小脳障害
小脳障害
犬の小脳障害とは
小脳は脳全体の後ろ側に位置し、平衡感覚や姿勢保持に関わり、感覚情報をもとに運動の制御を行います。
犬の小脳障害の症状
小脳障害が起こったときに現れる症状は次のようなものがあります。
<小脳障害でみられる症状>
・立ったときに左右の足の間隔が広い
・何か行動をしようとするとゆれる
・距離感がつかめず、歩き方や運動の仕方(足の出し方、曲げ方)が大げさ、ぎこちない
・頭を背側にそらし、前足を伸ばして後ろ足を曲げる姿勢になる(意識は正常)
など
その他には、小脳障害の症状と合わせて、前庭※障害に特徴的である
・普段の状態で頭を傾けている:斜頸(しゃけい)
・同じ方向にぐるぐる回る:旋回(せんかい)
・意図とは関係なく眼球が一定方向に規則的にゆれる:眼振(がんしん)
などの症状がみられることがあります。
※前庭とは平衡感覚をつかさどる場所で、小脳と連携しながら姿勢などを保つ働きをする
小脳障害が原因となってこれらの症状が発症するのは、前庭と密接に関係している小脳の腹側の部位(片葉・小節葉)で障害が起こったときです。
※前庭の説明や前庭障害の症状については「犬の前庭疾患」をご参照ください。
犬の小脳障害の原因
小脳障害を引き起こす疾患は以下のようなものが挙げられます。
<小脳障害を引き起こす疾患>
・外傷
・梗塞(こうそく)
※血管がふさがりその部位とその周囲で血液が通らなくなること
・出血
・脳炎
-感染性
-免疫異常が疑われるもの
・腫瘍(しゅよう)
・変性
※小脳が正常に形成されなかったり、細胞や組織が異常な状態に変化したりする
・奇形
・ヘルペスウイルス感染(子犬)
など
小脳障害はどの年齢の犬でも起こる可能性があります。ただ、小脳の変性や奇形は、生まれたときからや早い時期から発症する遺伝性や先天性の疾患です。
先天性の小脳の変性が起こる可能性のある犬種は、アイリッシュ・セター、ビーグル、ラブラドール・レトリバーなどといわれています。
<小脳障害の検査>
・神経学的検査
・血液検査
・X線検査
・尿検査
・脳脊髄液(CSF)検査
・CT検査/ MRI検査
など
小脳変性の診断では通常、除外診断(検査結果に異常がなく他の疾患の可能性が低くなる)を行います。すなわち、全ての検査が正常であれば変性性疾患が疑われます。
犬の小脳障害の予防方法
犬の小脳障害に対する明確な予防方法はありませんが、外傷により小脳が損傷して小脳障害が起こることもあるので、交通事故の予防や特に小型犬では抱っこしているときに落とさないことで小脳障害を引き起こす可能性が低くなります。
犬が小脳障害になってしまったら
治療方法がある疾患が原因であれば、その治療が行われます。感染にはそれを抑える治療、免疫異常が疑われるのであれば免疫抑制などです。
しかし、先天的なものが原因であれば、治療方法はなく、犬が運動をうまくできないことにより怪我をしないように注意したり、生活上で補助が必要であれば行ったりして、犬の生活の質を高めていくサポートを重点的に行います。
ふらつく、歩き方がぎこちない、うまく動けないなど異常な様子などがあれば、すぐに動物病院に連れて行きましょう。