猫の脳炎・髄膜炎とは
猫の脳炎・髄膜炎とは、中枢神経系である脳や、脳や脊髄を包む髄膜に炎症が起こった状態です。脳炎・髄膜炎は非感染性と感染性に分けられ、その中でもさまざまな原因が存在します。
また、脳と同じ中枢神経系である脊髄に炎症が広がった状態を脊髄炎といいます。脳炎・髄膜炎と症状や原因が類似した特徴があります。
猫の脳炎・髄膜炎の症状
猫の脳炎・髄膜炎では神経症状とともに元気消失や食欲不振がみられます。
猫の脳炎・髄膜炎の症状は以下のようなものが挙げられます。
病気の程度やどの部位に障害があるかによっても異なる症状が現れます。
猫の脳炎・髄膜炎の症状
- 麻痺
- 反射低下
- 運動失調
-
斜頸(しゃけい)
※普通の状態で首が常に一方向に傾いている症状 -
眼振
※意思とは関係なく眼球が規則的に往復しながら動くこと - 行動の変化
- けいれん
- 元気消失
- 食欲不振
- 発熱
など
猫の脳炎・髄膜炎の原因
猫の脳炎・髄膜炎の原因は以下のようなものがあります。
猫の脳炎・髄膜炎の原因
非感染性
- 灰白(かいはく)脳脊髄炎
感染性
- ウイルス
- 細菌
- 真菌
- 寄生虫
など
●猫の灰白脳脊髄炎
感染が原因ではない脳炎には、猫の灰白脳脊髄炎があります。
これは主に若齢猫でまれにみられ(多くの猫が2歳齢以下)、後肢の麻痺、運動がうまくできない、震え、発作などの神経症状が徐々に悪化していきます。
猫の灰白脳脊髄炎の原因は分かっておらず、治療法はありません。症状が似た猫で回復した例が数例報告されていますが、基本的に経過は悪いです。
●ウイルス性
ウイルスの感染により神経異常をきたすものでは、猫伝染性腹膜炎(FIP)が最も主要な原因となります。猫伝染性腹膜炎(FIP)では、肉芽腫性猫伝染性腹膜炎(ドライタイプ)において脳など中枢神経系が侵されることがあります。中枢神経症状が出た猫伝染性腹膜炎の猫の経過は特に厳しいです。
他には、猫免疫不全ウイルス(FIV)感染でも神経症状が現れる猫免疫不全ウイルス脳症がまれに発症します。
●細菌性
細菌性脳炎はまれではありますが、内耳炎などの耳の炎症や骨髄炎、角膜穿孔(せんこう)や眼の中に膿がたまる眼の感染など、隣接する臓器での細菌感染が脳に広がることが原因となります。
また、血中に細菌感染が起きる敗血症など大きな細菌感染が脳へと及ぶこともあります。
●真菌性
クリプトコッカスやアスペルギルスといった真菌の一種が感染することもあります。
●寄生虫
寄生虫感染による脳炎は寄生虫が脳へ移動したことで起こります。
トキソプラズマやフィラリアといった寄生虫が脳へ移動することもありますが、日本ではあまりみられません。
猫では猫免疫不全ウイルス(FIV)感染症や猫白血病ウイルス(FeLV)感染症の発症などで免疫力が著しく低下している状態では、感染が起こりやすいので注意が必要です。
猫の脳炎・髄膜炎での検査は以下の通りです。
症状などによりどの検査が行われるかは変わることがあります。
猫の脳炎・髄膜炎の検査
- 神経学的検査
- 眼科検査
- 血液検査
-
脳脊髄液検査
※脳脊髄液を採取し、異常がないかを調べる - CT検査/ MRI検査
など
どの疾患でもみられるような症状が出ている場合は、他の疾患も広く考慮する必要があるので、さまざまな検査が行われます。
また、原因によりそれぞれ特殊な検査が必要になることもあります。
脳炎、髄膜炎の診断はMRI検査を行っても難しいことがあり、症状や経過、投薬への反応も含めて判断されます。
猫の脳炎・髄膜炎の予防方法
猫の脳炎・髄膜炎の確立された予防方法はありません。
免疫状態の低下を招く猫白血病ウイルスに対してはワクチンがあるので、猫やその同居猫が外に出る場合はワクチン接種を行う、または完全室内飼育にして感染を予防するのも方法のひとつです。
また、いつもと異なるおかしい様子が見られたらすぐに動物病院を受診するが大切です。
猫が脳炎・髄膜炎になってしまったら
非感染性の脳炎では主に免疫抑制剤が使用されます。
感染性の脳炎ではその原因により、治療ができる疾患であれば治療を行います。
猫伝染性腹膜炎(FIP)や猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)に関しては、症状を緩和し体の状態を整える補助的な治療が中心となります。
けいれんが出ている場合は、けいれんを抑える薬(抗てんかん薬)を投薬します。
さらに、脳浮腫(脳が腫れる)またはその可能性がある場合は利尿剤などを用い、脳圧の低下を図ります。
脳炎・髄膜炎は命も落としかねない病気です。異常が見られたらすぐに動物病院に連れて行きましょう。