犬の鉛中毒とは
鉛(なまり)中毒とは、鉛を摂取したことが原因で起こる重金属中毒です。
鉛は、口から摂取すると、胃酸と反応して毒性が現れます。
最悪の場合、死に至ることもあります。
なお、人や猫も鉛中毒になります。
犬の鉛中毒の症状
鉛中毒は、胃腸症状と神経症状に現れます。
重度の鉛中毒では、けいれんや意識消失を経て、死亡します。
鉛中毒の症状は以下のようなものがあります。
鉛中毒の症状
- 食欲不振
- 嘔吐
- 腹痛
- けいれん発作
- うまく歩けない、動けない
- 攻撃性や性格の変化
など
犬の鉛中毒の原因
鉛中毒の原因となるのは、
- 鉛を含んだ塗料(ペンキや絵具など)
- 釣りのおもり
- ハンダ
- バッテリー
- 鉛管
- 鉛板
- 散弾銃の弾
- カーテンウェイト※
など、鉛を含んだものです。
※カーテンウェイトとは、カーテンの裾につけられるおもり
固形の鉛を食べたりなめたりするだけでなく、液状のものをなめる、粉塵や蒸気、噴霧状になった鉛含有物を吸入することなどで、鉛中毒になる可能性があります。
鉛中毒の検査として、以下のようなものが挙げられます。
鉛中毒の検査
- 触診
- 神経学的検査
- 血液検査
- X線検査
- 超音波検査
- 血中鉛濃度測定
- 尿検査
など
鉛中毒では、貧血や顕微鏡下で赤血球に特徴的な像がみられることがあります。
消化器症状や神経症状、食欲不振などは、さまざまな疾患の可能性が考えられます。
若齢犬での鉛中毒の症状は、ジステンパーウイルス感染症と類似しますし、神経症状と検査結果からてんかんと思われたが結局鉛中毒だったという事例もあります。
そのため、全身的な検査が必要であり、上記の他にも、必要な検査が行われます。
犬の鉛中毒の予防方法
鉛は、顔料や錆止めの役割などで、塗料に使用されてきました。
ただし、鉛を含んだ塗料は、人にも健康被害を与える可能性があることから、塗料業界では鉛含有塗料をなくしていく動きになっています。
現在、身近に手に入る塗料は、鉛の入っていないものがほとんどですが、昔使用された塗料には含まれていることも多いです。
また、公共のものにも鉛を含んだ塗料が使用されていることがあります。
剥がれた塗料のかけらなどを、なめたり口にしたりすることのないよう、気を付けましょう。
また、被毛についた塗料をなめて鉛中毒になった例も報告されています。
塗料や化学物質を吸入、接触するかもしれない場面や空間には、動物を入らせないようにするなどの工夫が必要になります。
さらに、釣りのおもりや鉛製のカーテンウェイトなど、犬が誤って口にする可能性のあるものは、鉛が含まれていないかを意識し、確認しておきましょう。
もし使用する場合は、犬の手の届かない場所に保管するなど、犬が口にできないように厳重に管理しましょう。
他にも、異常な症状がみられたら、動物病院に連れて行き、鉛を含んだものを口にした可能性があるときは、必ず獣医師か病院のスタッフに、そのことを伝えましょう。
犬が鉛中毒になってしまったら
固形の鉛が消化管にある場合は、内視鏡や催吐剤などで原因となる鉛を取り出します。
鉛中毒の症状が出ていたり、体内の鉛濃度が高かったりする場合は、Ca-EDTAやD-ペニシラミンといったキレート剤が使用されます。
キレート剤は、重金属(鉛)と結合して、体内から鉛を取り除くように働きます。
他にも、体の状態を整えるため、ビタミン剤の投与や輸液療法などを行う場合もあります。
重度の鉛中毒では、治療を行っても死亡する場合もあるので、早期発見・早期治療が大切です。
飼い主様が意識することで避けられる可能性が高いので、鉛中毒が起きないよう心がけましょう。
身の回りに中毒を起こすようなものがないかを日ごろから意識し、食欲不振や神経症状など、異常な様子が見られたら、動物病院に連れて行きましょう。