猫カリシウイルス感染症とは
猫カリシウイルス感染症は、猫ヘルペスウイルス感染症とならび通称「猫風邪」と呼ばれる上部気道感染症です。
どの猫種やどの年齢の猫でも発症しますが、体の抵抗力の低い猫で発症しやすいです。
猫カリシウイルス感染症の症状
猫カリシウイルスは、舌、口腔の上側(口蓋)、鼻の穴から肺までの気道の粘膜、結膜(眼)で増殖します。
発熱や涙、くしゃみなど人の風邪のような症状を発症し、進行すると元気や食欲も消失し、肺炎を併発することもあります。
その症状は猫ヘルペスウイルス感染症と類似しており、区別が難しかったりどちらにも感染していたりすることもあります。ただ、猫カリシウイルス感染症では、舌や口腔の上側に水疱や潰瘍ができることが特徴的です。
猫カリシウイルス感染症の症状
- 発熱
- 元気がなくなる
- 舌や口腔の上側に水疱や潰瘍ができる
- くしゃみ
- 鼻汁が出る
- 涙が出る
- 食欲不振
- 肺炎
- 関節炎により足を引きずる(あまりない)
など
また、明確な仕組みは示されていませんが、口内炎や歯肉炎の猫の病変部から猫カリシウイルスが出ることもあり、関連性が疑われています。
●強毒全身性猫カリシウイルス感染症(virulent systemic feline calicivirus disease)
猫カリシウイルス感染症の中でも、1998年に米国で初めて報告された強毒全身性猫カリシウイルス感染症というものがあります。これは、従来の猫カリシウイルス感染症に比べて、症状が非常に重篤で、致死率も半数以上と非常に高いものです。
また、子猫より成猫がかかった方がより重篤になるといわれています。
強毒全身性猫カリシウイルス感染症の症状は以下のようなものがあります。
強毒全身性猫カリシウイルス感染症の症状
- 重篤な上部気道感染症
- 呼吸困難
- 肺炎
- 発熱
- 皮下浮腫
- 口腔内、足の潰瘍
- 腸炎
- 黄疸(おうだん)
- 肝炎
- 膵炎
- 血液凝固異常
など
猫カリシウイルス感染症の原因
猫カリシウイルス感染症の病原体は猫カリシウイルスです。
猫カリシウイルスに感染すると、ウイルスを排泄しますが、猫カリシウイルス感染症から回復して症状がない猫でも数週間から数か月ウイルスを排泄します(この個体をキャリアーと呼びます)。場合によってはウイルス排泄がない時期もありながら、生涯ウイルス排泄をし続けることもあります。
猫カリシウイルスの感染は、このようにウイルス排泄をしている猫の分泌物中の病原体が直接的に口や鼻に付くことで起こります。
また、カリシウイルスは体外に出ても生き残れる力が比較的強く、人や器具を介して間接的に病原体と接触することでも感染します。
猫カリシウイルスの感染経路
-
感染猫、またはキャリアー猫※の分泌物への直接的接触
※感染症から回復後、症状がない状態でウイルス排泄をしている猫 - 病原体との間接的な接触(人や食器などを介したもの)
猫カリシウイルス感染症での検査
- 血液検査
- X線検査
など
実施される検査は症状や経過によって異なり、必要であれば他の検査も行われます。
猫カリシウイルス感染症の予防方法
猫カリシウイルス感染症の予防方法として、病原体との直接的、間接的接触を避けるということが挙げられます。
カリシウイルスの中でもわずかな遺伝子の違いによりさまざまな種類(株といいます)が存在します。屋外では特に多くの株(種類)が存在し、ワクチンとは異なる株のカリシウイルスに感染することも多くあります。
さらに、屋外では直接、間接関わらず病原体に触れる機会が屋内よりも格段に上がります。
よって、完全屋内飼育をするということが病原体との接触機会を減らすことになります。
また、飼い主様が感染猫などと接触した場合もきちんと手指や接触部位を消毒すること、感染猫が使用した食器や布は他の猫とは共有せず、消毒するようにしましょう。
猫カリシウイルスはワクチンがあり、通常3種以上の混合ワクチンに含まれています。ワクチンをしたから完全に猫カリシウイルス感染症にかからないというわけではありませんが、発症時の症状を軽減できます。ワクチン接種をきちんと行うことも予防方法のひとつです。
猫カリシウイルス感染症の予防方法
- 屋外に出さない
- 感染猫との接触時には接触部位を消毒する、着替える
- 感染猫と食器や布の共有を行わない、消毒する
- ワクチン接種を行う
- 多頭飼育の場合、他の猫にも症状が現れたらすぐに受診する
など
猫カリシウイルス感染症は早期治療で回復が早まることが多いです。おかしい様子が見られたら、早めの受診を心がけましょう。
猫が猫カリシウイルス感染症になってしまったら
猫カリシウイルス感染症の基本的な治療は体のバランスを整えたり、細菌などから体を防御したりし、その間に猫の抵抗力の回復を図ることです。
二次的な細菌感染を予防し抑えるため、抗生剤を使用します。脱水があれば、輸液療法を行います。
二次感染が起き重症化しなければ、1週間程度で回復し始め、2~3週間で治っていくことが多いです。
ただ、子猫や抵抗力の低い猫では重症化しやすいので、初期症状のうちに受診し治療を開始することが重要になります。
さらに、多頭飼育の場合は他の猫にも症状が出ないかよく注意し、症状が現れたらすぐに受診し、治療を始めましょう。
治療費の一例は以下の通りです。重症化しなかった例で、短期間で良くなっています。
治療費例
※1 FIV/
FeLV検査:猫免疫不全ウイルス(FIV)、猫白血病ウイルス(FeLV)、それぞれの感染の有無を調べる血液検査
※2016年1月~2017年12月末までの実際にあった請求事例になります。
※こちらに記載してある診療費は、あくまでも例を記載したものになります。実際の診療内容・治療費等は、症状や動物病院によって異なりますので、ご留意ください。
家で看護するときに食欲が低下していたら、人肌程度の温かいよく混ぜた缶詰やパウチの食事を与えると、食欲が出ることがあります。猫により食事の好みは分かれるので、他の病気などを考慮する必要がなければいろいろ試してみてください。
また、日ごろ屋外に出る猫でも室内で過ごすようにし、猫がゆっくりと休め、飼い主様も猫の様子をよく見ることのできるような環境を整えましょう。
猫カリシウイルス感染症は早期に治療を始めることで重症化を防げる場合もあります。くしゃみなどおかしい様子が見られたら早めに病院に連れて行きましょう。