頸椎すべり症(ウォブラー症候群)
頸椎すべり症(ウォブラー症候群)
目次
犬の頸椎すべり症(ウォブラー症候群)とは
犬の頸椎すべり症(ウォブラー症候群)とは、頸椎(けいつい:首の骨)の奇形や頸椎が不安定なため、頸部の脊髄を圧迫して起こる複数の症状を指します。
頸椎すべり症(ウォブラー症候群)では、頸椎の後部や胸椎(きょうつい:肋骨が付いている背中の骨)の前部で圧迫が起こります。
頸椎すべり症(ウォブラー症候群)は、尾側頸椎脊髄症、頸部脊椎不安定症、後部頸髄狭窄症など、さまざまな名称で呼ばれています。
中大型犬に起きやすく、
・ドーベルマン・ピンシャー
・ジャーマン・シェパード
・グレード・デーン
・ワイマラナ―
・バーニーズ・マウンテン・ドッグ
などでよくみられます。
頸椎すべり症(ウォブラー症候群)は、若齢で発症する場合と、中年齢で発症する場合があります。
ドーベルマン・ピンシャーでは中年齢(6歳ぐらい)、グレート・デーンでは若齢(3歳ぐらい)で発症することが多いといわれています。
小型犬でも似たような症状になる犬もいます。
犬の頸椎すべり症(ウォブラー症候群)の症状
頸椎すべり症(ウォブラー症候群)は、症状が進行していきます。
初期では、後ろ足がふらついたり、開脚したりする症状がよくみられます。
特徴的な症状として、歩くときに前足の歩幅は小さく動き、後ろ足の歩幅は大きくふらついているというものがあります。
通常、前足と後ろ足は連動して動きますが、この症状では、前足と後ろ足が個別で動いているような歩き方がみられます。
<頸椎すべり症(ウォブラー症候群)の症状>
・ふらつく
・後ろ足が踏ん張れない
・後ろ足が開く(開脚)
・頭(首)を下にさげたままにする(頸部の痛み)
・前足と後ろ足の足並みがそろわず、後ろ足がふらつく(two engine gait)
など
犬の頸椎すべり症(ウォブラー症候群)の原因
頸椎すべり症(ウォブラー症候群)のはっきりとした原因は分かっていませんが、おそらく先天的な要因があるのではないかと考えられています。
ただ、特定の遺伝子変異部位などは見つかっていません。
頸椎すべり症(ウォブラー症候群)では、
・後部頸椎が不安定で、脊髄の通り道が狭くなる
・頸椎や胸椎の周りの靱帯、椎間板物質などの組織が厚くなる
などにより、脊髄が圧迫されて起こります。
頸椎すべり症(ウォブラー症候群)の検査は、以下のようなものがあります。
<頸椎すべり症(ウォブラー症候群)の検査>
・触診(整形外科的検査を含める)
・歩行観察
・神経学的検査
・X線検査
・CT検査/MRI検査
など
X線検査では、首を曲げた像、伸ばした像をそれぞれ撮影することもあり、必要であれば検査時に鎮静(軽い麻酔のようなもの)を行います。
CT検査、MRI検査は、ウォブラー症候群の診断・治療法の決定などに必要であり、検査設備のある病院で、全身麻酔をかけて実施します。
他にも必要な検査があれば、その都度行われます。
犬の頸椎すべり症(ウォブラー症候群)の予防方法
頸椎すべり症(ウォブラー症候群)の予防方法は、特にありません。
ふらつきや足が踏ん張れないなど、おかしい様子が見られたら、早めに動物病院に連れて行きましょう。
犬が頸椎すべり症(ウォブラー症候群)になってしまったら
症状が軽度であれば、鎮痛薬や首のコルセット、安静など内科的治療で経過を観察します。
首輪からハーネス(胴輪)への変更も勧められます。
症状が重度または進行するようなら、外科的治療(手術)が検討されます。
頸椎すべり症(ウォブラー症候群)は、進行していくので、外科的治療が検討されることが多いです。
外科的治療の方法は、さまざまなものがあり、複数組み合わせて行われることもよくあります。
不安定になっている骨を固定すること、脊髄が圧迫している物質があれば除去することなどが行われます。
この手術は、これらの手術経験数の多い病院や二次診療施設(大学附属動物病院など)に紹介されることもよくあります。
手術法は、病気の状態や獣医師ごとの経験や判断、飼い主様の希望などから総合的に判断し提案されます。
頸椎すべり症(ウォブラー症候群)では、もう起き上がれない状態であったり、症状が重度であったりすると、手術をしても改善がみられない例も多くなります。
しっかりと相談・納得して、治療方針を決定していきましょう。
早期発見をして状況を把握し、治療や経過観察など対処を早めに行うことが、重要です。
歩き方や犬の様子に異常がみられたら、動物病院を受診しましょう。