もいれば、慢性膣炎を発症している未避妊の雌犬で、発情が膣炎を解消する可能性もあります。
膣炎が疑われるときに行われる検査は以下の通りです。
膣炎の主な検査
- 膣の触診(必要であれば)
- 膣の細胞や分泌液の細胞診※1
- 血液検査
- 超音波検査
- 尿検査
- 膣分泌物の細菌培養・感受性試験※2
※1 細胞の種類や状態、細菌の有無などを顕微鏡で観察する検査
※2 細菌の有無、細菌の種類、その細菌に有効な抗生剤の特定を行う検査 など
膣炎は外陰部からの分泌液で気付くことも多く、未避妊の雌では子宮蓄膿症などの緊急的な疾患や、避妊済みの雌では腫瘍や子宮断端の炎症、また避妊手術での卵巣組織の残りなどが原因となっている可能性があるので、さまざまな検査が行われることがあります。
膣分泌物の細菌培養・感受性試験では、膣内の通常の細菌の種類やバランスと変わらないという報告はありますが、治療計画を立てる上で助けになるので、必要であれば実施されます。
犬の膣炎の予防方法
膣炎の予防方法は特にはなく、どの雌犬でも膣炎にかかる可能性があります。
膣の分泌液や外陰部を気にする様子などが見られたら、早めに動物病院を受診しましょう。また、未避妊の雌犬であれば、以前の発情の期間(日付を含め)など発情周期の情報が大切になるので、日頃から意識し、しっかりと獣医師に伝えるようにしましょう。
犬が膣炎になってしまったら
異物や腫瘍、または構造上の異常(外陰部の奇形など)が原因となっている膣炎では、手術でその異常を解消します。これらの異常が原因であればその異常がなくならない限りは抗生剤を使用して一時的に良くなっても再発を繰り返しますが、異常がなくなれば膣炎は治ります。
内科的治療では、抗生剤の内用薬や外用薬が処方されます。
このとき、必要であれば膣分泌物の細菌や有効な抗生剤を特定する細菌培養・感受性検査が行われます。
膣洗浄が行われることもあります。
初回の発情前に膣炎になった子犬ではほとんどが発情を迎えると自然に治っていくので、治療を行わず経過を観察することも多いです。
以下は治療費例のひとつです。
治療費例
- 治療期間:2週間
- 通院回数:2回
- 合計治療費用:12,636円
- 一通院当たりの治療費例:2,000~10,500円(診察料、超音波検査、処置、内用薬、外用薬(消毒薬))
※2016年1月~2017年12月末までの実際にあった請求事例になります。
※こちらに記載してある診療費は、あくまでも例を記載したものになります。実際の診療内容・治療費等は、症状や動物病院によって異なりますので、ご留意ください。
外陰部からの分泌液などで膣炎が発見されることが多いですが、その症状は膣炎以外にも緊急的な疾患(子宮蓄膿症)や腫瘍など大きな病気のこともあります。異常がみられたら、早めに動物病院に連れて行きましょう。