犬のバベシア症とは
バベシア症とは、バベシアという赤血球に寄生する寄生虫により、赤血球が壊され、貧血が起こる病気です。
赤血球が壊されて起こる貧血を、溶血性貧血(ようけつせいひんけつ)といい、バベシア症以外に、免疫介在性溶血性貧血があります。
バベシアはマダニが媒介します。
中には、バベシアに感染していても、症状を示さない犬もおり、これを不顕性感染(ふけんせいかんせん)といいます。
さらに、バベシアに一度感染すると、体内から完全に排除することは難しく、免疫が低くなったときや脾臓摘出などのタイミングで、症状が再度現れる可能性があります。
これについては、感染していても症状が現れていない犬も同様です。
なお、バベシア症は人にうつることはありません。
犬のバベシア症の症状
バベシア症の症状は、以下のようなものが挙げられます。
バベシア症の症状
- 疲れやすくなる
- あまり動きたがらない
- 食欲がない
- 元気がない
- 体重が減る
- 発熱
- 尿が濃い色になる
- 歯茎や舌が白っぽい、または黄色がかっている
など
他にも、さまざまな症状がみられることがあり、バベシア症が急激に進行した場合は、腎障害が合併することもあります。
また、重症化すると、DIC(播種性血管内凝固症候群:はしゅせいけっかんないぎょうこしょうこうぐん)といって、全身に血栓が作られる、体の末期的な状態に陥る合併症もみられます。
犬のバベシア症の原因
バベシア症は、赤血球内に寄生するバベシアという寄生虫により、引き起こされます。
また、バベシア症はマダニが媒介する病気のひとつです。
赤血球に寄生したバベシアは、赤血球内で増殖します。
バベシア症の検査は、以下のようなものが挙げられます。
バベシア症の検査
- 身体検査
- 血液検査
- 尿検査
- PCR検査(外部機関へ依頼)
- X線検査
- 超音波検査
など
バベシア症を疑ったとき、赤血球を顕微鏡で観察すると、バベシアの寄生が確認できることがあります。
ただ、寄生数が少ない場合など、状況やタイミングによっては、顕微鏡での観察だけでは寄生が分からないこともよくあり、必要であれば日を改めて複数回検査します。
バベシア症の感染を検出する他の検査では、血中のバベシアの遺伝子を検出するPCR検査もあります。
バベシア症の犬では、免疫介在性溶血性貧血で行われる直接クームス試験が陽性になる犬も多く、診断には注意が必要といわれています。
犬のバベシア症の予防方法
マダニから犬にバベシアが感染する際に、2~3日間マダニが吸血する必要があるといわれています。
そのため、マダニの予防を定期的に行うことで、バベシア症を予防することができます。
また、輸血や妊娠時に胎仔への感染などの例もあります。
そのため、感染犬は血液を輸血に使用できず、繁殖を行うことも避けられます。
マダニは皮膚炎を引き起こしたり、まれに人にも感染する病気を媒介したりすることもあります。
マダニ予防に使われる薬剤は、滴下タイプやおやつのようにあげられるタイプなど、さまざまなものが用意されています。
獣医師に相談すると、使い方やメリットなどについて説明してくれるので、それぞれの犬に合った薬で、マダニ予防を続けて行きましょう。
犬がバベシア症になってしまったら
バベシア症の治療で使用される薬剤は、以下のようなものがあります。
バベシア症の治療で使用される主な薬剤
- ジミナゼン
- アトバコン(±アジスロマイシン)
- クリンダマイシン
- クリンダマイシン/ドキシサイクリン/メトロニダゾール(同時に使用)
など
ジミナゼンとは、バベシアの増殖を抑える作用を持ちます。
犬では、注射部位の痛み、腎障害、肝障害などの副作用が現われる可能性があります。
アトバコンは、海外で人のマラリア症などの治療薬として販売されていますが、国内で使用するには、個人輸入が必要になります。
さらに、アトバコンでは、バベシアへの早期の耐性ができることがみとめられています。
クリンダマイシン、ドキシサイクリン、メトロニダゾールはいずれも抗生剤で、バベシア症の検査結果を待つ間や慢性期など、補助的に使用されます。
どの薬剤、治療法も耐性ができる可能性が報告されています。
また、いずれの治療法においても、体から完全にバベシアを除去できません。
バベシア症によって、急激に赤血球が破壊されている犬では、治療が効果を現すまでの間、輸血が必要になることもあります。
合併症がある場合は、並行してその治療も行われます。
犬の状態や各薬剤の副作用、飼い主様の希望など合わせて、獣医師とよく相談し、治療方針が決定されます。
バベシア症になった犬は、一度おさまっても、バベシア症が何らかのタイミングで再度発症する可能性があります。
- 大きな病気の治療(外科手術を含む)やストレス
- 免疫を抑制する薬の投与(高用量の免疫抑制剤や抗がん剤など)
- 脾臓摘出
などで、再発の危険性が高まります。
バベシア症にかかったことのある犬では、調子が悪くなったときに獣医師にその旨を伝えることも必要です。
また、そのようなタイミング以外の再発では、健康診断など定期的な検査を行うことで、再発の早期発見をできることがあるかもしれません。
ただ、バベシア症への一番の防御策は、定期的にしっかりとマダニ予防を継続し、バベシア症にかからないようにすることです。
マダニ予防をしっかり行い、おかしい様子があれば、早めに動物病院で診察を受けましょう。