犬の平滑筋腫・平滑筋肉腫とは
平滑筋腫・平滑筋肉腫(へいかつきんしゅ・へいかつきんにくしゅ)とは、平滑筋という筋肉の細胞が腫瘍化したものです。良性のものを平滑筋腫、悪性のものを平滑筋肉腫といいます。
筋肉には骨格を介して働き、運動や活動を行う骨格筋がありますが、血管や臓器には骨格筋とは異なる特殊な筋があります。それが平滑筋です。
平滑筋は、血管、気道、胃腸、膀胱などの泌尿器系、子宮などの生殖器、その他の臓器で働いています。
よって、平滑筋腫・平滑筋肉腫は体のさまざまな部位で発生します。
犬の平滑筋腫・平滑筋肉腫の症状
平滑筋の腫瘍は主に胃腸や子宮・膣に発生します。
胃腸では平滑筋腫・平滑筋肉腫の発生がみられ、子宮・膣では平滑筋腫(良性)が発生することが多いです。
その他に、平滑筋肉腫は食道、まれに鼻腔内や前立腺で発生することも報告されています。毛を立たせる立毛筋も平滑筋であることから、まれに皮膚でも腫瘍の発生が認められます。
胃腸での発生は雄が圧倒的に多く、子宮や膣での平滑筋腫は避妊を行っていない雌でよく発生します。
症状に関しては、それぞれの部位で異なり、消化管で発生すれば嘔吐や食欲不振、子宮や膣ならば血の混じった膣分泌物などが挙げられます。
悪性の平滑筋肉腫では、進行とともに元気がない、食欲がない、体重が減るなどの症状や、転移した部位での症状が現れます。
平滑筋腫・平滑筋肉腫は症状があまり現れないこともあり、気付かれないまま進行することも多くみられます。
犬の平滑筋腫・平滑筋肉腫の原因
平滑筋腫・平滑筋肉腫の明確な原因はわかっていません。
ただ、子宮と膣の平滑筋腫に関しては未避妊雌でよく発生することが知られており、ホルモンの影響が考えられています。
また、ジャーマンシェパードでは、複数箇所に多発する子宮の平滑筋腫、両側の腎臓に発生する癌、皮膚にかたまり状のできものができるという症状を特徴とする症候群が発生することがあり、遺伝的な関連が認められています。
平滑筋腫・平滑筋肉腫の検査は以下のようなものが挙げられます。
平滑筋腫・平滑筋肉腫の主な検査
- 触診
※体を触って異常な構造や痛みなどないかを調べる - 血液検査
- X線検査
- 超音波検査
- 病理組織検査(外科的切除の後)
など
犬の平滑筋腫・平滑筋肉腫の予防方法
平滑筋腫・平滑筋肉腫のはっきりとした予防方法はありません。
未避妊の雌犬で膣や子宮の平滑筋腫がよく発生することから、避妊手術を行うことで膣や子宮での平滑筋腫の発生を抑えられる可能性があります。
犬が平滑筋腫・平滑筋肉腫になってしまったら
平滑筋腫・平滑筋肉腫の治療は外科的切除を行います。
転移がなく、手術で完全に切除できれば経過は良好であるといわれています。
化学療法や放射線療法は動物ではあまり行われていません。
膣で発生した平滑筋腫に関しては、上述の通りホルモンの影響が考えられ、腫瘍の外科的切除と同時に卵巣子宮摘出術を行うことが推奨されています。
また、平滑筋腫・平滑筋肉腫は進行すると巨大化することがあり、尿管を巻き込んだり腸管を圧迫したりして排尿困難や排便困難になることもあります。
おかしい様子がみられたら早めに動物病院を受診し、獣医師と相談して治療を行いましょう。