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犬の前立腺とは膀胱の根元にあり、精液の一部となる前立腺液を分泌する雄の副生殖腺です。
犬における前立腺腫瘍の発生はあまりありませんが、発生した場合には、そのほとんどは悪性であると言われています。その中でも、分泌物を産生・放出する腺細胞が癌化した腺癌が最も多くを占めます。
他には上皮細胞の一種である扁平上皮(へんぺいじょうひ)や移行上皮(いこうじょうひ)が癌化した扁平上皮癌、移行上皮癌などもみられます。
前立腺腫瘍では血便や血尿、しぶり※がみられます。通常、痛みも伴います。
※しぶりとは、排泄がないまたはごく少量なのに排泄欲求はあり、排泄の姿勢を何回もとること
前立腺腫瘍は転移率が高く、骨へよく転移します。具体的には骨盤や腰椎、腰椎のそばにあるリンパ節(免疫細胞が集まり免疫に関わる場所)などへ転移がみられます。
骨に転移すれば歩行異常もみられるようになります。
また、進行すれば尿路閉塞が起こり、排尿ができなくなることもあります。
・しぶり
・血便
・血尿
・痛み
・元気がない
・食欲がない
・体重減少
など
前立腺腫瘍は老齢(診断時平均年齢10歳)で発生する傾向があり、かなり進行してから発見されることも多いです。
また、前立腺腫瘍になりやすい犬種としては、以下のようなものが挙げられています。
・シェットランド・シープドッグ
・スコティッシュ・テリア
・エアデール・テリア
・ドーベルマン・ピンシャー
など
前立腺腫瘍のはっきりした原因はわかっていません。
前立腺腫瘍の主な検査は以下の通りです。
・触診
※体を触って構造上の異常や痛みなどがないかを確認する
・直腸検査
※直腸に指を入れ、確認できる範囲での直腸の構造的異常や前立腺の触知を行う
・血液検査
・X線検査
・超音波検査
・尿検査
・尿道カテーテルの吸引による採材・細胞診
※管を尿道に入れ、前立腺のあたりでポンプ(シリンジ)で吸引し、採れたものを顕微鏡で確認する
など
前立腺腫瘍の発生に対する明確な予防方法は存在しません。
血尿など異常がみられたら、早めに動物病院に連れて行きましょう。
前立腺腫瘍の進行を遅らせる目的で、非ステロイド性抗炎症剤が使用されることがあります。
前立腺腫瘍の治療として、前立腺の外科的切除や放射線療法などが試みられましたが十分な治療効果を得られたとはいえず、現在のところ確立された治療法はありません。
前立腺腫瘍は進行してから発見されることも多く、経過は厳しいものとなります。
前立腺腫瘍は原因を根本的に治療するというよりは、診断された時点からの犬の生活の質を保つことが目標とされます。
前立腺腫瘍は、前立腺が大きくなった良性の病気と区別がつきにくいときもあり、定期的に経過を観察する必要が出てくる場合もあります。異常がみられたら早めに動物病院を受診しましょう。