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腸リンパ管拡張症とは、腸のリンパ管が拡張、または破れてしまい、リンパ液が腸管へと漏れ出ることにより起こる疾患です。
リンパ管は腸だけでなく全身をめぐり、途中でリンパ節※などが位置しています。
※リンパ節とは、複数のリンパ管がつながっている部分で、免疫に関わる細胞が集まる場所。
リンパ液はリンパ管を流れており、組織液やたんぱく質、脂肪、リンパ球(白血球のひとつ)などを含む液体です。
リンパの流れにより、 組織の液体や物質の吸収、運搬 老廃物の除去 免疫システムに関わる などを行います。
一方、腸粘膜の表面には、絨毛(じゅうもう)という、毛足の長い絨毯のように細長い無数の突起が密生しています。
絨毛表面は、栄養を吸収する細胞や粘液を分泌する細胞でおおわれています。
腸の表面に絨毛が密にあることで、表面積が大きくなり、消化・吸収を行う腸の機能が最大になるような構造になっています。
リンパ管は、無数にある絨毛ひとつひとつの中心を通っており、リンパ管を通して、脂肪酸などの吸収・運搬が行われます。
腸リンパ管拡張症では、腸絨毛のリンパ管の拡張や破綻により、腸管内にリンパ液の脂肪やたんぱく質が漏れ出て、吸収異常も起こります。
腸リンパ管拡張症により、腸から漏れ出るたんぱく質が、体内に吸収されるたんぱく質を上回ると、低たんぱく血症となり、蛋白漏出性腸症(たんぱくろうしゅつせいちょうしょう)が起きます。
腸リンパ管拡張症の犬では、炎症性腸疾患(IBD)であることもよくみられます。
腸リンパ管拡張症には、ヨークシャー・テリアやマルチーズがなりやすいといわれています。
腸リンパ管拡張症では、2~3週間以上の下痢などの消化器疾患を示すことが多いです。
また、たんぱく質や脂肪、リンパ球(白血球のひとつ)などを含むリンパ液が漏れ出ることで、低たんぱく血症になり、重度であれば、腹水や胸水、むくみが現れます。
慢性的、あるいは繰り返す下痢 嘔吐 食欲不振 体重減少 元気がない おなかが膨れている 四肢などがむくんでいる 呼吸が速い、しんどそう など
必ずしも下痢が伴うわけではなく、症状も時間を置いて繰り返し現れるなど、分かりにくいこともあります。
腸リンパ管拡張症は、原因の分からない特発性(とくはつせい)であることがほとんどです。
体をめぐるリンパ管の流れが妨げられたことにより起こると考えられています。
原因となる疾患がある場合はまれですが、 右心不全 心外膜炎 炎症性、線維性(硬くなる)、腫瘍性などでリンパの流れが閉塞 肝硬変による門脈圧亢進 などが挙げられます。
腸リンパ管拡張症は、慢性的な消化器症状などに対し検査することも多く、検査は多岐にわたります。
蛋白漏出性腸症や炎症性腸疾患(IBD) 、慢性腸炎などの検査と同じ様になります。
触診 糞便検査 血液検査 X線検査 超音波検査 内視鏡検査 試験開腹 病理組織検査 など
腸リンパ管拡張症の確定診断には、内視鏡検査や開腹手術による病理組織検査※が必要になります。
※病理組織検査とは、採取した組織の塊から標本を作製し、組織や細胞などの様子を顕微鏡で観察する検査。
他にも必要な検査があれば行われます。
腸リンパ管拡張症の予防方法は特にありません。
便の状態や犬の様子がおかしければ、動物病院を早めに受診しましょう。
腸リンパ管拡張症の治療は、原因となる疾患が分かることはまれで、原因疾患があれば、その治療が行われます。
腸リンパ管拡張症では、さらなるリンパ管の拡張を防ぐために、超低脂肪食が与えられます。
治療は食事療法が基本ですが、ステロイド剤の投与(場合によっては他の免疫抑制剤も)を必要とする犬もいます。
経過をみながら、徐々にステロイド剤の用量を減らしていきますが、投与の継続が必要になることが多いです。
蛋白漏出性腸症になり、血液中のたんぱく質の喪失が著しい犬では、四肢がむくんだり、腹水がたまったりすることがあるので、必要であれば利尿剤が使用されます。
腸リンパ管拡張症は、炎症性腸疾患(IBD)を併発していることもよくあります。
その場合も、食事療法だけでなく、ステロイド剤などの免疫抑制剤や腸に対する抗生剤などが使用されます。
腸リンパ管拡張症は、早期発見、早期治療が重要です。
元気や食欲がない、消化器症状が続くなど、異常が見られたら、動物病院に連れて行きましょう。