乾性角結膜炎(KCS)
乾性角結膜炎(KCS)
犬の乾性角結膜炎(KCS)とは
乾性角結膜炎(かんせいかくけつまくえん)とは、KCS(Keratoconjunctivitis sicca)とも呼ばれ、涙の量や質が低下して起こる眼疾患です。
人ではドライアイといわれ、犬ではよくみられますが、猫での発生は少ないです。
白目が赤かったり、粘っこいめやにが出たりします。
乾性角結膜炎(KCS)がよく起こるといわれている犬種には、以下のようなものがあります。
<乾性角結膜炎(KCS)の好発犬種>
・アメリカン・コッカー・スパニエル
・イングリッシュ・ブルドッグ
・ウェスト・ハイランド・ホワイト・テリア
・キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
・パグ
・ヨークシャー・テリア
・ボストン・テリア
・シーズー
など
この中でも、パグとヨークシャー・テリアは、先天性の乾性角結膜炎も起こりやすい犬種とされています。
犬の乾性角結膜炎(KCS)の症状
乾性角結膜炎(KCS)に代表的なのは、乾いた角膜(目の表面)と粘っこいめやにです。
ただ、軽度の場合は、めやには出ず、白目が赤くなる、目をこするなどの症状がみられます。
また、角膜が常時乾燥しているので、角膜潰瘍にもなりやすいです。
乾性角結膜炎では、以下のような症状が現れます。
<乾性角結膜炎(KCS)の症状>
・白目や結膜が充血している
・粘っこいめやにが出る
・目をこすったり気にしたりする
・目の表面が乾燥して見える
・角膜が濁っている
・角膜が黒くなる(色素沈着)
など
犬の乾性角結膜炎(KCS)の原因
乾性角結膜炎(KCS)の原因には、生まれつきや臓器が発達する中で正常に発達しない部分があった先天性と、生まれた後で発症した後天性に分けられます。
乾性角結膜炎のほとんどは、生まれた後で発症する免疫異常によるもの(免疫介在性)といわれています。
具体的には、以下のようなものが挙げられます。
<乾性角結膜炎(KCS)の原因>
●先天性
・涙腺の形成不全など
●後天性(こうてんせい)
・免疫介在性
・ジステンパーウイルス感染症
・糖尿病
・甲状腺機能低下症
・顔面神経麻痺
・薬剤投与(スルファ剤など)
・放射線治療(頭部)
・チェリーアイでの第三眼瞼(瞬膜)の切除
・緑内障での義眼挿入術後の後遺症
など
乾性角結膜炎の検査は、以下のようなものが行われます。
<乾性角結膜炎の検査>
・視診
・細隙灯検査(スリットランプ検査)※1
・めやにや結膜の細胞診(顕微鏡で調べること)
・シルマーティア試験
・涙液膜破壊時間※2
・角膜染色
・眼底検査
など
※1:細隙灯検査(さいげきとうけんさ)とは、細い光を当てて、角膜や眼球を観察する検査
※2:涙液膜破壊時間は、染色液を目にたらし、目を開けた状態で、目の表面の涙の膜が破れるまでの時間を測定する。これにより、涙の膜が正常に機能しているのかが分かる。
目をしっかりと観察し、涙液量を測定するシルマーティア試験や、角膜の表面に傷がないか調べる角膜染色を行ったりします。
他にも必要な検査があれば、行われます。
犬の乾性角結膜炎(KCS)の予防方法
乾性角結膜炎の明確な予防方法は特にはありません。
めやにが出る、白目が赤い、目を気にするなどの症状があれば、早めに動物病院に連れて行きましょう。
犬が乾性角結膜炎(KCS)になってしまったら
乾性角結膜炎を引き起こす全身的な病気があれば、まずそちらの治療を行います。
免疫介在性と思われる乾性角結膜炎(KCS)では、免疫抑制剤であるシクロスポリンの眼軟膏または点眼が用いられます。
シクロスポリンの内服や抗生剤の点眼も併用することがあります。
一般的には免疫介在性の乾性角結膜炎では、治療によく反応し、改善するケースも多いです。
しかし、2カ月ほど経過しても改善しない場合は、治療での改善は難しい傾向にあるといわれています。
シクロスポリンで反応がなければ、タクロリムスなど他の免疫抑制剤の点眼を試みます。
涙液量の改善がみられたら、眼軟膏または点眼などの回数を減らしていきますが、中止すると再発してしまいます。
定期的な検査と治療の継続が必要です。
角膜の保護としては、
・角膜保護成分の点眼
-ヒアルロン酸や人工涙液など
・軟膏による眼球表面の保湿
を行います。
原因を除去できない場合や、先天性、元に戻らない変化による場合は、生涯角膜の保護を行っていくことになります。
角膜潰瘍を併発していたら、その治療も行います。
乾性角結膜炎の犬では、角膜潰瘍は急速に進行することも多く、注意が必要です。
目や犬の様子におかしいところがあれば、動物病院を受診しましょう。