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重症筋無力症

重症筋無力症

犬の重症筋無力症とは

重症筋無力症は、一般的に筋肉の脱力による運動失調や歩行不能を示す病気で、運動時に悪化します。

骨格筋が収縮する際に、骨格筋につながっている運動神経の末端から、アセチルコリンという物質が放出されます。
このアセチルコリンを受け取る受容体(アセチルコリン受容体)が筋肉側に存在し、受容体とアセチルコリンが結合すると、筋肉に刺激が伝達され、筋肉が収縮します。
この伝達が十分にできず、骨格筋が収縮できないことで、重症筋無力症の症状が現れます。

なお、重症筋無力症の発症は、あまり多くありません。

犬の重症筋無力症の症状

重症筋無力症は、症状の現われ方により、 全身型 局所型 劇症型 に分けられます。

簡単に、それぞれの型について症状の傾向を以下に説明します。

●全身型
重症筋無力症の多くで、歩行など運動を続けるうちに四肢の筋肉に力が入らなくなったり、うまく動かせなくなったりします。
歩くなどの運動をするうちに、足に力を入れようとしても入らなくなり、歩くのをやめてしまうといった様子が見られます。
例えば、歩いていたら足の筋肉が震え、だんだん中腰姿勢になり、座り込み歩けなくなるといった様子や、歩き方がいつもと違いおかしい様子になることもあります。
一定時間休むと、また動けるようになることも多いです。
全身型の犬のほとんどで、こういった症状に加え、巨大食道症(食道拡張症)も併発します。
巨大食道症では、主に吐き戻し(吐出)がみられます。
他には、声がかすれたりうまく飲み込めなくなったりするといった例もあります。
3つの型の中では、全身型の重症筋無力症が最も多く、一般的です。

●局所型
局所型の犬では、四肢の虚弱はみられず、巨大食道症のみの発症やのどのあたり、顔面などに症状が現れます。
初期には局所型でも、そのうちに全身型に移行していくこともあります。

●劇症型
劇症型の犬は、四肢の虚弱や呼吸筋の麻痺が急速に進行し、 起立不能 横になって、頭も上げられない 重度の巨大食道症 誤嚥(ごえん)性肺炎 呼吸困難 などがみられます。

いずれの型でも、巨大食道症は誤嚥性肺炎を引き起こし、状態によっては突然死や死に至ることもよくみられます。

また、重症筋無力症では、他の病気が同時に起きていることもあります。
併発疾患には、 甲状腺機能低下症 アジソン病(副腎皮質機能低下症) 多発性筋炎 咀嚼筋炎 や他の免疫異常による疾患などが挙げられます。

犬の重症筋無力症の原因

重症筋無力症の原因には、生まれつきである先天性と、生後何らかの原因で発症した後天性があります。

●先天性
先天性では、アセチルコリンを受け取る筋肉側のアセチルコリン受容体が生まれつき少なく、骨格筋への刺激の伝達が不十分になります。

先天性の重症筋無力症では、ジャック・ラッセル・テリアなどでみられやすいです。
先天性の重症筋無力症は生後3~9週齢ほどで発症します。

●後天性
後天性の重症筋無力症は、筋肉側のアセチルコリン受容体に対する抗体が作られてしまう自己免疫異常によるものです。

※抗体とは、攻撃対象とする物質(抗原)ごとに対応して作られる物質。病原体など異物とみなした物質を排除する免疫システムの一部として働く。

アセチルコリン受容体に抗体が結合し、アセチルコリン受容体が破壊されるため、アセチルコリンと結合できる受容体が少なくなります。
そのため、筋肉に刺激を伝達できなくなり、重症筋無力症が起こります。

後天性の重症筋無力症では、ゴールデン・レトリーバーやジャーマン・シェパード、ダックス・フンドなどで起きやすいといわれていますが、犬種に関わりなく発症します。
後天性の重症筋無力症では、胸腺腫、肝臓のがん、骨肉腫などの腫瘍に伴う疾患として発症することがあります。
後天性重症筋無力症は、5歳以下または9歳以上でよく発症します。

重症筋無力症の検査は、以下のようなものがあります。
現われている症状や年齢、経過などによっても行われる検査は異なることがあります。

<重症筋無力症の検査>

触診 神経学的検査 血液検査 X線検査(造影検査含む) 超音波検査 テンシロンテスト 抗AChR抗体測定(※アセチルコリン受容体) 筋電図 筋生検 など

併発疾患がないか調べるなど、必要であればホルモン検査など上記以外の検査も行われます。

テンシロンテストとは、重症筋無力症の治療薬と同じグループの薬を注射し、運動負荷をかけ動けない状態から、注射後、動くようになるかをみる検査です。(重症筋無力症では一般的に運動が改善する)
テンシロンテストでは、副作用が現われることがあるので、万全の準備を整えて行われます。
筋生検は先天性重症筋無力症の診断で用いられることがあります。
犬の状態や経過、年齢、検査結果、必要性などから、検査が選択され、検査結果などから総合的に判断されます。

犬の重症筋無力症の予防方法

重症筋無力症の予防方法は特にありません。
犬におかしい様子があれば、動物病院を受診しましょう。

犬が重症筋無力症になってしまったら

重症筋無力症は腫瘍が原因となり発症することもあるので、腫瘍があれば、その治療を行います。

重症筋無力症の治療は、ピリドスチグミンなどの抗コリンエステラーゼ阻害薬の投与です。
運動神経の末端から分泌されたアセチルコリンは通常、酵素(コリンエステラーゼ)により分解されますが、この薬は、アセチルコリンを分解する酵素を阻害します。
これにより筋肉側の受容体付近でのアセチルコリンが増え、結果的にアセチルコリンと結合する受容体の割合が増えます。
そのため、筋肉への刺激が増強され、収縮が起こるようになります。
また、後天性の重症筋無力症では、免疫の異常を抑えるために、ステロイド剤などの免疫抑制剤も投与します。

他には、併発している疾患の治療や全身状態の改善のための治療、巨大食道症の管理などが行われます。
巨大食道症の治療は、食事の形状や食事中・食事後の体勢、胃のチューブの設置などで管理します。

※巨大食道症の治療に関して詳しくは、「犬の巨大食道症」をご参照ください。

巨大食道症は、吐出による誤嚥性肺炎の危険が常時あり、誤嚥性肺炎による突然死が起こることもあります。

重度の誤嚥性肺炎や管理の難しい巨大食道症、劇症型の重症筋無力症や、腫瘍疾患による重症筋無力症などは、経過は厳しいことが多いといわれています。
腫瘍を伴わない犬の後天性重症筋無力症では、治療を半年から1年ほど続けると、薬がなくても、症状がおさまる犬が多いです。
ただ、足の運動機能は回復しても、巨大食道症は残ることもあります。

よく吐き戻すようになった、散歩途中で歩けなくなった、あまり歩こうとしない、すぐに疲れるなど、異常な様子があれば、動物病院に連れて行きましょう。

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