猫のトキソプラズマ症とは
トキソプラズマとは、原虫という単細胞生物で寄生虫です。
猫(ネコ科動物)はトキソプラズマの終宿主です。
終宿主とは、寄生虫が体内の中で、雌雄が分かれ卵のようなもの(オーシスト)ができる有性生殖を行う宿主を指します。
トキソプラズマは猫の消化管内で増殖します。
猫の消化管内で、最終的に有性生殖が行われ、猫の糞便中に、オーシストという卵のようなものが排泄されます。
この時点でオーシストは感染できる状態ではなく(未熟オーシスト)、排泄後、環境中で感染可能な成熟オーシストへと成長します。
成熟オーシストになるまでには、24時間以上の時間が必要です。
その成熟オーシストを猫や小鳥、ネズミ、豚、イノシシなどが水や土壌などから摂取します。
小鳥やネズミ、豚、イノシシなどは中間宿主と呼ばれ、これらの動物では、筋肉内に寄生します。
この生肉を食べることでも、感染します。
トキソプラズマ症は、ズーノーシス(人獣共通感染症)といって、人にも感染することがあります。
猫のトキソプラズマ症の症状
子猫が感染すると重症化することがありますが、成猫が感染すると症状が出ることはほとんどありません。
トキソプラズマ症の症状は、重症化すると、
など
激しい症状が現れる重症例では、死に至る猫もいます。
子猫だけでなく、大きな病気を持っている猫、老齢猫などの免疫が低下している状態の猫でも感染により症状が現れることがあります。
猫のトキソプラズマ症の原因
トキソプラズマという寄生虫が寄生することにより起こります。
猫のトキソプラズマ症の感染は、
- 筋肉内にトキソプラズマが感染している小鳥やネズミなどの中間宿主を捕食すること
- 成熟オーシスト(感染可能な卵のようなもの)を環境中(水や土壌など)から摂取すること
- 体をなめて成熟オーシストを摂取すること
で起こります。
屋外に出て、ネズミや小鳥を捕食する機会があったり、土や水などに触れる機会があったりすると、感染機会が増えることがあります。
なお、人のトキソプラズマ症は、
- 生肉の摂取
-
成熟オーシストの環境中からの摂取
- 野菜、果物
- 園芸、猫の糞便
などの経路で感染します。
猫のトキソプラズマ症の検査は、以下のようなものがあります。
症状によって行われる検査は異なります。
トキソプラズマ症の検査
- 血液検査(特殊検査を含む)
- 糞便検査
- 眼科検査
- 神経学的検査
など
トキソプラズマ症の血液検査で、時間の経過による免疫の反応の変化(抗体価の変化)を調べる検査では、初回から日を置いて、複数回検査を行う必要があります。
それぞれの症状に合わせて、検査が選ばれ、必要であれば上記以外の検査も行われます。
猫のトキソプラズマ症の予防方法
猫のトキソプラズマ症では、糞便をしっかりと処理すること、室内飼育をし、土壌や水、中間宿主の捕食を介して感染する機会を抑えることが予防につながるかもしれません。
糞便中に排泄された未熟なオーシストは、感染可能な成熟オーシストになるまで24時間はかかるといわれているため、その前にしっかりと処理することが大切です。
また、生肉を与えることも控え、与えるときはしっかりと加熱しましょう。
猫がトキソプラズマ症になってしまったら
トキソプラズマ症の治療は、抗生剤の投薬と、それぞれの症状を和らげる治療を行います。
全身性トキソプラズマ症の治療は難しいともいわれています。
感染猫は生涯トキソプラズマに対する免疫を持ちます。
トキソプラズマは人間にも感染し、妊婦の初感染では胎盤感染による胎子への影響に注意が促されています。
猫は室内飼育を行うこと、生肉を食べない、与えないことに注意し、糞便は24時間以内に処理しましょう。
糞便の処理は手袋をする、または手をよく洗いましょう。
食器類や猫のトイレを熱湯消毒する(60℃で30分、80℃で1分、100℃で数秒)ことでオーシストを死滅させることができます。
免疫不全の状態にある方や、抗体検査が陰性の妊婦は、糞便処理等はご家族にやってもらうことがより安全です。
猫への対処だけでなく、人も野良猫に接触を避ける、土などを触るときは手袋をする、よく手を洗うなどの対処を行うことができます。
猫におかしい様子があれば、早めに動物病院に連れて行きましょう。