犬の慢性腸炎とは
腸炎は急性と慢性のものがあり、腸炎の多くは急性腸炎で比較的激しい症状が突然発症しますが、数日で自然に治るか治療するとすぐに回復していきます。
一方、慢性腸炎は自然に治ることはなく、一般的な急性胃腸炎の治療をしてもなかなか治らない、またはすぐに症状が再発し長期的な経過をたどるものです。
犬の慢性腸炎の症状
慢性腸炎の主な症状は長く続く下痢です。最初は下痢のみであっても、炎症が広がれば嘔吐も現れることがあります。消化吸収が十分にできなくなるため、体重が減少していきます。
犬の慢性腸炎の症状は以下のようなものがあります。
慢性腸炎の症状
- 下痢
- 嘔吐
- 食欲不振
- 体重減少
- 元気低下
など
犬の慢性腸炎の原因
慢性腸炎の主な症状である長く続く下痢の原因は多様で、大きな病気が隠れていることも少なくありません。
ここでは、腸炎だけでなく慢性の下痢を引き起こすさまざまな原因を紹介します。
慢性の下痢の原因は以下のようなものが挙げられます。
慢性の下痢の原因
など
リンパ管拡張症(※1)とは、体の中を流れる体液(リンパ液)の流れが妨げられ、リンパ液が通るリンパ管が広がり必要なたんぱく質が大量に流れ出る疾患です。低蛋白血症(ていたんぱくけっしょう)になり、蛋白漏出性腸症(たんぱくろうしゅつせいちょうしょう)の原因のひとつです。
抗菌薬反応性腸炎(※2)とは、抗菌薬を投与すると腸炎が治まる慢性腸疾患で、抗菌薬の投与をやめるとまた下痢が続くようになります。
他にも、ホルモンの病気であるアジソン病(副腎皮質機能低下症)なども慢性の下痢を引き起こすことがあります。
慢性腸炎の検査方法は以下の通りです。
慢性腸炎の検査
- 触診
※体を触って痛みやしこりなどがないかを調べる - 血液検査
- X線検査
- 超音波検査
- 内視鏡検査
※内視鏡で腸粘膜の目視や腸組織の採取をし、病理組織検査を行う - 試験開腹
※開腹手術で消化管の外側からの目視・触診(見た目、動きなど)や、腸を採取し病理組織検査で腸の状態を確認する - 病理組織検査
など
必要であればホルモン検査やアレルギー検査などの特殊な血液検査、さらなる画像診断など他の検査も行うことがあります。
犬の慢性腸炎の予防方法
寄生虫感染により慢性腸炎になることがあるので、特に子犬は糞便検査を行い、寄生虫の感染がないかを確認しておきましょう。
そして、大切なのは異常が見られたら放っておかずに動物病院を受診することです。
慢性腸炎はしっかりと検査し、原因を絞り込むことが大切です。検査結果を反映した治療を行い、その結果を見てさらなる検査が必要になることがあります。
検査・治療はしっかりと行い、さらなる必要な検査があれば獣医師と相談して決めていきましょう。
犬が慢性腸炎になってしまったら
一般的な腸炎の治療は、
- 腸に対する抗生剤
- 整腸剤
- 腸疾患を考慮した食事
などがありますが、慢性腸炎では原因に合わせて治療が行われます。
炎症性腸炎(IBD)やリンパ管拡張症では免疫抑制剤も使用され、抗菌薬反応性腸炎では抗菌薬が継続して処方されます。
悪性腫瘍はそれぞれの腫瘍やその状態により外科手術や化学療法(抗がん剤など)、または放射線療法が選択されます。
また、的確な治療につなげるために、しっかりとした検査が必要になります。
慢性腸炎は大きな病気が原因であることも多いので、症状が緩やかであっても早めに動物病院に連れて行き、必要であれば通院を続けましょう。