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肛門のう炎

肛門のう炎

犬の肛門のう炎とは

犬や猫には肛門のうというマーキングに使う分泌液を出す袋があります。この肛門のうに炎症が起こった状態が肛門のう炎です。肛門のうは肛門の左右それぞれの斜め下あたりにあり、肛門のうから肛門に管がつながっています。

分泌液は肛門のうにある肛門腺から分泌され、肛門のうにたまります。肛門のうは通常排便時に糞便と共に排泄されるなどして、マーキングの機能を果たします。

肛門のうに分泌液がたまってくる期間や分泌液の粘り気の程度などは犬によって差があります。肛門のうから分泌液が出にくく肛門のう炎になりやすい犬では、肛門腺絞りといって定期的に手で肛門のうを絞り分泌液を押し出す必要があります。

犬の肛門のう炎の症状

肛門のう炎が起こっているときに一番分かりやすい症状が、お尻を地面につけたまま前足を使って前に進むというものです。これは肛門のうの炎症によりかゆみや違和感が出ているためです。

また、進行すると肛門のうに分泌液がたまり、肛門のうが大きく腫れることがあります。最終的には肛門のうが破裂し、肛門の斜め下に穴が開きます。この状態は肛門のう破裂と呼ばれます。


<肛門のう炎の症状>

・お尻を地面につけたまま前足で引きずって前に進む

・肛門のあたりをしきりに気にして舐める

・肛門の斜め下の方向が膨らむ

・肛門の斜め下の方向に穴ができ、血や膿が出る

・お尻を痛がる

など

犬の肛門のう炎の原因

肛門のうに分泌液が排泄されずにずっとたまっていると、分泌液の粘り気が強くなります。粘り気が上がることで分泌液が肛門のうからさらに排泄されにくくなりたまっていきます。そしてたまった分泌液で細菌が繁殖し、肛門のうに炎症が起こります。

炎症が起こると肛門のうの出口が詰まりやすくなり、分泌液が排出されないまま炎症や感染が進行していきます。

肛門のうの分泌液の粘り気がもともと強い犬や分泌液がたまるのが速い犬、肛門のうから分泌液を排出する力が弱い犬は、肛門のう炎になりやすいです。


<肛門のう炎の検査>

・肛門のうの触診

・鏡検※1

・細菌培養・感受性検査※2

など

※1:鏡検とは、顕微鏡で観察する検査のことで、肛門が破裂しているときなどにガラス板(スライド)を押し付けるなどして、細菌感染や通常みられない細胞などがないかを確認する

※2:細菌培養・感受性検査とは、肛門のうの分泌液中に増殖している細菌の種類や有効な抗生剤の種類を特定する検査


これら以外にも必要な検査があれば行われます。

犬の肛門のう炎の予防方法

定期的な肛門腺絞りが肛門のう炎の予防につながります。

肛門腺絞りが必要になる期間は犬によって異なりますが、目安として2週間~1か月程度で行いましょう。最初は肛門絞りを動物病院などで行ってから、1か月程度で再度肛門のうに分泌液がたまっていないかを動物病院などで確認し、犬に合った期間を見つけていきましょう。トリミングの際に行うこともできます。


なお、お尻をしきりに気にする様子や、お尻を地面にこすりつけているような様子がみられたら、肛門のうの分泌液がたまりすぎているサインです。早めに動物病院などで肛門腺絞りを行いましょう。


肛門腺絞りにはコツがいるので、飼い主様が行う場合は、最初はトリミングか動物病院の診察で方法を教わり、家でできそうであればやってみてもいいかもしれません。

ただ、肛門のうの出口が詰まりやすかったり、肛門のうの壁が厚くなっていたりして、肛門腺絞りが難しい犬もいます。肛門腺絞りを嫌がる犬も多いので、家で行うのが難しい場合は無理をせずに動物病院に連れて行きましょう。

犬が肛門のう炎になってしまったら

肛門のう炎の治療には以下のようなものがあります。


<肛門のう炎の治療>

・肛門のうの分泌液の排出(肛門腺絞り)

・抗生剤

・肛門のうの洗浄

・肛門のうの外科的切除

など


お尻を軽く地面にこすりつけるのみで、肛門腺絞りで排出した分泌液にも特に異常がなければ、肛門腺絞りのみ行うことも多いです。

進行すると肛門腺絞りに加え、抗生剤の使用や洗浄などをします。抗生剤を使用する際には、経過や状態などにより必要であれば細菌培養・感受性検査をもとに抗生剤が選択されます。

肛門のう破裂が起きていると特に、通院で洗浄をこまめに行う必要があります。

通常の肛門のう炎であれば2~3週間程度で治癒することが多いです。


また、長期間治療に反応しなかったり、しつこく再発を繰り返したりするなど、必要であれば肛門のうの外科的切除が行われる場合もあります。その場合は、獣医師とよく相談して治療方針を決定していきましょう。


以下は治療費の一例です。この例では肛門のところにできもののような塊ができたので受診した例です。比較的軽度で、肛門のう破裂は起きませんでした。


治療費例

治療期間:2週間

通院回数:3回

合計治療費用:11,016円

一通院当たりの治療費例:2,000~6,000円(診察料、鏡検、肛門腺処置、内用薬)

※2016年1月~2017年12月末までの実際にあった請求事例になります。

※こちらに記載してある診療費は、あくまでも例を記載したものになります。実際の診療内容・治療費等は、症状や動物病院によって異なりますので、ご留意ください。


肛門のう炎は定期的に肛門腺絞りを行うことで予防することができます。肛門腺絞りが必要になる期間を把握し、定期的に行いましょう。また、お尻を地面にこすりつけたり、しきりに気にしたりする様子などがあれば動物病院に連れて行きましょう。

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