尿管結石
尿管結石
猫の尿管結石とは
尿管とは腎臓で作られた尿を膀胱へと運ぶ管状の通り道で、尿管結石とはその尿管に結石がある状態のことです。
尿管結石は不完全あるいは完全に尿管を閉塞させます。
尿管の閉塞により腎臓で作られた尿が結石によりせき止められ、腎臓や(閉塞部までの)尿管に尿が貯まり拡張します。腎臓、尿管のそのような状態をそれぞれ、水腎症(すいじんしょう)、水尿管(すいにょうかん)といいます。
このように、尿管結石は腎臓の尿排泄を妨げるので、急性腎不全や慢性腎不全につながっていきます。
猫の尿管結石の症状
尿管結石の症状でよくみられるのは食欲不振と元気消失です。他には血尿や頻尿など排尿の異常がみられたり、膀胱結石や結石が尿道に詰まる尿道閉塞を同時に併発したりすることがあります。
<尿管結石の症状>
・食欲不振
・元気消失
・血尿
・頻尿
・嘔吐
・腹痛
・尿が出ない
など
ただ、片側だけで尿管結石が起こっている場合は、もう一方の腎臓の働きがそれを補います。よって尿管結石がない方の腎臓で、機能が低下したり尿管結石などの障害が起こったりしない限りは分かりやすい症状が現れないことが多いです。
両側の完全な尿管閉塞が起こっている場合は2~3日で死に至りますが、多くの尿管結石は片側のみで起こります。
また、尿管結石により腎不全が進行すると、尿管結石を取り除いても生涯腎不全が残る場合があります。
猫の尿管結石の原因
尿管結石のある猫では腎結石もよくみられ、腎結石が尿管へと流れて尿管結石となることもありますが、腎結石や尿管結石ができる直接のメカニズムは分かっていません。
猫の尿管結石は主にシュウ酸カルシウムという成分でできていることが多いといわれています。シュウ酸カルシウムはストルバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)と並び、結晶尿や結石でみられる主な二つの成分のうちのひとつです。(※これらの成分の詳細は「猫の結晶尿」の記事を参照してください)
尿管結石で行われる検査は以下のようなものが挙げられます。
<尿管結石の検査>
・尿検査
・血液検査
・X線検査
・超音波検査
・静脈性尿路造影※
・CT検査
・尿の細菌培養・感受性検査
※増殖している細菌とそれに有効な抗生剤を特定する検査
など
静脈性尿路造影(※)とは、静脈から造影剤を注入し一定時間ごとにX線検査を行うことで、腎盂(じんう)、尿管、膀胱の形態や腎臓の排泄機能などを調べる検査です。
尿管結石は超音波検査やX線検査など複数の画像検査により判断されます。
ただし、画像検査で異常所見がみられない、または異常が軽度で発見が難しいこともあります。
猫の尿管結石の予防方法
尿管結石のはっきりとした予防方法はありません。
尿管結石は早期発見することが第一です。排尿や元気食欲に異常がみられたら病院を受診しましょう。
猫が尿管結石になってしまったら
人では尿管結石が見つかった場合、小さければ膀胱へと通過することもあります。
猫でも条件がそろえば内科的治療が試みられることがありますが、猫は尿管がかなり細い上に、尿管結石があるとすでに尿管が狭まっていることも多いので、内科的治療で尿管から結石が流れ出る確率は低いです。
尿管結石が通過しなかったり内科的治療中に状態が悪化したりするのであれば外科的治療が必要になります。
<尿管結石の内科的治療>
・輸液療法と並行して
-利尿剤
-αアドレナリン遮断薬
輸液療法と利尿剤により尿量を増量させ結石を押し流し、αアドレナリン遮断薬で尿管の抵抗を弱め結石を膀胱へと通過しやすくします。しかし、犬や猫ではまだ十分に有効性が証明されておらず、前述の通り猫では尿管結石が通過することはあまりありません。
また、内科的治療を試みるにあたって、全身や内臓、血液の状態が良好でないとすすめられていません。そして、内科治療中は、水腎症や水尿管、腎障害の悪化、感染症などの状態にならないかを治療と並行して定期的な検査が必要となります。
これらの条件がそろっても1~2週間で尿管結石が通過しなければ外科的治療が選択されます。
体の状態が悪い場合は、可能であれば早期に外科的治療を行います。外科的治療の中でどのような方法が選択されるかまたは組み合わされるかは結石の部位や腎結石の有無など状況によります。
尿管結石の外科的治療は以下のようなものがあります。
<尿管結石の外科的治療>
・尿道切開術
・尿管の移設
・尿管ステント
・尿管バイパス術
など
外科的治療では主に尿道切開術(結石摘出)や尿管を膀胱へつなげ直す尿管移設が実施されます。
さらに、腎結石や複数の尿管結石でなどで再発が予想されたりする場合は、ステントという管を尿管内に入れる尿管ステント術や、腎臓から膀胱に尿管の代わりとなる装置をつなげる尿管バイパス術などが適応であれば治療方法として選択されます。
これらの手術を行っても、尿管結石の再発や術後の治癒反応や炎症による尿管の狭窄や閉塞により再手術が必要になることもあります。
また、尿管ステントや尿管バイパス術はどの動物病院でも行っている手術ではなく、治療法の選択や手術方法が難しい場合は、尿管結石の外科的治療の経験数が多い病院や大学病院などの二次診療施設に紹介されます。
外科的治療を行うにあたり、先に状態を安定させる必要があれば、血液中の有害物質を取り除く透析や重度の貧血を改善するための輸血など必要な治療が行われます。※透析(ときには輸血も)は実施できる病院が限られる治療法です。
尿管結石は場合により発見されにくい病気ではありますが、異常があれば早めに動物病院を受診しましょう。