低血糖症

犬の低血糖とは

低血糖とは、血液中のブドウ糖(グルコース)が基準値を下回っている状態を指します。
低血糖は、命に関わる危険な状態で、命を落とすこともあります。


グルコースは、脳などの中枢神経系の働きに欠かせないエネルギー源で、体のさまざまな細胞を働かせるエネルギー源として重要な役割を担っています。
肝臓では、血中のグルコースなど、食物から摂取された糖類などの栄養素からグリコーゲンへと合成され、貯蔵されます。
また、必要なときにグリコーゲンからグルコースへと分解され、利用されます。
さらに、肝臓ではアミノ酸などからもグルコースを合成することができ、肝臓は糖の貯蔵、分解、合成により、グルコースの供給や血糖値の安定に大きな役割をしています。

犬の低血糖の症状

低血糖の症状は、以下のようなものがあります。
低血糖により症状が現れるのは、かなり血糖値が低くなってからの場合も多く、見つけにくいこともあります。


低血糖の症状
  • 元気がなくなる
  • ぐったりしている
  • けいれん
  • 舌や肉球が白っぽい
  • 意識障害(呼びかけなどに反応しない)
  • 体が冷たい

など


グルコースは中枢神経系で使われる主なエネルギーなので、低血糖症になると、神経機能が低下し、神経症状なども現れます。
うまく動けない(運動失調)、立ち上がれない、けいれん発作や意識障害などです。
けいれんは、足がぴくっぴくっと規律的に動く程度の一部の筋肉のけいれんから、前足を伸ばすように、はっきりとわかるけいれんまでみられます。


低血糖は原因となる疾患などにより、急激に低血糖が進み、症状が激しい場合もあれば、慢性的で症状がゆるやかに進行する例もあります。

犬の低血糖の原因

低血糖の原因は、以下のようなものが挙げられます。

低血糖の原因
  • 子犬の低血糖
    • 消化器疾患(胃腸炎、寄生虫、感染症、吸収不全など)
    • ストレス
    • 先天性疾患など
  • 肝疾患
    • 肝硬変
    • 門脈体循環シャント
    • 急性肝不全
  • 腫瘍
  • 医原性
    • インスリン
  • 中毒
  • その他
    • 敗血症など

※敗血症とは、血液中で細菌が増殖し、多臓器不全を起こしている状態のこと。


成犬では、重要なエネルギー源であるグルコースを体内に貯蔵し、必要なときに供給して、血糖値を安定化させています。
子犬は、臓器の発育が十分ではなく、体内のグルコース貯蔵能が低く、安定しません。


そのため、子犬のグルコースの供給は、そのときどきの食事による部分が成犬より大きく、

  • 食欲不振
  • 下痢
  • 嘔吐
  • 吸収不良

などの消化器症状(疾患)などで、容易に低血糖になりやすいです。


低血糖の検査は、以下のようなものが挙げられます。
症状、経過、年齢、検査結果などにより、行う検査は異なることがあります。


低血糖の検査
  • 血液検査
    • 血糖値
    • 一般検査
    • 特殊検査
      (血中インスリン濃度、ACTH刺激試験など)
  • 糞便検査
  • 尿検査
  • 超音波検査
  • X線検査
  • CT検査/MRI検査

など


必要であれば、上記以外の検査も行われます。

犬の低血糖の予防方法

子犬は、口から食事を摂取できなかったり、消化管からの吸収が低下したりした場合は低血糖になりやすいです。
中でも小型犬の子犬は、特に注意する必要があります。
しっかりとご飯を食べているか、下痢や嘔吐などをしていないかなど、注意して観察しましょう。


子犬の間は、先天的な(生まれつきの)要因や消化管疾患などがなければ、ご飯の回数を多くすることで、低血糖の予防がある程度できます。


子犬が、

  • あまりご飯を食べない
  • 下痢、嘔吐が続いている
  • 運動後や留守番後にぐったりしている
  • 元気がない
  • 呼びかけに対する反応が鈍い

などおかしい様子が見られたら、できるだけ早く、動物病院に連れて行きましょう。


糖尿病の犬では、それぞれの体の状態などにより、インスリンが効きすぎた場合などに、低血糖に陥ることがあります。
不安であれば、動物病院に電話などで相談し、できる処置を仰ぎ、動物病院に連れて行きましょう。


低血糖の場合の応急処置として、ガムシロップ(または砂糖を溶かした液)を舌に垂らしたり、粘膜や歯茎に指ですり込んだりする方法があります。
この場合、喉の奥に糖液を入れて飲ませる必要はありません。 誤って気管に入ってしまうと誤嚥性肺炎を起こすなど危険なので、口の横から少量ずつ垂らす、または粘膜につけるようにしましょう。


ただ、この処置はあくまで応急処置であり、効果がどれほどかわからず、たとえ血糖値が一時的に上昇しても時間が経過すればまた低下します。
低血糖症は命を落とす可能性があります。
病院で低血糖の原因となっている疾患がないか、その後も安定して血糖値を維持できるか、糖尿病など治療中の場合は、治療が適切かなどを確認する必要があります。


応急処置はあくまで、病院に連れて行くまでに時間をつなぐための処置なので、処置を行った後で状態がよくなっても、必ず動物病院に連れて行きましょう。

犬が低血糖になってしまったら

点滴や薬剤を投与するために静脈内に管を入れ、静脈を確保した際に、血液を採取し血液検査を行うことが多いです。


緊急的な場合は、血管内に直接希釈したブドウ糖液を注射します。
そして、ブドウ糖を含んだ点滴を流します。
疾患によっては、ステロイド剤など他の薬剤を使用することもあります。
こまめに血糖値を測定し、処置に対して血糖値が上昇するか、維持されるかなどの状態を確認します。
低血糖の原因となっている疾患(基礎疾患)があれば、その治療も行います。


基礎疾患やその状態、程度により、治療は異なります。


低血糖に陥る危険性のある犬(インスリンで治療中の犬など)や子犬は特に、元気や食欲、犬の様子をよく観察し、おかしい様子があれば、動物病院を受診しましょう。

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