犬の鼻腔内腫瘍とは
鼻腔内腫瘍とは、鼻の中の良性または悪性の腫瘍(できもの)を指します。
といっても、犬の鼻腔内腫瘍のほとんどは悪性で、良性のもの(ポリープなど)はまれです。
鼻腔内腫瘍は中年齢から高年齢に多く、さらに雌よりも雄に多いといわれています。
犬の鼻腔内腫瘍で最もよくみられるものは、腺癌です。
腺とは、分泌物を産生・分泌する細胞である腺細胞で構成されています。
鼻腔内には腺が多く存在し、それを構成する腺細胞が癌化したものを腺癌といいます。
他には未分化癌(未熟な形態を示す上皮細胞の癌)、肉腫(線維肉腫や軟骨肉腫、骨肉腫などを含む上皮細胞以外のがん)が挙げられます。
一般的に鼻腔内腫瘍は初期での他の内臓への転移率は低いといわれています。
しかし、末期に進むにつれ、主に肺やリンパ節(免疫細胞が集まる場所)に転移することが分かっています。
犬の鼻腔内腫瘍の症状
鼻腔内腫瘍で最もよくみられる症状は、腫瘍の部分から出血して起こる鼻出血、鼻汁の増加、感染による膿のような鼻汁などです。
鼻腔内で腫瘍がかたまり状に大きくなると、空気の通り道を邪魔したり塞いだりすることで、くしゃみやいびき、呼吸困難を引き起こすことがあります。
また、腫瘍は鼻の骨などを壊しながら押し上げるように広がることもあります。
鼻が盛り上がり膨らんだように見える、眼が飛び出たようになるなど、顔面が変形する例もみられます。
鼻腔は脳にかなり近い場所にあるので、脳まで腫瘍が広がったり圧迫したりして、けいれんや麻痺、行動の変化など神経症状が現れることもあります。
鼻腔内腫瘍の症状は鼻炎などの他の病気の症状でもよくみられ、腫瘍が発見されたときにはすでにかなり進行している場合も多いです。
鼻腔内腫瘍の主な症状は以下の通りです。
鼻腔内腫瘍の主な症状
- 鼻出血
- 鼻汁(血混じりや膿のようなもの)
- くしゃみ
- いびき
- 鼻を中心とした顔面の変形
- 呼吸困難
など
犬の鼻腔内腫瘍の原因
犬が鼻腔内腫瘍になる原因は分かっていません。
鼻腔内腫瘍の主な検査は以下のようなものが挙げられます。
鼻腔内腫瘍の主な検査
- X線検査
- CT検査/ MRI検査
- 血液検査(体の状態の把握)
- 鼻腔内視鏡検査
- 外鼻孔(鼻の穴)からの生検
など
鼻腔内腫瘍はX線検査やCT検査などの画像検査では診断できないので、鼻腔内視鏡や麻酔下での鼻の穴からの生検が行われます。
内視鏡では採取できる組織が小さく、診断がつかない場合は再度検査が必要になることもあります。
犬の鼻腔内腫瘍の予防方法
鼻腔内腫瘍の予防方法は特にありません。
症状は慢性的な鼻腔内の炎症(鼻炎)など他の鼻腔内疾患と重なるものがあり、診断が難しい場合も多いです。
症状が続くようなら早めに動物病院を受診し、治療をしっかりと行い、必要であれば検査も進めていきましょう。
犬が鼻腔内腫瘍になってしまったら
鼻腔内腫瘍の治療法には、外科的切除、放射線療法、抗がん剤などの化学療法などが挙げられます。
鼻腔内腫瘍は早い時期に骨を侵すので、外科的切除を行えば完治するというわけではなく放射線や化学療法も用いて、腫瘍の進行を抑えます。
鼻腔内腫瘍の主な治療
- 外科的切除
- 放射線療法
- 化学療法(抗がん剤)
など
鼻腔内腫瘍は、顔面変形など腫瘍を強く疑うような症状は末期にならないと現れないことが多く、診断したときには症状がかなり進行していることも多いです。
鼻汁が慢性的に続くなどの症状があれば動物病院を受診し、治療への反応や経過をみながら検査と治療をしっかり行っていきましょう。