犬の観葉植物による中毒とは
犬が中毒を起こす植物には、観葉植物や花などを含め、多くの種類があります。
※犬の花による中毒はこちらをご参照ください。
中毒症状は植物によって異なり、軽度の皮膚症状や消化器症状が現れるものもあれば、神経症状や心臓、呼吸器の症状など重症になる例もみられます。
症状の程度は、植物の種類や誤食した量などによります。
犬は身の回りに植物があると、興味がわいたときや退屈したときなどに、かんだり口に入れて食べてしまったりすることがあります。
それを防ぐには、まず中毒を起こす植物を知ることが大切です。
犬の観葉植物による中毒の症状
ここでは、身の回りにある中毒を起こす観葉植物と、中毒を起こしたときの症状を挙げます。
中毒を起こす観葉植物7種
●アイビー
よだれを大量に垂らす、嘔吐、下痢、飲み込むことができない、口の中を痛がる、刺激性皮膚炎、眼を痛がる、涙が出る、眼を開けづらそうにするなど。
大量に誤食した場合、運動失調や散瞳、昏睡、呼吸困難や頻脈などの報告があるが、かなりまれ。

●ポトス
口の刺激や痛み、口唇や舌、口腔内の激しい炎症、よだれを垂らす、刺激性皮膚炎、嘔吐、飲み込みにくいなど。
のどの腫れが重度になることがあり、呼吸困難を起こすことがある。
慢性的に食べているとシュウ酸カルシウム結石※ができる例もみられる。
※「犬の膀胱結石」をご参照ください。

●ディフェンバキア
ポトスと同じく、口の中の痛みや激しい炎症、のどの腫れ、刺激性皮膚炎、嘔吐などがある。
ただ、ディフェンバキアの方が危険な状態になる可能性があり、大量に誤食すると、低カルシウム血症※、不整脈、心拍数の異常、シュウ酸カルシウム結晶の形成による腎臓の壊死(えし:細胞や組織が死ぬこと)、呼吸困難が起こりえる。
※重度の低カルシウム血症では、けいれんなどを起こし、死に至ることもある。

●ドラセナ(幸福の木)
嘔吐、元気がなくなる、食欲がなくなる、大量によだれを垂らすなど。

●アロエ
嘔吐、立てなくなったり動きにくくなったりする、下痢など。

●ナンテン
嘔吐、腹痛、よだれを大量に流す、呼吸困難、低血圧、心拍数の異常、肺水腫、ふらつき、失禁、昏睡など。
まれだが、突然死することもある。

●ソテツ
肝不全により、後々、肝性脳症や黄疸(おうだん)が出ることも。

他にもさまざまな観葉植物での犬への毒性が報告されており、ここに挙げたものは中毒を引き起こす植物の中のごく一部です。
犬の観葉植物による中毒の原因
植物により含まれている毒性物質が異なります。
紹介した7種の植物に関して、毒性成分を以下に挙げます。
●アイビー:サポニン
●ポトス:シュウ酸カルシウム
●ディフェンバキア:シュウ酸カルシウム、たんぱく質分解酵素
ポトスやディフェンバキアはサトイモ科の植物で、サトイモ科の植物や多くの植物にはシュウ酸カルシウムが含まれています。
そのシュウ酸カルシウムが刺激となり、皮膚炎や口腔の腫れなどを引き起こします。
●ドラセナ(幸福の木):サポニン
●アロエ:サポニン、アントラキノン
●ナンテン:青酸配糖体、ナンテニン、プロベルベリンアルカロイド
●ソテツ:サイカシンなど
植物に含まれるこれらの毒性成分がさまざまな症状を引き起こします。
ただ、犬が植物を誤食しても、
- 食べた植物が何かわからないことが多い
- その植物では中毒の情報が少ない
- 毒性成分も明らかになっておらず中毒症状の予測が難しい
といった例もよくみられます。
犬の観葉植物による中毒の予防方法
犬が中毒を引き起こす観葉植物を誤食しないように環境を整えること、散歩や移動中に中毒となる植物を誤食しないようにする、または近づかないなどの対処法があります。
中毒になる植物だけでなく、屋外では植物に殺虫剤や除草剤がかかっていることもあるので、注意が必要です。
また、中毒になる植物を誤食してしまった場合は、どの植物を、どのぐらいの量、いつ食べたか(あるいはかじったか)をできる限り把握し、獣医師に伝えましょう。
犬が観葉植物による中毒になってしまったら
中毒になる観葉植物を誤食してしまった場合、植物の種類や量、食べてからの時間、犬の状態などにより、対処方法が変わってきます。
場合により、
- 催吐処置
- 胃洗浄(全身麻酔)
などを行います。
ただ、催吐処置は植物の種類や状況、犬の状態により行わない方がいい場合もありますので、自己判断で応急処置として吐かせないようにしましょう。
他には、体の状態を整える、排泄を促す、それぞれの症状に対処するといった
- 皮膚や目の洗浄
- 輸液療法
- 電解質の補正※
- 活性炭の投与
- 抗けいれん剤
- 抗不整脈薬
- ショックへの対処
などの治療が行われます。
※電解質の補正とは、輸液療法などによりナトリウム(Na)やカリウム(K)など細胞の働きに不可欠な物質のバランスを整えること
軽症であれば、ほとんど症状が出ないこともありますが、植物の種類や誤食した量によっては、肝不全や腎不全が長く続く例、死亡例も報告されています。
誤食してしまった場合は、動物病院に相談し、診察を受けるなど、早めの対処を心がけましょう。