変性性脊髄症
変性性脊髄症
犬の変性性脊髄症とは
変性性脊髄症(DM:Degenerative Myelopathy)とは、麻痺が徐々に進行していく慢性の神経疾患です。
痛みはなく、麻痺が進行していくと、最終的に呼吸不全に陥り、死に至ります。
人の筋萎縮性側索硬化症(ALS)に似ている病気ともいわれています。
犬の変性性脊髄症の症状
変性性脊髄症は、後ろ足の麻痺から症状が始まります。
麻痺は後ろ足から前側に進んでいきます。
前足まで麻痺が進むと、起き上がることができなくなり、失禁もするようになります。
最終的に呼吸をすることができなくなり、死に至ります。
8歳から11歳ほどで発症し、半年から3年ほどかけて進行していきます。
以下は、変性性脊髄症の症状です。
<変性性脊髄症の症状>
・後ろ足をすって歩く
・腰がふらつく
・後ろ足がもつれる
・下半身を引きずる
・立てない
・失禁(尿・糞便)
・呼吸困難
など
麻痺はありますが、痛みがないので、後ろ足の麻痺に症状が留まっている時期は、元気・食欲に影響はありません。
麻痺により足をすって歩くと、こすれてえぐれるなど傷になるので、足先の保護が必要になります。
犬の変性性脊髄症の原因
変性性脊髄症の詳しい原因や仕組みは分かっていません。
ただ、変性性脊髄症を発症した犬で、特定の遺伝子変異部位が見つかっています。
変性性脊髄症は、常染色体※劣性(潜性)遺伝で、2本で1対である染色体のどちらにも遺伝子変異がある場合に、発症のリスクが高まるといわれています。
※常染色体とは、身体上の性を決定する性染色体以外の染色体
ただ、その場合でも発症しない例も確認されており、変性性脊髄症に関して、さらなる研究と解明が必要になります。
変性性脊髄症の発症がよくみられる犬種は、
・ジャーマン・シェパード
・ボクサー
・バーニーズ・マウンテン・ドッグ
・ウェルシュ・コーギー・ペングローブ
などが挙げられ、他にもさまざまな犬種で報告されています。
日本国内では、ウェルシュ・コーギー・ペングローブの発症が多くみられます。
バーニーズ・マウンテン・ドッグでは、同一染色体内に、他の犬種でもみられる遺伝子変異の部位とは、別の部位での遺伝子変異が見つかっています。
変性性脊髄症の検査は、以下のようなものがあります。
<変性性脊髄症の症状>
・歩行検査
・触診
・神経学的検査
・X線検査
・CT検査/MRI検査
・遺伝子検査
など
他にも、必要な検査があれば行われます。
変性性脊髄症は、椎間板ヘルニアと似たような症状が出たり、変性性脊髄症と椎間板ヘルニアが併発したりすることもあるので、MRI検査などの詳細な検査が必要になります。
変性性脊髄症と椎間板ヘルニアのように脊髄が圧迫されて起こる病気では、対処法・治療法が異なります。
CT検査やMRI検査で変性性脊髄症に特徴的な像を示すわけではありませんが、椎間板ヘルニアなど他の病気を否定できます。
臨床経過やこれらの検査所見などから総合的に判断します。
変性性脊髄症の確定診断は、脊髄の病理組織検査を行うことですが、生前には行うことはできません。
犬の変性性脊髄症の予防方法
変性性脊髄症の予防方法は、特にありません。
ただ、変性性脊髄症では、発症した犬で遺伝子変異が発見されています。
遺伝子変異を持っている犬全てが発症するわけではないようですが、遺伝により発症のリスクが高まるといわれています。
そのため、変性性脊髄症を発症した犬、あるいは遺伝子変異を持つ犬の両親やきょうだい、血縁の犬は注意をする必要があります。
また、しっかりと繁殖計画を立て、繁殖を行っていくことも大切です。
さらに、後ろ足がふらつく、後ろ足をすって歩くなどの様子が見られたら、早めに動物病院に連れて行きましょう。
犬が変性性脊髄症になってしまったら
変性性脊髄症の治療方法はありません。
筋肉を維持し、けがなどを避け、できるだけ生活の質を保てるように補助的な対処を行います。
後ろ足をすって歩くと、足先が削れて傷になってしまいます。
ただ、犬は痛みがないので、傷を気にせず、そのまま歩くため、足先の保護をします。
また、後ろ足の麻痺により、運動量が少なくなるので、体重が増えやすいです。
体重が増加すると体の負担も増えるので、体重管理は重要です。
車いすの利用も、運動量や筋肉量、生活の質をある程度維持することができます。
起き上がれない状態になったら、褥瘡(じょくそう)※ができやすくなるので、介護用マットの利用やこまめな体位変換をします。
※褥瘡(じょくそう)とは、床ずれのこと。
自力での排泄のコントロールが難しくなったら、尻周りの毛刈りやおむつ、マナーベルトなどを使用します。
尻周りの毛刈りなどは動物病院で行ってもらえるので、ケア方法や生活全般の不安も含め、困ったことがあったら、こまめに相談しましょう。
後ろ足のもつれや引きずって歩くなどの様子が見られたら、動物病院を受診しましょう。