ニコチン中毒

犬のニコチン中毒とは

ニコチンとは、タバコに含まれる成分で、タバコやニコチンパッチ、ニコチンガム、タバコが溶け出した飲料や水などを、犬が誤食または誤飲して、ニコチン中毒になります。


ニコチン中毒は、死亡することもある中毒です。


犬や猫の最小の致死量は約10 mg/kgのニコチンとされていますが、はっきりとはわかっていません。
なお、小児(人)では、1 mg/kgで中毒が起こります。


タバコの箱に表示されているニコチン量は、吸引した場合のニコチン量です。
タバコ本体には、10~30 mg程度のニコチンが含まれているといわれています。


葉タバコは、飲み込んでも嘔吐が誘発されることが多く、胃の中にある間は胃酸でpHが酸性なので、吸収されにくい状態になっています。

ただ、腸管に進むと、腸管内はpHがアルカリ性になり、ニコチンが急速に体内に吸収されます。


さらに、ニコチンは水溶性なので、ニコチンが含まれる液体を摂取すると、腸管へと速やかに運ばれ、摂取後すぐにニコチンが体内へと吸収されます。

犬のニコチン中毒の症状

ニコチン中毒は、ニコチンが体内に吸収されると、急速に症状が現れます。

ニコチン中毒の症状
  • 元気がなくなる
  • ぐったりする
  • 大量のよだれを流す
  • 嘔吐
  • 下痢
  • 筋肉の震え
  • 脈が速い、または遅い
  • 不整脈
  • 呼吸が速い
  • 瞳孔が開く(散瞳)
  • けいれん
  • 呼吸困難
  • 昏睡

など


他には、高血圧、または低血圧、運動失調(体をうまく動かせない)、さらに呼吸器が麻痺し、重度のニコチン中毒では死に至ります。

犬のニコチン中毒の原因

ニコチンが作用するニコチン受容体は、自律神経、脳の一部や脊髄、運動神経が筋肉につながっている部分などに存在しています。


これにより、消化器症状や呼吸器症状、神経症状などさまざまな症状が現れます。


検査では、血液検査や超音波検査、尿検査などが行われますが、特に異常がないことが一般的です。


ニコチン中毒の診断は、タバコなどを誤食したところを直接見ていることによります。
また、嘔吐したものの中にタバコの葉や残骸がみつかり、タバコ中毒と判明することがあります。

犬のニコチン中毒の予防方法

犬がタバコやニコチンパッチ、ニコチンガムなどを誤食したり、ニコチンが含まれた液体を誤飲したりしないように、きちんと管理することが予防方法になります。


特に、ジュースの空き缶やペットボトルを灰皿代わりにしたり、水につけたタバコをそのままにしたりすると誤飲する可能性があります。


他には、散歩中に道路に落ちているタバコを拾い食いしてしまう恐れもあるので、注意が必要です。


誤食や誤飲をした、またはその疑いがある場合は動物病院にすぐ連絡しましょう。


その際には、紙巻きたばこ、ニコチンパッチ、タバコの溶けだした液体など、どのようなもの(製品名も含め)をどのぐらい、いつ食べたかをできる限り把握し、伝えることが大切です。


誤食した製品の残りやパッケージなどがあれば持参し、嘔吐物に何か混じっているときは、それも持って行きましょう。

犬がニコチン中毒になってしまったら

タバコ(紙巻きタバコ)を誤食してしまったときに、応急処置として、水や牛乳などの液体を与えるのは逆に危険な場合があります。


タバコからニコチンが液体に溶け出し、腸管へと送られるので、体内へすぐに吸収され、さらに胃酸も薄まり吸収率も上がるためです。


催吐や胃洗浄については、誤食したものや量、状況や犬の状態などを考慮し、獣医師が慎重に判断します。


自己判断で応急処置をせず、動物病院にすぐ連絡し、判断を仰ぎましょう。


嘔吐が止まっていれば、活性炭の投与なども行われます。


他には、症状に沿った治療がされます。
具体的には、

  • 低血圧であれば積極的な輸液療法
  • けいれんがあれば抗けいれん薬の投与
  • 呼吸障害があれば酸素吸入など
  • 脈が遅い、下痢などがみられるときなどはアトロピンの投与

などです。


ニコチン中毒は、ニコチンの摂取量が多ければ、最悪の場合、死に至る危険な中毒です。


しっかりと管理を行い、誤食・誤飲を防ぐことが何より重要です。


もし誤食してしまった場合は、すぐに動物病院に連絡し、診察を受けましょう。

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