GM1ガングリオシドーシス
GM1ガングリオシドーシス
犬のGM1ガングリオシドーシスとは
GM1ガングリオシドーシスとは、進行性の神経症状を示す致死性の遺伝性疾患です。
GM1ガングリオシドという物質(糖脂質)が分解されず細胞内に蓄積していき、細胞死が起こる病気です。
通常、GM1ガングリオシドという物質(糖脂質)は細胞内にあるリソソーム(ライソゾーム)という小器官で、酵素により分解されます。
リソソームは、酵素を多く含み、老廃物や自分の細胞などを分解・消化しています。
分解されてできた物質が新たな材料となるので、細胞内のリサイクル工場に例えられています。
GM1ガングリオシドーシスでは、遺伝子変異により、GM1ガングリオシドを分解する酵素が欠損し、リソソーム内に蓄積します。
このような病気をリソソーム(ライソゾーム)蓄積病といい、他にも、日本ではボーダーコリーで知られるセロイドリポフスチン症などがあります。
また、GM1ガングリオシドーシスは、柴犬でよくみられます。
犬のGM1ガングリオシドーシスの症状
GM1ガングリオシドーシスでは、生後5カ月から6カ月頃に症状が現れ始めます。
それより以前は症状が現れず正常な発育がみられます。
生後5カ月から6カ月で、
・体のバランスがとりづらい
・ときどき足をかばうように歩く
・歩き方がぎこちなくなる
・歩き方が大げさになる(測定過大)
・何かしようとすると頭が震える(企図振戦)
などの症状が現れるようになります。
その後、症状が進行していきます。
だんだんうまく動けなくなり、起き上がれなくなっていき、視覚障害もみられます。
筋緊張やけいれんが現れ、音などの刺激に過敏になりますが、その後反応が鈍くなっていきます。
最終的に昏睡し、1歳から1歳半ほどで死に至ります。
最終的な段階で安楽死が選択されることも、少なくありません。
犬のGM1ガングリオシドーシスの原因
GM1ガングリオシドーシスでは、特定された遺伝子変異があります。
GM1ガングリオシドーシスは、常染色体劣性(潜性)遺伝です。
常染色体とは、身体上の性を決定する性染色体以外の染色体を指します。
染色体は2本で1対になっており、常染色体劣性遺伝では、1対となる染色体2本ともに、遺伝子変異があるときに発症します。
片方にしか遺伝子変異を持たない場合、GM1ガングリオシドーシスは発症しません。
GM1ガングリオシドーシスの検査は、以下のようなものがあります。
<GM1ガングリオシドーシスの検査>
・触診
・神経学的検査
・血液検査
・X線検査
・MRI検査
・遺伝子検査
など
他にも、必要な検査があれば行われます。
犬のGM1ガングリオシドーシスの予防方法
GM1ガングリオシドーシスの予防方法はありません。
犬が生まれる前の段階で、GM1ガングリオシドーシスを発症する個体が生まれることを防ぐような繁殖計画を立てる必要があります。
GM1ガングリオシドーシスは、それに関する遺伝子変異をペアで持たないと発症しません。
そのため、発症がなくても、遺伝子変異をひとつ持っている可能性があります(キャリア)。
キャリアの犬は、繁殖せず、飼育するだけであれば、特に問題はありません。
ただ、そのような個体が繁殖の際に気付かず混じっていると、遺伝子変異を知らないうちに広め、そのうちにGM1ガングリオシドーシスになる犬が出てくる、ということになります。
キャリア犬を使い繁殖するということになると、相手の犬の遺伝子変異の有無も把握して計画的に繁殖する必要があります。
もちろん、生まれた子供で計画的な繁殖をする場合には、遺伝子検査が必要になります。
犬がGM1ガングリオシドーシスになってしまったら
GM1ガングリオシドーシスに治療法はありません。
なるべく犬が過ごしやすいように補助や介護をしながら、世話をしていくことになります。
歩き方などにおかしい様子が見られたら、動物病院を受診しましょう。