猫白血病ウイルス感染症とは
猫白血病ウイルス感染症は、猫白血病ウイルス(FeLV:Feline Leukemia Virus)によって引き起こされる感染症です。
猫で広くみられ、リンパ腫などの他の疾患になりやすくなったり、免疫抑制状態になりさまざまな症状がみられたりします。
また、通常、猫白血病ウイルス(FeLV)感染症の猫では、健康な猫に比べて、予想される余命が短くなります。
感染した猫の多くは、血液の腫瘍や免疫抑制状態を発症し、2~4年ほどの余命となるといわれています。
猫白血病ウイルス(FeLV)感染症は、猫免疫不全ウイルス(FIV)感染症と並び、猫において非常に重要な感染症です。
猫白血病ウイルス感染症の症状
猫白血病ウイルスの初期では、発熱やリンパ節※が腫れるといった症状がみられます。
※リンパ節とは、免疫に関連する細胞が集まる場所
この時期に、猫の免疫が働き、ウイルスが体内から排除されることもあります。
ここでウイルスが体内から排除されない場合は、持続感染となります。 幼若猫では、免疫がしっかり確立されていないので、ウイルスが排除されにくいです。
また、潜伏感染といって、骨髄などの細胞内に感染していても、血液中にウイルスが放出されていない状態の場合もあります。 このときは、院内で行うFeLV検査では陰性となり、検出されません。
ウイルスが体内から排除されず、持続感染になった場合の症状は、以下のようなものが挙げられます。
猫白血病ウイルス感染症の症状
- 食欲不振
- 元気がない
- 体重減少
- 歯茎が白っぽい(貧血)
- 口内炎
- 下痢や嘔吐
- 流産、死産
など
これらの症状は、猫白血病ウイルス(FeLV)が引き起こす免疫抑制状態や、それに関連した二次感染、骨髄の異常(貧血などの血液疾患)、リンパ腫などにより現れます。
また、複数の関節で免疫が関わる関節炎が起こることもあります。
さらに、猫白血病ウイルス(FeLV)感染症は、さまざまな疾患を引き起こすと考えられています。
猫白血病ウイルス(FeLV)は、免疫抑制状態も招くので、日和見感染※や、猫伝染性腹膜炎(FIP)などの他の感染症にもかかりやすくなります。
※日和見感染(ひよりみかんせん)とは、免疫機能が正常であれば感染しないような、猫の周りに日常的に存在する細菌や真菌などに感染すること
猫白血病ウイルス(FeLV)感染症によりかかった猫伝染性腹膜炎(FIP)やリンパ腫により脳神経症状が出ることもあります。
猫白血病ウイルス感染症の原因
猫白血病ウイルス(FeLV)は、主に、唾液や鼻汁に日常的に触れることで感染します。
具体的には、猫白血病ウイルス(FeLV)に感染している同居猫との毛づくろいや、食器の共有などです。
他にも、血液からも感染することもあり、猫のけんかでかみあったりして感染することもあります。
一般的ではありませんが、母猫が感染していると、胎盤を介してや乳汁から感染することも報告されています。
猫白血病ウイルス(FeLV)は、上記のような経路で感染し、その後、リンパ節内で増殖します。 そこから全身に広がり、骨髄が侵されます。 そして、最終的に唾液腺などに感染します。
猫白血病ウイルス(FeLV)感染症の検査は、以下のようなものがあります。
猫白血病ウイルス感染症の検査
- FIV/FeLV検査(院内で行う血液検査)
- 血液検査
- X線検査
- 超音波検査
など
猫白血病ウイルス(FeLV)感染症は
- どの病気でも見られるような症状を示す
- さまざまな疾患が関連して起こる
- 猫白血病ウイルス(FeLV)感染症により引き起こされた疾患の症状から、検査を行い、感染がわかることもある
などの要因により、猫の症状や検査の異常所見から、上記以外にも、全身的な検査が行われます
FeLV検査を受けるタイミング・時期
FeLV検査受けるタイミングとして、
- ワクチン接種を行う前
- 新しく猫を飼うとき
- 外出してけんかなどをした可能性のあるとき
などがあります。
猫白血病ウイルスは、感染後約2~4週間で、FeLV検査で検出可能になります。 けんかなど感染の可能性があったときから、最大4週間ほどで検査が可能になります。
また、検査したときに陽性でも、一過性の場合があります。 陽性であれば、3~4か月後に再度検査を行い、そのときに陽性であれば、猫白血病ウイルス(FeLV)の持続感染が確定します。
猫白血病ウイルス感染症の予防方法
猫白血病ウイルスの根本的な治療法は、今のところ確立されていません。
そのため、猫白血病ウイルス(FeLV)感染症に対しては、予防が最重要になります。
感染猫との接触を完全に避けることが、一番の予防となります。
同居猫共に感染していなければ、完全室内飼育を行い、外に出る機会がない状態にします。
同居猫が感染している、または猫が外に出る機会や可能性がある場合は、猫白血病ウイルス(FeLV)に対するワクチンを接種します。
その際に、猫白血病ウイルス(FeLV)感染症の検査がまだであれば行いましょう。
すでに感染している猫には、ワクチンでの予防ができず、接種の必要がないからです。
同居猫の感染や外出の有無、外から他の猫が侵入するかなどにより、その猫ごとのワクチン接種の必要性は異なります。
ワクチン接種に関しては、検査を行った後で、獣医師と相談し、決めていきましょう。
接種することになれば、適切な時期にきちんと接種するようにしましょう。
猫白血病ウイルス感染症になってしまったら
持続感染の状態になれば、体内からウイルスを排除するような根本的な治療はありません。
関連して起こった疾患により、治療法は異なります。
また、全身の状態を整えたり、二次感染を防いだりするために、
- 輸液療法
- 抗生剤の投与
などが行われます。
症状や状態によっては、ステロイド剤を使用する例もあります。
他には、抗ウイルス作用や免疫系への作用を期待して、インターフェロンという薬を投与することもありますが、インターフェロンに関しては、明らかな有効性は立証されていません。
貧血が進行すれば、輸血が行われることもあります。
多頭飼育の中で感染が見つかった場合の対策として、
- 感染猫の隔離
- 他の猫での検査の実施、ワクチン接種の検討
- 感染猫の食器(飲水用も含め)、ベッド、トイレなどを共用しない
- 感染猫が使用した食器や環境の消毒
などがあります。
猫白血病ウイルス(FeLV)は、消毒薬への抵抗性は弱く、70%エタノール(アルコール)や塩素系漂白剤、洗剤、加熱処理などで、消毒できます。
また、新しく猫を迎えるときは、猫白血病ウイルス(FeLV)や猫免疫不全ウイルス(FIV)などに感染している恐れがあるので、検査を行い陰性とわかるまでは、隔離しておくと、他の猫への感染を防げます。
なお、ワクチンの免疫ができる確率は、約8~9割といわれ、完全に感染を予防できるわけではありません。
多頭飼育の中に、感染猫がいる場合は、飼い主様の希望や、どのように飼うことができるかなどにより、獣医師と対策を相談し、実施しましょう。
猫白血病ウイルス(FeLV)感染症は、猫にとって危険な感染症で、根本的な治療がありません。 そのため、猫白血病ウイルス(FeLV)感染症では、予防が最も重要となります。
飼育条件などに応じて、環境整備(完全室内飼育)やワクチン接種などを行い、疑問に思うことや相談があれば、気軽に動物病院に相談してみましょう。