排尿障害
排尿障害
猫の排尿障害とは
排尿障害には、排尿ができず尿が全く出ないあるいはぽたぽた垂れる状態と、自分の意志と関係なく排尿が起こる尿失禁があります。
正常な排尿は以下のような仕組みで起こります。
① 膀胱の拡張を刺激として受け取る受容体が膀胱内にあり、一定以上に膀胱が拡張すると神経や脊髄を介して大脳などに信号が送られる
② 大脳、小脳などから脊髄を通って排尿に関係する神経に指令が送られる
③ 副交感神経が働き、膀胱の排尿筋が収縮する
④ 同時に尿道括約筋(尿道を締める筋肉)を緊張させている交感神経の働きが弱まり尿道括約筋が緩むことで、排尿が起こる
膀胱はほとんどの時間は尿を貯留するようになっており、交感神経が働き膀胱を緩め同時に尿道括約筋を締めることで尿を貯留します。そして、排尿が終わるとまた尿を貯留する状態に戻ります。
猫の排尿障害の症状
排尿障害とは、尿失禁のように意図とは関係なく尿が漏れることもあれば、排尿自体が困難であることも含み、それぞれの排尿障害の起こった原因やメカニズムにより症状が異なります。
<排尿障害のさまざまな症状>
・寝ているところやいつもいるところが濡れている
・トイレ以外のところで排尿する
・排尿姿勢をよくする
・いきむが尿が出ない、またはぽたぽた垂れる程度
・頻尿
・血尿
・排尿が途中で止まり、排尿をやめた後ぽたぽた垂れる
・尿が濁る、尿が臭う(細菌尿)
・常に外陰部の周りが濡れ、被毛が赤茶色に変色している
など
猫の排尿障害の原因
排尿障害の原因は多様で、排尿に関わる神経を損傷したことによるもの、物理的に尿道が閉塞したもの、排尿筋の損傷、炎症による刺激など多岐にわたります。
排尿障害の原因として、以下のようなものが挙げられます。
<排尿障害の原因>
・脊髄障害(外傷や交通事故)
・骨盤部に及ぶ骨折、外傷や手術
・尿道閉塞
・排尿筋の損傷による収縮不全※1
・膀胱炎、尿道炎、膀胱結石などによる刺激
・反射性筋失調※2
・先天性異常※3
・老齢性失禁※4
・大脳、小脳疾患
など
膀胱の排尿筋の損傷による収縮不全(※1)とは、尿道閉塞の後など、膀胱の過拡張により排尿筋が損傷し排尿筋が働くためのつながりが壊れることで膀胱が収縮できなくなる病態です。
反射性筋失調(※2)とは、膀胱の排尿筋と尿道括約筋がうまく協調せず排尿が困難になる症状です。
排尿障害の原因となる先天性の異常(※3)は、異所性(いしょせい)尿管や膣狭窄(ちつきょうさく)などがあります。
異所性尿管とは、本来膀胱につながっている尿管が膀胱以外の場所に開口している先天的異常で、猫ではまれで、雌よりも雄に多いといわれています。
膣狭窄では、膣のある部分が狭くなっており、狭窄部と比べて広い奥の部分に尿が貯留することにより排尿障害が起こります。
老齢性失禁(※4)は加齢による膀胱の尿貯留量の低下と、うまく体を動かせないことにより尿失禁が起こります。
また、排尿障害の他の原因として猫ではまれではありますが、ホルモンの低下によるものや自律神経障害などがあります。
排尿障害の検査は以下のようなものが挙げられます。
<排尿障害の検査>
・神経学的検査
・膀胱の触診、圧迫
・カテーテル導尿
※細い管を尿道から膀胱へと挿入できるか確認する
・尿検査
・血液検査
・X線検査
・超音波検査
など
猫の排尿障害の予防方法
排尿障害の中には結晶尿や膀胱炎、膀胱結石から尿道閉塞を引き起こす例があります。
尿道閉塞は結晶尿や膀胱炎などを早期発見し、しっかり治療を行えば防げることも多いです。
排尿障害は排泄状況を日ごろから把握しておくことで早期発見ができます。
猫が排尿障害になってしまったら
膀胱に尿が残留していないか確認し、必要があれば排出させます。
このとき神経障害の部位や原因、病態によりカテーテル導尿(細い管を尿道から膀胱に入れる)と圧迫排尿(膀胱を手で圧迫し排尿させる)のどちらが可能かまたは適当かが判断されます。
排尿障害の原因や病態に合わせて内科的治療、あるいは外科的治療が行われます。
治療により原因が取り除かれたり、投薬により排尿が助けられたりすると正常の排尿に戻ることもありますが、十分な排尿ができるようにならないときは飼い主様や病院でのカテーテル導尿や圧迫排尿を日に数回行う必要があります。また、投薬により排尿を補助している場合は内科的治療を継続していかなければならないこともあります。
排尿は体を維持する上でとても大切な役割を担っています。早めに対処できるように、毎日の排泄を確認し、異常があればすぐに動物病院を受診しましょう。