犬の殺鼠剤中毒とは
殺鼠剤(さっそざい)とは、家や食物に被害をもたらすネズミを駆除する目的で使用される薬剤です。 国内では、血を固める機能を障害する殺鼠剤が広く使用されています。 今回は、この種類の殺鼠剤が引き起こす殺鼠剤中毒について説明します。
殺鼠剤の使用方法は、ネズミが発生している場所に置き餌として食べさせる方法が一般的です。 殺鼠剤の1~複数回の摂取で、ネズミの体に内出血が起こり死亡します。 殺鼠剤中毒は、置かれてある殺鼠剤を犬や猫が誤って食べてしまい、中毒を起こすことをいいます。 殺鼠剤は、血液が固まらないように障害を起こす薬剤で、クマリン系薬剤であるワルファリンが代表的です。
実際にはさまざまな薬剤があり、
- 第1世代クマリン系薬剤
- 第2世代クマリン系薬剤
- インダンジオン系薬剤
に分けられます。
第1世代クマリン系薬剤に耐性を持つネズミが現れ、開発されたのが第2世代クマリン系薬剤やインダンジオン系です。 これらの薬剤は同量で、ワルファリン(第1世代)のおよそ300倍の強さを持つとされています。 さらに、第1世代クマリン系薬剤は体から抜ける時間が比較的短いですが、第2世代クマリン系薬剤やインダンシオン系は期間が長いです。
第1世代のクマリン系薬剤は、連日複数回摂取させることでネズミを駆除します。 一方、第2世代クマリン系薬剤やインダンシオン系は、1回の摂取でネズミを駆除できるように作られています。
犬の殺鼠剤中毒の症状
殺鼠剤中毒の症状は、以下のようなものがあります。
殺鼠剤中毒の症状
- 元気がない
- 食欲がない
- 体を痛がって鳴く
- 内出血がある
- 嘔吐
- 吐血
- 粘膜が白っぽい
- 呼吸困難
- ぐったりしている
- 黒い泥状の便
- 血尿
- けいれん
など
肺や中枢神経系(頭蓋内出血など)などで出血する例もみられます。 重症では、ショックを起こすなど末期的な状態になり、治療を行っても命を落とすこともあります。
犬の殺鼠剤中毒の原因
血を固めるとき(血液凝固)の一連の流れに必要な物質(血液凝固因子)のうち、いくつかは肝臓で作られています。 これらの血液凝固因子が作られる過程でビタミンKが必要になります。 いずれの殺鼠剤も、血液凝固に関わるビタミンKの再利用のサイクルを妨げます。 そうなると、体外から新しい十分量のビタミンKが入ってこないと、産生過程でビタミンKが必要な血液凝固因子が減少または作られなくなります。 そのため、止血ができない、または自然出血が起こります。
殺鼠剤中毒の検査は、以下のようなものが挙げられます。
殺鼠剤中毒の検査
- 身体検査(出血の症状がないかなど)
- 血液検査
- 血液凝固検査
- X線検査
- 超音波検査
- 尿検査
など
止血凝固異常が起こる疾患は他にもあり、飼い主様が殺鼠剤の誤食に気付いていない場合は特に、必要な検査が全身的に行われます。
犬の殺鼠剤中毒の予防方法
殺鼠剤を犬が誤食しないようにすることが予防方法になります。 殺鼠剤を食べた場合は、すぐに動物病院に連絡し、連れて行きましょう。 このとき、できる限り誤食した量、時間を把握し、どの薬剤を食べたか製品名・メーカー名が分かるようにしておきます。 体重当たりの摂取した量や殺鼠剤の種類により、毒性の強さが異なるからです。
誤食した可能性がある場合も同様にし、動物病院を受診します。 また、元気がなかったり、どこかを痛がったりするなどおかしい様子があれば、診察を受けましょう。
犬が殺鼠剤中毒になってしまったら
殺鼠剤中毒の治療は、ビタミンKの投与が中心となります。
殺鼠剤中毒の治療
- 催吐処置/胃洗浄
- ビタミンKの投与(注射、点滴または内服)
- 輸血
など
合併症の治療や症状の緩和、体の状態の改善のために、それぞれ他にも必要な治療が行われます。 犬の状態や摂取した量によって、入院して治療します。 殺鼠剤を食べたことが分かっていない例も多いので、血液検査の結果などから殺鼠剤中毒を疑えば、治療を行います。
ビタミンKの投与量や投与期間は、摂取した殺鼠剤の種類により異なります。 また、ビタミンKの投与終了後、数日後に異常がないか診察を行います。 異常があれば投薬を再開するためです。 殺鼠剤は重症化せず、合併症もなく、早期治療ができると、治療によく反応するといわれています。
殺鼠剤の誤食は、摂取した薬剤の量や種類、経過によっては非常に危険な中毒を引き起こします。 殺鼠剤の誤食を疑う、または発見したとき、異常があるときは、動物病院に連れて行きましょう。