猫の鼻腔内腫瘍とは
鼻腔内腫瘍とは、鼻の中の腫瘍で、良性と悪性があります。
悪性腫瘍は、いわゆるがんといわれるものです。
鼻腔内腫瘍のほとんどは悪性腫瘍といわれています。
猫の鼻腔内腫瘍では、リンパ腫と上皮細胞のがんが最も多くを占めます。
上皮細胞のがんでは、腺癌※(せんがん)が多く、扁平上皮癌(へんぺいじょうひがん)、未分化癌などがあります。
※腺癌とは、体液や消化液、ホルモンなどを分泌する腺細胞(せんさいぼう)ががん化したものです。腺細胞は、鼻腔内にも多く存在しています。
それ以外のがんの発生はさらにまれですが、線維肉腫や骨肉腫などが挙げられます。
また、猫のリンパ腫は、猫白血病ウイルス(FeLV)感染症と深く関わっていることが多いですが、鼻腔内のリンパ腫では、ほとんどの猫が猫白血病ウイルス(FeLV)は陰性であるという報告があります。
なお、猫の鼻腔内腫瘍は、犬の鼻腔内腫瘍に比べ、発生が少ないともいわれており、あまり一般的ではありません。
鼻腔内腫瘍は、高齢の猫でよくみられます。
猫の鼻腔内腫瘍の症状
鼻腔内腫瘍の症状は、以下のようなものがあります。
鼻腔内腫瘍の症状
- くしゃみ
- 鼻出血
-
顔面変形
- 鼻筋が盛り上がる
- 目の位置が外側になる
- よく眠る
- 元気がない
- 食欲がない
- やせてくる
など
上記の鼻腔内腫瘍の症状は、鼻炎でも起こる症状です。
腫瘍では、慢性的な症状を示し、治療でなかなか治らなかったり、鼻や呼吸、全身の症状が重症化したりする傾向にあります。
慢性鼻炎やクリプトコッカス症などの感染性鼻炎、異物などとの区別がつきにくいことがあります。
猫の鼻腔内腫瘍の原因
猫の鼻腔内腫瘍の原因は、よくわかっていません。
猫の鼻腔内腫瘍の検査は、以下のようなものが挙げられます。
鼻腔内腫瘍の検査
- 血液検査
- X線検査
- 細胞診
- 内視鏡検査
- 生検/病理組織検査※
- CT検査/MRI検査
など
※生検(通常麻酔下)で腫瘤の組織を採取し、病理組織検査では標本を作り顕微鏡で調べる。
内視鏡検査やCT検査、MRI検査は、特殊な設備が必要となるため、行える動物病院は限られます。
猫の鼻腔内腫瘍の予防方法
鼻腔内腫瘍を予防する明確な方法はありません。
鼻出血や、治らない鼻の症状などがあれば、動物病院を受診しましょう。
猫が鼻腔内腫瘍になってしまったら
鼻腔内腫瘍の種類や状態によって、治療が異なります。
猫の鼻腔内腫瘍でよくみられるリンパ腫では、化学療法(抗がん剤)が使用されます。
合わせて放射線療法を行うこともあります。
他の鼻腔内腫瘍では、
- 放射線療法
- 外科的切除
- 化学療法
- 非ステロイド性消炎剤(NSAIDs)
などが選択されます。
猫の鼻腔内腫瘍では、リンパ腫以外では放射線療法がすすめられることが多いですが、症例数も少なく、治療がはっきりと確立されていないことが現状です。
手術での腫瘍の切除では、腫瘍を完全に除去するのは難しいですが、腫瘍のサイズを小さくすることで、呼吸を楽にしたり、症状をやわらげたりします。
なお、鼻腔内腫瘍は、転移率は低いと報告されています。
鼻腔内腫瘍は、慢性鼻炎や鼻腔内異物などと区別が難しく、しっかりと鼻腔内を検査しようとすると麻酔が必要になるなど、診断において苦慮されることもよくあります。
抗生剤の服用で一時的に症状が改善することもあり、診断までに長引くこともある疾患のひとつといえるかもしれません。
症状があれば動物病院を受診し、治療を行ってもなかなか治らなかったり、繰り返したりするようなら、再度動物病院で診察を受け、必要な検査があれば、行うことが大切です。