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犬アデノウイルス感染症には、
・犬アデノウイルス1型による犬伝染性肝炎
・犬アデノウイルス2型による犬伝染性喉頭(こうとう)気管炎
の2種類があります。
犬アデノウイルス1型、2型どちらも主に犬や犬科の動物に感染します。
●犬アデノウイルス1型
犬アデノウイルス1型による犬伝染性肝炎は名前の通り肝炎を主とした症状を示し、突然死することもある感染症です。1歳未満の仔犬に感染すると致死率は高くなります。
●犬アデノウイルス2型
犬アデノウイルス2型による犬伝染性喉頭気管炎は多くの病原体が原因となるケンネルコフの原因の一つで、肝炎は引き起こさず、このウイルス単独の感染では症状は重篤化しません。
感染経路は主に口や鼻からの侵入で犬が密に飼育されているペットショップやペットホテルなどで短期間に蔓延します。他の細菌やウイルスなどの感染が起こると重症化し、肺炎になることもあります。
治療は症状に対する治療が主で、さらに二次感染を起こさないように抗生剤の投与なども行われます。感染犬は隔離し、居住環境をよく消毒します。
ここでは主に、犬の感染症として重要である犬伝染性肝炎(犬アデノウイルス1型感染)について説明していきます。
犬アデノウイルス2型感染による犬伝染性喉頭気管炎は咳などが出る上部気道感染症で、このウイルス単独の感染では重篤化することはありません。
一方、犬アデノウイルス1型感染による犬伝染性肝炎は肝炎以外にもさまざまな症状が現れます。
・元気がなくなる
・食欲低下
・発熱
・腹痛
・ぐったりする
・嘔吐
・下痢
など
他にも、肝炎により血の混ざった腹水が溜まったり、臓器などで出血が起こったりします。重症化すると血管内で血栓ができやすくなり全身の微小な血管に血栓が詰まるようなDIC( 播種性血管内凝固症候群:はしゅせいけっかんないぎょうこしょうこうぐん)という末期的な状態に陥ることもあります。
犬伝染性肝炎では、感染しても発病しないこともあれば、軽症から重症と症状の程度はさまざまで、突然死することもあります。
また回復期には、腎炎やブルーアイが起こることがあります。ブルーアイとは、犬伝染性肝炎の回復期などに角膜浮腫により目が青白く見える状態のことで、同時にブドウ膜炎が起こることも多いです。ワクチン接種後にブルーアイになることもあります。
犬伝染性肝炎を引き起こす病原体である犬アデノウイルス1型は、ワクチン未接種の犬の口や鼻から侵入し、免疫にかかわる場所であるリンパ組織から血流に入ります。その後血管の細胞で増殖し、血流から肝臓、腎臓、眼、リンパ節(免疫に関係する細胞が集まる場所)、骨髄など全身の臓器で増殖し、発病します。潜伏期は2~9日間といわれています。
しかし、犬アデノウイルスに感染したすべての犬が発症するわけではありません。
以下は犬アデノウイルス1型感染による犬伝染性肝炎での検査方法です。
・血液検査
・X線検査
・超音波検査
・血液凝固検査
※血液を固める働きに異常がないかを調べる
・腹水検査(腹水があれば)
・PCR検査
※ウイルスの特徴的な遺伝子のかけらを検出する
など
犬伝染性肝炎(犬アデノウイルス1型感染)は、突然起こった激しい肝炎(急性の肝炎)とワクチン接種歴がない犬で疑いが強まり、感染を確定するPCR検査などの特殊検査へ進んでいきます。
必要であれば他にも検査が行われます。
犬アデノウイルス感染症にはワクチンがあり、ワクチン接種をしっかり行うことで犬伝染性肝炎(犬アデノウイルス1型感染)と犬伝染性喉頭気管炎(犬アデノウイルス2型感染)のどちらも予防することができます。
ワクチン接種の普及により犬伝染性肝炎の発症は日本ではほとんどみられなくなっています。
また、犬アデノウイルス感染症かかってしまった犬に同居犬(特にワクチン未接種の犬)が居る場合は、感染犬を隔離し環境や器具を塩素系消毒薬でしっかりと消毒することが必要になります。
犬アデノウイルス感染症の治療にこれといった有効なものはなく、主に現れている症状に対して治療を行うことになります。
犬アデノウイルス1型感染による犬伝染性肝炎では、
・輸液療法
・輸血(出血やDIC※1などに対して)
・肝性脳症※2への治療
などがあります。
※1:血栓ができやすくなり全身の微小な血管で血栓が詰まる体の末期的な状態
※2:肝不全の末期的な状態
特に子犬で発病率・致死率が高いので注意が必要です。ワクチン接種をしっかりと行うことが犬アデノウイルス感染症から犬を守ることに繋がります。