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播種性(はしゅせい)血管内凝固症候群は、英語名のDisseminated Intravascular Coagulationの頭文字をとって、DIC(ディーアイシー)ともいわれます。
DICは、血管内で血液凝固に異常が起こり、血栓ができやすくなっている異常な状態です。
DICでは、まず血液が固まる働きが強くなり、血管内で小さな血栓ができやすい状態になります。
これがDICのおおもとにある状態といえます。
そのうち、血栓が作られることにより、血液を固める物質が少なくなったり、血栓を溶かす働きが強くなったりして、逆に血が止まりにくくなり、出血傾向に陥ります。
血栓ができやすい状態が強いか、出血傾向が高いかのバランスは、それぞれの犬の状況により異なります。
犬では、血栓ができやすい状態が強いDICが多いといわれています。
全身の血管内で血栓ができると、あらゆる場所で細い血管に血栓が詰まります。
血流が流れなくなった部位や臓器では、機能障害や壊死が起こり、多臓器不全などが引き起こされます。
DICになるには、背景となる疾患(基礎疾患)があり、その状態が悪化することで、DICの状態に陥ります。
DICになってからの救命率は低く、突然死が起こってもおかしくない末期的な状態といえます。
DICの症状は、血栓で閉塞が起こった部位や、DICの状態により症状が異なります。
具体的には、血栓が詰まった部位により、 腎不全や肝不全 足の壊死 肺血栓塞栓症(重篤な呼吸不全) 脳梗塞 などが起こり、急激な状態の変化や死に直結します。
症状としては、 ぐったりしている 呼吸困難 足の壊死 神経症状や意識障害 などが挙げられます。
出血傾向が高い場合は、皮膚に点状、または斑状の内出血ができるなどの症状が現れます。
原因となる疾患(基礎疾患)が引き起こす症状もあります。
DICは、何らかの疾患や、外傷、手術などにより、血液が凝固する働きが過剰に活性化されることで起こります。
犬のDICが起こるときによくみられる疾患は、以下のようなものが挙げられます。
感染症 敗血症※など 子宮蓄膿症 胃拡張・胃捻転 悪性腫瘍 血管肉腫(DICの発生が多い) リンパ腫 その他、固形がんなど 急性膵炎 免疫介在性疾患 免疫介在性溶血性貧血(IMHA) 免疫介在性血小板減少症(ITP) など 熱中症 ヘビの咬傷 肝障害 外傷 手術 輸血の不適合 など
※敗血症とは、血液中で細菌が増殖し、多臓器不全を起こしている状態
DICの検査は、以下のようなものがあります。
DICでは、基礎疾患の存在が必ずあるので、しっかりと全身的な検査を行い、犬の状態を把握します。
触診 聴診 身体検査 血液検査 一般検査 凝固系検査 など X線検査 超音波検査 腹水、胸水検査 CT検査/MRI検査 など
上記以外にも必要な検査があれば行われます。
DICになってしまってからだと、懸命な治療を行っても命を落とすことも多く、DICになりかけている状態で対処することがより望ましいとされています。
ただ、DICは各種検査から総合的に判断され、その判断が難しい場合もあります。
DICの予防方法は特にありません。
犬の様子がおかしいときは、早めに動物病院に連れて行きましょう。
DICの治療は、DICの原因となっている疾患の治療や全身状態の改善を行うことが大前提となります。
その上で、DICに対する治療は、以下のようなものがあります。
ヘパリン(低分子ヘパリン) 輸血 全血輸血 血漿(けっしょう)輸血 抗凝固薬の内服 たんぱく分解酵素阻害剤 など
ヘパリン(低分子ヘパリン)は、血液の凝固の働きを抑えます。
製剤により皮下注射や、点滴に混ぜて投与します。
輸血は、血小板や、血液凝固因子などの補充を目的に行われます。
基礎疾患によって、緊急的な手術や負担のかかる治療が必要な場合には、状態を安定させ、DICに対する対処や治療をした上で行います。
DICと一口に言っても、それぞれの犬の体の中で起きている異常や状態により、DICの治療法は異なることがあります。
DICは、緊急的かつ集中的な治療や、こまめな検査が必要になります。
犬に異常があるときは、早めに動物病院に連れて行きましょう。