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突発性後天性網膜変性症(SARD)

突発性後天性網膜変性症(SARD)

犬の突発性後天性網膜変性症(SARD)とは

突発性後天性網膜変性症(とっぱつせいこうてんせいもうまくへんせいしょう)とは、SARD(Sudden Acquired Retinal Degeneration)とも呼ばれる、突然目が見えなくなる病気です。


網膜とは、眼球内にある膜で、目に入ってきた光を網膜で脳へと伝える情報に変換し、視神経に伝達します。


突発性後天性網膜変性症(SARD)の後天性とは、生まれたときは正常だったが、後に異常が発生するという意味です。


突発性後天性網膜変性症(SARD)では、網膜に急性に異常が起こり、突然発症します。


発症の平均年齢は9歳頃で、中年齢から老年齢でよくみられ、雌犬に多いともいわれています。

犬の突発性後天性網膜変性症(SARD)の症状

突発性後天性網膜変性症(SARD)の特徴は、最近まで目が見えていたのに、突然見えなくなったというものです。


数日または数週間前までは目が見えており、特に目に関する症状はみられず、突然失明するという経過をたどります。


失明すると、
・物にぶつかる
・ご飯や水の場所を鼻で探って食べる、飲む
・あまり動こうとしなくなる
・不安がり、側にいようとする
などの様子がみられるようになります。


また、音がしていない状態で目の前のものが動いても、目で追う様子がなくなります。


なお、突発性後天性網膜変性症(SARD)では、特に白目が赤くなったり、目を気にしたりするなどの症状はみられません。

犬の突発性後天性網膜変性症(SARD)の原因

突発性後天性網膜変性症(SARD)の原因は、分かっていません。


クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)が併発したり、肝臓に関する血液検査項目(肝酵素など)が高くなっていたりすることもあります。


失明の前に、肥満や体重が増加した、水をよく飲み、尿の量が多くなったなどという例もよくみられるようです。


しかし、これらのことと、突発性後天性網膜変性症(SARD)との関連性については、分かっていません。


突発性後天性網膜変性症(SARD)では、失明以外に、目にはこれといった異常所見はほとんどありません。


突発性後天性網膜変性症(SARD)では眼底検査といって、網膜を拡大して肉眼で見る検査でも、発症当初はほとんどで正常です。


網膜電位(ERG)という網膜の機能検査では、波形がほとんど出ないという所見が突発性後天性網膜変性症(SARD)の特徴です。
そのため、網膜電位(ERG)は突発性後天性網膜変性症(SARD)を診断するのに必要になります。


網膜電位(ERG)の検査は特殊な設備が必要であり、目の精査のためにも、必要であれば眼科専門医に紹介されることも多いです。


突然の失明が起こる病気は、網膜剥離や視神経炎、脳腫瘍など他にもあり、さまざまな検査が行われます。


突発性後天性網膜変性症(SARD)の検査は、以下のようなものが挙げられます。


<突発性後天性網膜変性症(SARD)の検査>

・視診
・視覚があるか調べる検査
 -音や風を立てずに目に急速に指や手を近づけ、瞬きをするか見る
 -歩く道筋に障害物を置いて避けられるか見る
 -音を立てずに綿花を落としたり動かしたりして、目で追うか見る
・対光反射(強い光を当てて目の反応を見る)
・神経学的検査
・細隙灯検査(スリットランプ検査)
・眼底検査
・超音波検査
・血液検査
・網膜電位(ERG)
など

※細隙灯検査(スリットランプ検査)とは、目に細い光を当てて、観察する検査。


他にも、必要な検査があれば行われます。

犬の突発性後天性網膜変性症(SARD)の予防方法

突発性後天性網膜変性症(SARD)は、原因が分かっておらず、明確な予防方法はありません。


物にぶつかるなど、いつもと異なる様子があれば、動物病院を受診しましょう。

犬が突発性後天性網膜変性症(SARD)になってしまったら

突発性後天性網膜変性症(SARD)には、治療法はなく、視力が回復することはありません。


突発性後天性網膜変性症(SARD)では、突然失明するので、新しい生活に慣れるまでに、犬や飼い主様が混乱や不安を感じやすい側面があります。


ただ、新しい生活スタイルに慣れるまでは不安かもしれませんが、犬は視覚だけでなく、嗅覚や聴覚、記憶などを頼り生活しています。


犬が危険を避けられて生活しやすい工夫をすることが大切です。


犬が失明したときに生活環境を整える工夫として、以下のようなものが挙げられます。


<失明した動物との生活で工夫できること>

・家具にぶつかりにくいようなすっきりした家具の配置
・急に大幅な模様替え(動線の変更)がないようにする
・家具の角に保護剤を付ける
・屋内で危険な場所には柵を付ける
・ご飯、水、トイレの場所を変えない
・ご飯や水を時間になったら目の前に持って行く
・触る、近付く、リードを引くなど行動する前は、声掛けをする
 (こまめな声掛け)
・急に大きな音を立てない
・屋外などで動くときは、溝や段差など、けがをしそうな場所は避ける
 (危険を避けるためにリードは必ず付ける)
・スキンシップをたくさんとる(喜ぶ犬であれば)
など


それぞれの犬や生活環境に合った工夫があれば、その都度試してみます。


不安なことや困ったことがあれば、動物病院のスタッフや獣医師に相談すると、愛犬と安心して過ごすためのアドバイスをもらえるかもしれません。


犬の様子がおかしかったら、早めに動物病院に連れて行きましょう。

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