回虫症
回虫症
犬の回虫症とは
回虫とは消化管内寄生虫で、犬ではよくみられる代表的な寄生虫です。
さらに、回虫は人にも感染するので、気を付けなければなりません。
糞便中や汚染された環境から感染可能な虫卵を摂取することで感染します。
感染した犬の糞便はしっかりと処理し、環境中に残さないことが大切です。
回虫にはさまざまな種類があり、犬に感染する回虫には、
・犬回虫
・犬小回虫
があります。
日本では犬に感染する回虫のほとんどが犬回虫です。
犬回虫の虫卵の卵殻は、表面がでこぼこした厚いたんぱく膜と呼ばれるものがみられることが特徴的です。
成虫の大きさは性別によっても異なりますが、4~18cmの白く細長い寄生虫です。
犬小回虫は世界ではみられるものの、日本では感染数が少なく、輸入動物などでみられることがあります。
犬回虫と犬小回虫は、感染経路や感染してからの体内での経路は異なりますが、最終的に腸に寄生します。
ここでは、日本の犬回虫症のほとんどを占める犬回虫について説明します。
犬の回虫症の症状
少数の回虫に感染していても症状がないことが多いです。
しかし、消化管内の回虫が増えてくると次のような症状が出てくることがあります。
<回虫症の症状>
・糞便中に回虫が混ざって出てくる
・下痢
・回虫を吐く
・食欲不振
・成長不良
・体重減少
・毛づやが悪い
など
寄生する数が重度である場合は、腸閉塞を起こす例もあります。
回虫の卵は顕微鏡でないとみることはできませんが、成虫が糞中に排泄されたときに飼い主様が気付くことが多いです。
ただし、成犬になれば回虫に対する抵抗性がついてくるので、回虫が成虫まで成長できるのは大体が6か月以内の子犬までといわれています。
回虫が人に感染すると、本来回虫が感染する動物ではないため、皮膚や脳などの神経系、眼、肝臓などに回虫が迷い込み、炎症や障害を起こし、ときには深刻な後遺症をもたらすことがあります。
犬の回虫症の原因
犬回虫の感染経路は、
・口から感染可能な虫卵を摂取することによる感染(経口感染)
・母体から子犬への感染(垂直感染)
があります。
垂直感染には、胎盤を介して胎児に感染する経胎盤感染と授乳時に乳汁から感染する経乳感染があります。
年齢が上がるにつれて回虫への抵抗性が増すので、6か月以内、特に2~3か月の子犬が回虫症にかかります。
犬回虫の感染経路、感染する動物と、犬の体内に入ってから成虫になるまでの経路は下のようになります。
<犬回虫>
感染する動物(終宿主) | 犬科動物 |
---|---|
感染経路 | ・経口感染 ・経胎盤感染 ・経乳感染 |
体内で成虫になるまでの経路 | 小腸でふ化⇒肝臓⇒心臓⇒肺⇒気管支・気管⇒のど⇒食道⇒胃⇒小腸➡成虫へ |
経胎盤感染では、妊娠後期に幼虫が胎児の肺へと侵入し、生後肺から小腸へと移動し、その後成虫となります。
感染犬から排泄した糞便中の虫卵はすぐには感染できない状態です。
回虫卵は長期間環境に耐えることができ、虫卵は環境中に排泄された後で1~3週間かけて感染可能な状態になります。
この状態の虫卵を摂取しないと回虫には感染しません。よって、感染犬が排泄した直後の糞便から感染するということはありません。
また、犬回虫の診断は糞便検査により行いますが、糞便に混じったり吐いたりした虫体や、症状なども合わせて判断します。
犬の回虫症の予防方法
回虫症は子犬で特にかかりやすいので、子犬を飼い始めたら症状がなくても一度糞便検査を行っておくと安心です。
コクシジウムやジアルジア、鞭虫(べんちゅう)や鉤虫(こうちゅう)などの他の消化管内寄生虫の感染が見つかることもあります。
同居犬が感染した場合は糞便をしっかり処理すること、感染犬の排泄後お尻周りの被毛に糞便が残らないようにきれいにすることが重要です。
また、感染犬、同居犬ともに道路や地面に落ちている糞便を食べないように気を付けましょう。
回虫は人にも感染します。
特に幼児への感染が多く、他には免疫が低下している、あるいは高齢の場合も感染しやすくなるので注意が必要です。
前述したように回虫では、排泄されてすぐの糞便中の虫卵が感染することはありません。
このことから、感染しないためにより重要なのは、環境中に虫卵が残りそれが感染可能な状態になるのを防ぐこと、またはそのような環境中からの感染を避けることです。
感染犬の糞便をしっかりと処理すること、そして感染犬の被毛からも便が長期間付着するなどして感染する可能性があるので、犬との接触後は必ず手を洗うようにしましょう。
猫が公園の砂場に糞便をすることで砂場に感染可能な回虫卵があり、幼児に回虫が感染することにも注意を呼びかけられています。
犬が回虫症になってしまったら
回虫症になったときは、駆虫薬を投与します。
他の消化管内寄生虫の有無によって処方される薬の種類が異なることがあります。
一回では駆虫されないこともあるので、必要であれば複数回、検査や駆虫薬の投与が行われます。
以下は治療費の一例です。この例では初診時に検査と投薬を行い、再診で回虫が駆虫できたかどうかを確認する糞便検査を行っています。
治療費例
治療期間:3週間
通院回数:2回
合計治療費用:2,866円
一通院当たりの治療費例:1,000~1,900円(診察料、糞便検査、内用薬)
※2016年1月~2017年12月末までの実際にあった請求事例になります。
※こちらに記載してある診療費は、あくまでも例を記載したものになります。実際の診療内容・治療費等は、症状や動物病院によって異なりますので、ご留意ください。
回虫は犬では特に子犬に感染しやすいですが、人にも感染する寄生虫です。
犬への感染だけでなく、飼い主様やご家族へも感染しないように十分気を付けましょう。