鼻咽頭狭窄症
鼻咽頭狭窄症
猫の鼻咽頭狭窄症とは
鼻は鼻の穴、鼻腔、鼻咽頭(びいんとう)、食道の順に続く構造をしており、その中で鼻咽頭は鼻腔を経た後で食道へと達するまでの領域を指します。
鼻咽頭狭窄症(びいんとうきょうさくしょう)とは、この鼻咽頭の一部が狭くなっている状態のことです。
鼻咽頭狭窄は犬よりも猫で多く見られ、発症は比較的まれな疾患です。
猫の鼻咽頭狭窄症の症状
猫の鼻咽頭狭窄症の症状は以下のようなものがみられます。
<鼻咽頭狭窄の症状>
・呼吸時にズーズーという音がする
・呼吸時にいびきのような音がする
・呼吸と合わせて頬がぺこぺこと膨らむ
・肩で大きく呼吸をする(努力性呼吸)
・よく眠れていない
・元気がない
・食欲がない
・呼吸困難
など
鼻汁やくしゃみはあまりみられず、呼吸時に音がすることが主な症状です。
呼吸時に常に音がするだけのときもありますが、進行すると呼吸困難や睡眠障害、元気・食欲の消失などが現れます。
猫の鼻咽頭狭窄症の原因
鼻咽頭狭窄の原因は生まれつきのもの(先天性)と、炎症への反応などにより引き起こされたもの(瘢痕性:はんこんせい)があります。
●先天性
鼻腔と鼻咽頭をつなぐ穴である後鼻孔(こうびこう)が塞がっているなど、先天的な異常により鼻咽頭狭窄が起こります。
●瘢痕性(はんこんせい)
上部呼吸器(鼻や咽頭など)感染の後に炎症に対する反応により膜のような組織ができるなどして鼻咽頭が狭くなります。感染症の後に突然発症することもあります。
慢性鼻炎、胃液の逆流、外傷、深くえぐれた傷である潰瘍(かいよう)の後でも起こることがあるといわれています。
また、鼻咽頭狭窄症と似たような症状を示す鼻咽頭ポリープや慢性鼻炎、鼻腔内腫瘍や鼻腔内異物などの疾患があるので、それらの可能性を除外する必要があります。
鼻咽頭狭窄症の検査は以下のようなものが挙げられます。
<鼻咽頭狭窄症の検査>
・呼吸の様子、呼吸音、口腔内の観察
・X線検査
・鼻の内視鏡検査
・CT検査/ MRI検査
など
他にも鼻の穴から鼻腔内にカテーテル(細い管)を挿入して鼻咽頭にカテーテルが問題なく通るかを調べる検査、鼻の穴にスライドグラス(ガラスの板)を当てて空気が通っているかを調べる検査やX線透視検査※もあります。※X線透視検査は設備が必要であり、どの動物病院でも行える検査ではありません。
その他にも必要な検査があれば行われます。
猫の鼻咽頭狭窄症の予防方法
鼻咽頭狭窄症は、上部呼吸器感染後に起こることもあるので、猫ヘルペスウイルス感染症や猫カリシウイルス感染症などに注意が必要です。猫ヘルペスウイルス感染症は一度感染するとほとんどの猫で体内に潜伏し再発を繰り返します。
同居猫も含めまだ猫が感染していないのであれば、感染猫との接触を避けるため完全室内飼育を行うことで感染の確率を下げることができます。
また、上部気道感染とは関係なく鼻咽頭狭窄症が起こることもあります。呼吸などに異常がみられたら早めに動物病院を受診しましょう。
猫が鼻咽頭狭窄症になってしまったら
鼻咽頭狭窄症の治療として、バルーン拡張法があります。鼻咽頭の狭くなっている部分でバルーンを膨らませ押し広げます。
膜などが形成されている場合は切開することもあります。これは鼻腔内の内視鏡やX線透視をしながら行うことが一般的です。
バルーン拡張と合わせて、拡張した部位を押し広げたままにするステントという器具を設置する治療もあります。
バルーン拡張のみを行う場合、拡張は間隔をあけて複数回行われることが多いです。その後の症状の経過や狭窄具合に合わせて再度検査・拡張を行う場合もあります。
それと並行して炎症を抑えるステロイド剤や感染に対する抗生剤の投与などをすることがあります。必要であればネブライザーといって薬剤を含んだ霧を吸入させる治療を、動物病院または自宅で行います。
症状は現れていないか、再度狭窄は起きていないかなど調べるために術後も定期的に診察することになります。
呼吸音や呼吸状態を日頃から観察し、異常がみられたら早めに動物病院に連れて行きましょう。