落葉状天疱瘡
落葉状天疱瘡
犬の落葉状天疱瘡とは
落葉状天疱瘡(らくようじょうてんぽうそう)とは、自己免疫の異常による皮膚疾患である天疱瘡(てんぽうそう)のひとつです。
自己免疫の異常による皮膚疾患の中では、天疱瘡はその多くを占め、落葉状天疱瘡は天疱瘡の中でも最もよく見られます。
ただ、皮膚病全体から見れば、比較的まれな疾患です。
落葉状天疱瘡の症状は皮膚に限られます。
中年齢の犬に多く、犬よりもまれではありますが、猫も落葉状天疱瘡になります。
犬の落葉状天疱瘡の症状
落葉状天疱瘡は、顔面、主に鼻筋、まぶた、耳たぶなどに膿を含んだ湿疹(膿疱:のうほう)や赤み、かさぶたを形成します。
他には足裏の角質が増殖し、肉球が分厚くガサガサになることもあります。
顔面だけではなく、全身の皮膚へと症状が広がったときは、腹部や体にも膿疱やかさぶたなどが現れます。
落葉状天疱瘡で、かゆみがある犬は少ないですが、中には全身的なかゆみが現れる犬もいます。
膿疱は、基本的には細菌感染によるものではないので、膿疱内に細菌はみられませんが、膿皮症を併発することもあります。
また、膿疱は簡単にやぶれ、ただれたり、かさぶたになったりします。
犬の落葉状天疱瘡の原因
落葉状天疱瘡の原因は、表皮の角質細胞同士をつなぐデスモコリン1というたんぱく質を主に攻撃する自己抗体が作られることです。
つまり、自分の体を構成する物質を、攻撃対象(抗原)とみなし、攻撃する抗体(免疫物質)が自分の体内で作られるような、免疫の異常が起こっている状態です。
また、落葉状天疱瘡を悪化させるひとつの要因として、紫外線が考えられています。
落葉状天疱瘡の検査は、以下のようなものがあります。
<落葉状天疱瘡の検査>
・皮膚検査
・膿疱内の膿を鏡検(顕微鏡で観察)
・皮膚のパンチ生検※
・血液検査
など
※皮膚のパンチ生検では、病変と正常部位などを含んだ皮膚の一部を切り取り、病理組織検査で組織を顕微鏡で調べる。複数カ所行うこともある。
膿疱(膿を含む湿疹)内の膿を顕微鏡で調べると、一般的に細菌がみられず、棘細胞(きょくさいぼう)という皮膚の細胞のひとつが剥がれ落ちている像がみられるのが特徴的です。
皮膚片を採取して、特殊染色を施し診断する方法もありますが、一般的には皮膚検査や症状、年齢、病理組織検査の結果など合わせて判断されることが多いです。
必要であれば、他の検査も行われます。
犬の落葉状天疱瘡の予防方法
落葉状天疱瘡のはっきりとした予防方法はありません。
ただ、落葉状天疱瘡では、紫外線に当たることが症状を悪化させる恐れがあります。
落葉状天疱瘡と疑われた、または診断された場合、紫外線を避けるように指導されるかもしれません。
皮膚の症状など、おかしい様子があれば、動物病院に連れて行きましょう。
犬が落葉状天疱瘡になってしまったら
落葉状天疱瘡の治療では、ステロイド剤などの免疫抑制剤が使用されます。
また、紫外線からの保護も補助的に行います。
内服だけでなく、外用薬の塗布や薬浴なども必要であれば実施します。
薬浴では、かさぶたを取り除き、皮膚の状態を整えます。
落葉状天疱瘡では、症状を和らげることを目的に、生涯治療を継続していきます。
ステロイド剤の長期服用は、副作用を引き起こしやすくなるので、他の免疫抑制剤と合わせて投与されることもあります。
落葉状天疱瘡自体は、致死性ではないといわれています。
治療中は、定期的に診察をし、治療の反応や状態の把握などを行い、調整します。
皮膚症状が現われたり、なかなか治らなかったりする場合は、早めに動物病院を受診しましょう。