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皮膚組織球腫(ひふそしききゅうしゅ)とは、皮膚にできる組織球という種類の細胞の腫瘍です。
組織球とは、免疫に関係する細胞で、さまざまな種類の細胞を含んでいます。
組織球が増え、腫瘍のようになる主な疾患として、
・皮膚組織球腫
・反応性組織球症
・組織球肉腫
が挙げられます。
その中でも、ここで説明する皮膚組織球腫は、どの年齢でも発生しますが、3歳齢以下で多くみられます。
皮膚組織球腫は、通常ひとつだけ発生します。
発生はまれですが、皮膚組織球腫が複数できる場合は、ランゲルハンス細胞組織球症とされ、皮膚組織球腫と異なり、治療に反応せず厳しい経過になることもあります。
ランゲルハンス細胞組織球症では、皮膚に組織球腫が複数でき、大きくなったり自然に破れて潰瘍(えぐれた傷)になったりします。
人のランゲルハンス細胞組織球症(LCH:Langerhans Cell Histiocytosis)と症状が似ているといわれています。
腫瘍が小さくなっていく例もありますが、報告では小さくなるまでに10カ月ほどかかり、腫瘍が小さくなる例でも皮膚組織球腫と異なり、長期間かかる傾向が高いです。
腫瘍がなくならない例も多くみられます。
まれに皮膚だけでなく、リンパ節、脾臓、肝臓、肺などにも発生します。
治療では、抗がん剤であるシクロスポリンやCCNU、抗真菌剤のグリセオフルビンの投与、また放射線療法などが報告されています。
ランゲルハンス細胞組織球症では、腫瘍が次々と多発し、なくならず、潰瘍や細菌感染など腫瘍の合併症で、生活の質を保つことが難しくなり、最終的に安楽死も視野に入れる必要性が出てくることもあります。
皮膚組織球腫は、ドーム状またはボタン状の形をしており、濃いピンク色で表面に毛はなくなめらかです。
そして大きさは2cm以下であることが多いです。
皮膚組織球腫が発生する部位は、顔面、足(指など)、耳、体です。
その中でも、顔面(頭部)でよく発生します。
皮膚組織球腫ができるはっきりとした原因は分かっていません。
皮膚組織球腫の検査は、以下のようなものがあります。
・視診(サイズ計測など)
・細胞診
など
細胞診とは、注射針を腫瘍に刺して、細胞を採取し、顕微鏡でどのような細胞がみられるか観察する検査です。
細胞診では、皮膚組織球腫に特徴的な細胞がみられ、それにより判断することが多いです。
精密な検査としては、
・生検や病理組織検査
・免疫染色(組織を特殊染色して検査する)
などが挙げられますが、必要な場合のみ行われます。
組織球系の疾患として、反応性組織球症などがあるので、状態を把握するため、内臓の超音波検査や血液検査を行うこともあります。
皮膚組織球腫の予防方法はありません。
できものが見つかったら、動物病院に連れて行きましょう。
皮膚組織球腫は、1~3カ月ほどで小さくなり、なくなっていくことが多いです。
皮膚組織球腫では、リンパ球という免疫にかかわる細胞が集まっているのがみられます。
この集まっているリンパ球が、皮膚組織球腫が小さくなっていくことと関連していると考えられています。
数カ月で消えることが多いため、投薬や外科的治療が行われることは基本的にはありません。
ただ、皮膚組織球腫が大きくなって表面が破れ、傷になっているなど、経過や状況により外科的切除が行われることもあります。
多くでは、小さくなった後や外科的手術の後に再発することはあまりないといわれています。
皮膚組織球腫であれば、経過は良好であることがほとんどです。
日頃から顔や体など注意して観察したり触ったりする機会を持ち、できものができたりおかしいことがあったりしたら、早めに動物病院を受診しましょう。