犬のインスリノーマとは
インスリノーマとは、膵臓の腫瘍で、中年齢から老齢の比較的大型の犬に発生する傾向があります。
血糖を下げる働きのあるインスリンは、膵臓の膵島β(ベータ)細胞で分泌されます。
その膵島β細胞の腫瘍が、インスリノーマです。
インスリノーマのほぼすべてが悪性といわれています。
通常、血糖値が低下するとインスリンの分泌が抑えられますが、インスリノーマでは、血糖値が低下してもインスリンが分泌され続けます。
犬のインスリノーマの症状
インスリノーマの症状は、ほとんどがインスリンの過剰分泌により、低血糖になることで引き起こされます。
慢性的な低血糖が持続している犬では、一般的に症状が現れるよりも低い血糖値になってから、症状が現れることもあります。
インスリノーマの症状は、以下のようなものが挙げられます。
インスリノーマの症状
- 元気がない
- 体に力が入らなくなる
- 発作
- ぐったりしている
- 筋肉や足がぴくぴくとけいれんしている
- 後ろ足がふらつく
- 不安がったり、神経質になったりする
など
発作や極度の脱力などの低血糖発作は、空腹時や運動、興奮、食事後などに起こりやすくなります。
発作は数十秒から数分で収まることが多いです。
低血糖の症状がはっきりと現われるのは、腫瘍発生から時間が経っていることも多く、受診したときには、転移や腫瘍の状態が進行していることもよくあります。
犬のインスリノーマの原因
インスリノーマの原因は、分かっていません。
インスリノーマの検査は、以下のようなものがあります。
インスリノーマの検査
- 血液検査
- 神経学的検査
- X線検査
- 超音波検査
- 一定時間おきの血糖値測定(院内)
- 低血糖時の血中インスリン濃度の測定(外部機関へ依頼)
- 試験開腹
- 病理組織検査
- CT検査/MRI検査
など
中には常時低血糖でないインスリノーマの犬もいるので、その場合は、空腹時に一定時間おきに血糖値を測定し、低血糖の確認が必要になります。
条件によっては、近日中、日を改めて条件を整えた上で、検査を行います。
そのため、状況によっては長時間犬を預かって院内で検査を行うこともあります。
他にも必要な検査があれば行われます。
犬のインスリノーマの予防方法
原因が分かっていないため、インスリノーマを予防する方法は特にありません。
ただ、健康診断を定期的に行っていると、不審な血糖値の低下が検出されることもあり、インスリノーマの早期発見につながる可能性があります。
元気がなかったり、犬におかしい様子があったりすれば、早めに動物病院を受診しましょう。
犬がインスリノーマになってしまったら
低血糖で緊急的な状態の場合、入院して点滴でグルコースなどを流したりし、血糖値の上昇を図ります。
集中的に治療をしても血糖値が全く上昇しない場合は、そのまま低血糖により命を落としてしまいます。
危機的な状態から脱している犬でのインスリノーマの治療は、外科的治療と内科的治療があります。
インスリノーマがさほど進行しておらず、転移がなく腫瘍もひとつで場所が限定されている場合は、外科的切除により、良好に経過します。
ただ、インスリノーマは腫瘍が進行してから受診や発見されることが多いこと、高率に転移する腫瘍であることから、外科的切除だけでは治療できない例も多いです。
完全な切除はできなくても、腫瘍による低血糖状態を一時的にやわらげるために、腫瘍の大きさを減らす目的で手術をすることもあります。
インスリノーマの内科的治療は、以下のようなものがあります。
インスリノーマの内科的治療
- 化学療法(抗がん剤)
- ストレプトゾトシン
- 血糖値を上げる作用のある薬
- ステロイド剤
- グルカゴン
- インスリンの分泌を抑える薬
- ジアゾキシド
- オクトレオチド
- β遮断薬(ベータしゃだんやく)
など
インスリノーマで使用されるストレプトゾトシン(抗がん剤)は、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞を破壊し、糖尿病や腎不全などの副作用が出ることがあります。
その他の薬では、血糖値を上げたり、インスリンの分泌を抑えたりすることで、血糖値の正常化というよりは、低血糖による命の危険を避ける目的で投与されます。
犬の状態や飼い主様の希望などにより、投与する薬や治療が決定されます。
犬によりそれぞれの薬に対する反応も異なるので、定期的に診察を受け、治療内容を調整します。
インスリノーマは、高率で悪性腫瘍であり、転移率も高く、発見時には進行や転移していることがよくあり、経過は厳しいものとなることが多いです。
犬におかしい様子があれば、動物病院に連れて行きましょう。