犬の腸の腫瘍とは
腸の腫瘍とは、腸にある細胞が腫瘍化したもので、悪性腫瘍、いわゆる「がん」が多いです。
犬の腸の腫瘍は、
などが挙げられます。
以下に、それぞれの腫瘍について簡単に説明します。
<腺癌>
腺癌とは、腺細胞の悪性腫瘍です。
腺細胞とは、汗や消化液、ホルモンなどの分泌を行う細胞です。
腸管にも、分泌を行う腺細胞が多く存在し、それががん化します。
<リンパ腫>
血液のがんのひとつで、白血球の中のリンパ球ががん化したものです。
腸にできるリンパ腫は、消化管型リンパ腫と呼ばれ、犬のリンパ腫の中では、それほど発生頻度は高くありません。
<平滑筋の腫瘍>
腸を動かす筋肉は平滑筋と呼ばれる種類の筋肉です。
この平滑筋が腫瘍化したものが平滑筋腫瘍で、良性では平滑筋腫、悪性では平滑筋肉腫と呼ばれます。
<GIST(消化管間質腫瘍)>
GIST(ジスト)とは、腸の筋層に存在し、腸管運動のペースメーカーとして働く細胞が腫瘍化したものと考えられています。
腸の腫瘍で主にみられるのはこれらの腫瘍ですが、上記以外の腫瘍も、腸に腫瘍を形成します。
腸の腫瘍は、
- 塊状になるもの
- 腸にしみこむ状態になるもの
- 腸が分厚くなるもの
- 腸がもろくなって、潰瘍(えぐれた状態)になったり、腸管に穴が開いたりするもの
など、さまざまな形態をとります。
腸の管腔内を腫瘍が塞ぎ、腸閉塞のようになることもあれば、検査をしても腫瘍とわかりにくいこともあります。 なお、腸の腫瘍は、高年齢の犬で起こりやすいです。
犬の腸の腫瘍の症状
腸の腫瘍の症状は、以下のようなものがあります。
腸の腫瘍の症状
- 食欲がない
- 元気がない
- 嘔吐
- 下痢
- やせてくる
- 脱水
など
食欲不振や嘔吐、下痢など消化器症状が中心となることが多いですが、初期にはあまり症状がみられないこともあります。 消化管内出血が起こり、便が黒くなることや、腸管に穴が開いて腹膜炎を起こす例もみられます。
腫瘍にもよりますが、肺や肝臓、脾臓、腸間膜、腸間膜リンパ節などに転移をします。
犬の腸の腫瘍の原因
犬の腸の腫瘍はさまざまな種類がありますが、明確な原因は分かっていません。
腸の腫瘍では、元気や食欲の低下、消化器症状などが起こります。 その症状を現すさまざまな疾患の可能性を探っていくので、検査も多岐にわたることがあります。
腸の腫瘍の検査
- 触診
- 直腸検査
- 糞便検査
- 血液検査(特殊検査含む)
- X線検査(造影検査含む)
- 超音波検査
- 針穿刺吸引(FNA)検査※
- 内視鏡検査
- 試験開腹
- 病理組織検査(免疫染色など特殊検査も含む)
- CT検査/MRI検査
など
※針穿刺吸引(FNA)検査とは、超音波ガイド下で、消化管の病変部の細胞を針で採取し、顕微鏡で観察する検査。
症状や検査結果などによっては、上記以外の検査も行われます。
犬の腸の腫瘍の予防方法
腸の腫瘍の予防方法は、特にありません。 腸の腫瘍は、早期発見・早期治療が重要です。 犬におかしい様子が見られたら、早めに動物病院に連れて行きましょう。
犬が腸の腫瘍になってしまったら
リンパ腫を除き、腸の腫瘍の基本的な治療は、外科的切除です。 補助的に化学療法(抗がん剤)が行われることもあります。
リンパ腫の治療は、化学療法(抗がん剤)が基本となります。 ただ、リンパ腫でも腸が分厚くなったり、塊になったりしている場合、腸閉塞などを起こすことがあるので、必要と判断されれば外科手術も行います。 治療法は、腫瘍の種類、形状、犬の状態、転移の有無、他の臓器や血管を巻き込んでいないかなどにより異なります。
他には、症状をやわらげる治療や、体の状態を改善する治療が並行して行われます。 手術後も含め、腹膜炎や敗血症※の危険性もあり、その場合は手術も含め、集中的な治療をします。
※敗血症とは、血液の中で細菌が増殖し、多臓器不全を起こしている状態のこと。
手術で切除後も再発や転移に注意する必要があります。
腸の腫瘍は、早期発見によって腫瘍の完全切除が可能になるなど、早期発見・早期治療がとても大切です。 元気や食欲がない、嘔吐がみられる、やせてきたなど、犬に異常がみられる場合は、早めに動物病院で診察を受けましょう。