犬の精巣腫瘍とは
精巣腫瘍とは、雄の生殖器のひとつである精巣が腫瘍化したもので、中年齢から老齢の未去勢雄で発生する腫瘍の多くを占めます。
精巣腫瘍のほとんどが、
- 精上皮腫(セミノーマ)
- セルトリ細胞腫
- 間質細胞腫(ライディッヒ細胞腫)
に分けられます。
精巣腫瘍は、停留睾丸※(潜在精巣)で起こりやすく、セミノーマとセルトリ細胞腫の発生が多いとされています。
※停留睾丸(潜在精巣)とは、成長とともに本来陰のう内へ下降する精巣が、そ径部(後ろ足内側の付け根部分)や腹腔内にとどまっている状態。
精巣腫瘍は良性の方が多いといわれ、転移率もそこまで高くないといわれています。
精巣腫瘍は、高齢の雄犬で最もよくみられます。
犬の精巣腫瘍の症状
精巣が左右とも陰のうにある場合、左右の精巣のサイズが異なったり、明らかに大きくなったりすることで分かることが多いです。
そ径部※の停留睾丸(潜在精巣)が腫瘍化すると、そ径部に大きな塊(潜在精巣の腫瘍)が触れます。
※そ径部とは、後ろ足の内側の付け根。
停留睾丸の犬で、X線検査や超音波検査により、腹腔内に腫瘤が見つかることもあります。
また、主にセルトリ細胞腫で、エストロゲン(女性ホルモン)が過剰に分泌されます。
これにより、
- 脱毛
- 皮膚の色素沈着
- 乳房の雌性化
- 骨髄の造血機能の抑制
などが起こります。
特に骨髄抑制の作用は、骨髄での造血機能が低下するので、重度の貧血や、白血球、血小板の著しい減少がみられ、致死的状況になることもあります。
さらに、精巣腫瘍では、転移が起こることもあり、初めに、腫瘍とつながるリンパ節※に転移し、肝臓や肺、腎臓などに転移します。
※リンパ節とは、免疫に関わる細胞が集まる場所。
犬の精巣腫瘍の原因
精巣腫瘍の原因は、詳しくは分かっていません。
高齢の雄犬ほど精巣腫瘍の発生率が高まります。
停留睾丸(潜在精巣)の犬では、腫瘍化する確率が高まります。
精巣腫瘍の検査は、以下のようなものがあります。
精巣腫瘍の検査
- 触診
- 直腸検査
- 血液検査(特殊検査含む)
- X線検査
- 超音波検査
- CT検査
- 病理組織検査※
など
※病理組織検査では、精巣摘出後、腫瘍の種類や悪性度を調べるために組織を顕微鏡で観察する。
犬の精巣腫瘍の予防方法
精巣腫瘍の予防方法は、
- 去勢手術
- 停留睾丸(潜在精巣)の摘出
です。
腫瘍は高齢の雄犬での発生が多いため、心疾患などの病気や犬の状態によっては、全身麻酔が難しいこともあります。
さらに、精巣腫瘍の中には、転移をしたり、骨髄に致死的な影響を与えたりするものもあります。
そのため、去勢手術については、獣医師とよく相談し、停留睾丸(潜在精巣)の有無も確認しておくことが大切です。
なお、去勢手術は、前立腺肥大症や肛門周囲腺腫の発生率も抑えると考えられています。
犬が精巣腫瘍になってしまったら
精巣腫瘍の治療は、基本的に精巣摘出術を行います。
精巣腫瘍により、エストロゲンが過剰に分泌され、重度の貧血などが起こっている場合は、精巣摘出術などでは治療できないため、輸血をすることが必要になります。転移がみとめられる例では、放射線療法や化学療法が治療として挙げられます。
精巣腫瘍は、停留睾丸(潜在精巣)の摘出や去勢手術で予防することができます。
停留睾丸(潜在精巣)では、腫瘍化する確率が高くなるので、早めの摘出が強く勧められています。
動物病院で停留睾丸(潜在精巣)でないかも含めみてもらい、去勢手術については獣医師に相談しましょう。
精巣が大きくなっていたりする場合は、早めに動物病院に連れて行くことが大切です。