犬のマダニ寄生とは
マダニは数mmから1~2cm(吸血時)ほどの大きさがある大型のダニです。
さまざまな哺乳動物、鳥類、爬虫類などに寄生します。
犬に寄生するマダニの中では、フタトゲチマダニと呼ばれるマダニが有名です。
マダニは、山、森林や草地などの屋外に生息しています。
マダニは宿主の体表で吸血し、成長します。
マダニの寄生は皮膚症状などを引き起こしたりしますが、その他にも吸血の際に病原体を媒介することもあり、予防が重要視されています。
マダニが媒介する病原体は、人にも犬にも感染する人獣共通感染症(ズーノーシス)を含みます。
マダニが媒介する犬に関わる病気は、以下のようなものが挙げられます。
マダニが媒介する犬の病気
●バベシア症
赤血球に寄生し、赤血球が壊されることで、貧血になります。
命を落とすこともある感染症です。
マダニが媒介するズーノーシス
●重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
2017年に犬での発症、また犬から人への感染・発症も確認された感染症です。
血液や体液を通して、動物や人の間で感染が起こります。
ただ、飼育動物を介した感染はまれな事例とされています。
元気、食欲の低下、消化器症状、神経症状などが現れます。
人、犬、猫、チーターで発症が認められており、致死率の高い感染症です。
●リケッチア
日本紅斑熱
一般的に犬では無症状で、人では頭痛、発熱、倦怠感などが現れ、赤みを伴う発疹が出ます。
エーリヒア症
急性の場合は、発熱、鼻汁、食欲不振、元気消失、貧血などの症状が現れます。
人では、発熱、頭痛、関節痛、倦怠感などの症状がみられ、放置した場合、命に関わることもあります。
●ライム病
ボレリア属の細菌によって引き起こされ、犬では発熱や関節炎、神経症状などがみられます。
人では皮膚症状、発熱、関節痛などが現れます。
●Q熱(コクシエラ症)
コクシエラ菌が病原体となります。
犬では一般的には感染していても症状が現れません。現れても軽い発熱や流産、不妊症などです。
人では、インフルエンザに似た高熱や呼吸器症状、慢性感染では疲労感などです。
犬のマダニ寄生の症状
マダニの寄生による、直接的な症状については、
- 体をひっきりなしにかく
- 皮膚が赤くなる
- 寄生部分を気にする
などが挙げられます。
ただ、マダニが寄生していても、症状がなく、犬も気にしていないことも多く、定期的なブラッシングやスキンシップで飼い主様が気付くこともよくあります。
栄養状態が悪く、多数のマダニ寄生がある場合は、貧血が引き起こされる例もみられます。
マダニは全身のどこにでも寄生しますが、マダニが寄生しやすい部位は、
- 耳
- 目の周り
- 鼻の周り
- 胸部
- 内股
- 肛門の周り
などです。
犬のマダニ寄生の原因
マダニは草むらなどで寄生する動物が来るのを待機しています。
散歩やレジャーで犬が草むらや山に入ったときに、マダニに寄生されます。
かゆみや気にする様子、皮膚症状があるのに、全身くまなく確認してもマダニを見つけられないこともあります。
そのような場合は、マダニやノミの駆除薬(予防薬)を投与し、症状に改善がないかみたりします。
犬のマダニ寄生の予防方法
マダニの予防方法として、
- 液状の予防薬を滴下するタイプ
- 錠剤やフレーバーの付いたおやつタイプなどで食べさせる経口投与のタイプ
があります。
ほとんどがノミの予防も同時にでき、製品によっては、フィラリアの予防もできます。
液剤を背中側の首筋に滴下するタイプでは、数日間シャンプーはできません。
食べさせるタイプは、シャンプーやトリミングなどを気にする必要はありませんが、錠剤を飲み込んでおらず、後で口から出してしまう可能性があります。
それぞれの薬剤のタイプの利点を生かし、犬に合ったものを選びましょう。
予防期間としては、地域にもよりますが、少なくとも春から秋にかけてはマダニ・ノミ予防を行った方がいいといわれています。
ただ、何らかの理由で脾臓を摘出した犬では、マダニ予防は通年行う必要があります。
予防の薬剤や予防期間については、生活スタイルや犬の性格、居住地域などを含め、獣医師に気軽に相談してみましょう。
犬にマダニが寄生してしまったら
犬にマダニが寄生している場合、無理して取るとマダニの口の部分が犬の皮膚内に残ることがあります。
マダニ駆除剤(予防剤と同様)を投与するか、動物病院で獣医師に取り除いてもらいましょう。
マダニは、皮膚症状や貧血などを吸血によって直接的な症状をもたらすだけでなく、人にも感染しうる病原体を媒介する可能性があります。
犬にとって散歩などの活動は欠かせないものです。
しかし、その中でマダニが寄生する機会も多く存在します。
マダニ・ノミ予防をしっかりと行い、犬や犬との生活を守りましょう。